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「ブーメラン社員」の採用に対するイギリスとフランスの企業のスタンスの違い

2023.08.25

「ブーメラン社員」とは、一度退職した企業に再就職して出戻る従業員のこと。労働者不足が深刻化する日本において「ブーメラン社員」は、社内文化や事業内容を知る元社員を採用することで、入社後のミスマッチが生じにくいといったメリットがあり、関心を集めている。

そんな「ブーメラン社員」に関するイギリス・フランスの調査結果をこのほど、グローバル人材の転職を支援する人材紹介会社・ロバート・ウォルターズ・ジャパンが発表した。

隣の芝生は青く見えた?

ロバート・ウォルターズのイギリス(英)・フランス(仏)での調査によると、新型コロナウィルスによるパンデミック時に離職した会社員の45%(英)、47%(仏)が、より高い給与を求め転職をしたとしている。

また、35%(英、仏共に)の会社員が、より良い企業文化や、よりやりがいのある職務を求め離職、11%(仏)がリモートワークができなかったことを理由に離職していたことがわかった。ロックダウンから2年以上が経過し、イギリス・フランスの会社員の心境に変化が生まれているようだ。

48%(英、仏共に)の会社員が、現在の勤務先は自分のニーズを満たしていないと感じており、4分の1(英)の会社員が、インフレによる生活費高騰とハイブリッド・ワーキング疲れ(24%)によって、現在の仕事の状況に対する感じ方が変わったと述べている。経済状況、特にインフレや新しい柔軟な働き方は、会社員の仕事に対する認識や企業に対する期待に影響を与えていることがわかった。

欧米ではパンデミック後の立ち直りの時期である2021年後半に、記録的な数の従業員が離職し、”大離職”と呼ばれた。パンデミック後の雇用市場の回復、パンデミックを契機に働くことの意味を問い直す動きが広まり、離職増に拍車をかけたようだ。しかし今回の調査では、イギリス(71%)・フランス(60%)
では大多数の会社員が前職の職場に戻りたいと答えており、後悔の兆しが見られる。

上記のイギリスとフランスの状況について、ロバート・ウォルターズ・ジャパンの代表取締役ジェレミー・サンプソン氏は次のようにコメントしている。

「2021年、柔軟な働き方改革が行われ、転職の際に昇給、フレキシブルでハイブリッドな企業文化を約束する企業が多くなりましたが、2023年になるとインフレの影響が強くなり、生活費が上昇したことにより、2021年に行われた昇給も今では十分とは思えないようになった可能性があります。会社員は、給与や条件面を選んで転職をしたが、結局のところ、隣の芝生が青くみえて転職をしてしまったと感じているのかもしれません」

イギリスの調査対象者会社員の82%が、何らかの形で前職の上司と連絡を取り合っており、3分の1(29%)が、将来の仕事の機会を得るための選択肢として連絡を取り合っていると回答した。

さらに、4分の1の会社員が前職の上司にポジションが空いているか確認をしている。11%の会社員は、以前の勤務先に復帰の可能性についてまだ連絡していないが、今年中に連絡する予定であると回答している。

一方、フランスの調査対象会社員は、6割がブーメラン社員候補ではあるものの、それは条件付きだとしている。その条件として「上司が変わった場合」(35%)、「昇給が約束された場合」(21%)があがっている。前職の上司との連絡については、72%が何らかの形で連絡を取っていると回答した。

ブーメラン社員の採用を躊躇する管理職(英)・ブーメラン社員の採用に前向きな管理職(仏)

では、実際一緒に働くことになる上司である管理職は、ブーメラン社員をどのように感じているのだろうか?

イギリスでは、44%の管理職は「ブーメラン社員の採用に躊躇する」と回答、わずか5分の1が「例外的なで優秀な元社員」であった場合のみ採用を検討すると回答している。

フランスでは事情が異なるようでブーメラン社員は、企業側である管理職にとっても好ましい現象であるようだ。管理職の85%がブーメラン社員がチームとの相性がよければ採用を検討するとしており、門戸は広く開かれている。

上記の結果を受け、サンプソン氏は以下のようにコメントを付け加える。

「企業側の上司や管理職は、ここでプライドを飲み込む必要があると思います。2023年も、候補者不足は続いています。数多くの欠員を埋めるのは難しいので、良い条件で退職した元従業員を再び迎え入れるのは間違いなく良いアイデアです。ブーメラン社員は仕事のやり方や企業文化に精通しており、トレーニングの時間が少なくて済みます。さらに、自分の意思でブーメラン社員となり戻ってきたのだから、より密接にビジネスに関わり、コミットしてくれる可能性も高いといえるでしょう」

「優秀な従業員が企業を去るのを良しとする組織はありません。従って、管理職にとって重要なのは、退職が前向きなものだったというイメージを作り、退職を希望する従業員には、同じポジションでも新しい役割でも、復帰のチャンスがあることを伝えることです」

門戸が開かれていることを伝えた後に、ブーメラン社員を最大限に活用するためにやるべきことは、組織は元従業員の再雇用に関する明確な方針と手順を確立することのようだ。

「明確な方針は常に必要であり、特に退職時よりも高いポジションで再雇用する場合はなおさらです。管理職への再雇用のために特別扱いされているという誤解を周囲に生まないためには、予めすべての従業員に対して、昇進プロセスを明確にし、誰もが成長と能力開発の機会を得られるようにしなければならない。

そうでなければ、昇進してより良い給与を得る方法がブーメラン社員になることであるという間違ったメッセージが伝わる危険性があり、それは本意ではありません。また、給与アップや柔軟な働き方への取り組み等、改革を一時的にしたとしても、一時的では意味がなく、戻ってきたブーメラン社員が再度その企業を去るという可能性があります。そのようなことがないよう人材保持に向けての取り組みを強化すべきです」と、サンプソン氏は警告します。

日本の企業でも人材不足が深刻化し、ブーメラン社員を採用する動きが強まっている。日本経済団体連合会が行った2022年の調査では、回答企業の約65%が「ブーメラン社員」を採用するカムバック採用を取り入れており、その内の約19%が今後も採用割合を増やすと回答している。今後もブーメラン社員を受け入れる企業にとって、再雇用に関する方針の策定は非常に大事なことと言えそうだ。

<調査概要>
調査期間:2023年4月
対象:イギリスで働く会社員n=3,000人
フランスで働く会社員n=1,600人

出典元:ロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社

構成/こじへい

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