昔から使われていた歴史の古い言葉は、当時と現代で読み方や意味、ニュアンスが異なるケースが少なくない。「気色ばむ」もそんな言葉の一つだ。現代語における一般的な読み方と意味を知っていることはもちろん、古語の意味も理解しておくと、教養の幅が広がる。
本記事では、「気色ばむ」の読み方や言葉の意味について解説する。
「気色ばむ」の読み方は二種類、意味は複数ある
「気色ばむ」は、平安時代に書かれた『蜻蛉日記』や『源氏物語』でも使われている古い言葉だ。読み方は、現代では「けしきばむ」が一般的。ただし、古文では「きしょくばむ」と読む場合もあり、どちらも正しいとされる。
「気色ばむ」の言葉の由来は?
「気色ばむ」の“気色”とは、「様子」や「気配」「兆候」を表す言葉。一方、“~ばむ”は、「~を帯びる」「~が(外から)見える」といった意味を持つ。
「気色ばむ」の基本の意味は、「その様子がうかがえる」「その気配(兆候)が見える」となるが、時代や場面によって“気色”の指す内容が移り変わり、複数の意味を持つようになったと考えられる。
古文と現代文で異なる「気色ばむ」の意味とは
「気色ばむ」が持つ意味は、古語と現代語で異なる。現代語では、「むっとする」「憤慨する」といった怒りの感情が外に表れる様子を指す。また、文脈によっては「興奮する」「興奮して勢い込む」といった意味で使われるケースもある。
一方、古文では、「きざしが見える」「懐妊・出産の兆候が見える」「気持ちが外に出る、ほのめかす」「気取る、改まった様子をする、もったいぶる」などの意味で使われる。
「気色ばむ」と「気色悪い」の違い
同じく“気色”が使われている言葉として有名なのが、「気色(が)悪い」という言葉だろう。こちらは「きしょくがわるい」と読む。「気味が悪い、不快に感じる」もしくは「気分がすぐれない」といった自分自身の感じ方を表す慣用句だ。
「気色ばむ」の使い方や言い換え表現は?
古くから日本語で使われている「気色ばむ」という言葉だが、どのような場面で使うことが適当かは、使い方の実例を知らないとイメージしづらい。
また、「気色ばむ」自体が複数の意味を持つため、相手の誤解を招かないためにも、意味の似た類語や言い換え表現を知っておくと便利だ。
「気色ばむ」を使った例文
・「侮辱されたと感じて気色ばむ」
・「気色ばんだ顔で新規事業のアイデアを語る」
・「梅の花の、わづかにけしきばみはじめて雪にもてはやされたるほど※」(『源氏物語』第四十一帖 幻)
※現代語訳:梅の花が、わずかにほころびはじめたところを雪が引き立てて
「気色ばむ」の類語・言い換え表現
「気色ばむ」の類語には、「機嫌をそこねる」「機嫌を悪くする」「気を悪くする」「イラッとする」「目くじらを立てる」「ふてくされる」「色をなす」などがある。
なお、文脈にもよるが、古文における「気色ばむ」の意味は、現代語の「気色ばむ」とニュアンスが異なるケースが多い。まずは現代語で一般的な使い方である「むっとする」「憤慨する」の意味で言い換え表現を探すのが良いだろう。
「気色ばむ」の英語表現
日本語でも様々なニュアンスを持つ「気色ばむ」という言葉だが、英語に訳す場合はどのよう表現が適当か、悩む人も多いだろう。ビジネスや生活シーンで英語に接する機会が多い場合は、英語での表現を覚えておくと役に立つはずだ。
「気色ばむ」を英語で言うと?
気色ばむ(むっとする、憤慨する)を英語で表現するには、「get angry(怒る)」や「bristle with anger(怒って苛立つ)」を使うと、「気色ばむ」の持つニュアンスをシンプルに表現できる。
その他、「show (one’s)anger(怒りを顔に出す)」「become sullen(むっつりする、ふてくされる)」などの英語表現も適当だ。
文/編集部