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昭和世代こそ「バチェラー・ジャパン」シーズン5を観るべき理由

2023.08.23

8月3日、約2年ぶりに『バチェラー・ジャパン』の新作の配信が始まった。2017年2月に始まった日本版『バチェラー』も今回でシーズン5、よくもまぁこれほど他人の恋愛に一喜一憂してきたものである。ただ個人的なことを書けば、シーズン3以降イマイチ番組に乗れない自分もいて。指折り数えるように新作を待つこともなくなり、付き合いで観ている感覚が拭えないシリーズが続いたことも事実である。

今回のバチェラーが『バチェロレッテ』シーズン2で、ファイナリストなった長谷川惠一という点も引っかかった。前回のバチェラー黄皓も『バチェロレッテ』のファイナリストであることから、「どれだけキャスティングが難航しているんだよ!」と口を挟みたくなる。視聴者の期待はただ一つ「こんな完璧な独身男性がいるのか!」といった新たなバチェラーの開拓だ。『バチェロレッテ』発のバチェラーも黄皓で経験済み。長谷川惠一の起用はサプライズではなく、マンネリだと感じた。

こんな御託を並べつつも、なんだかんだ最後まで観れてしまうのが『バチェラー』の特性である。エピソードを重ねるごとに、長谷川の恋愛の並走者といった錯覚に陥る。歴代バチェラーと異なる長谷川の素朴な人間性に惹かれ、いつの間にかファンになっていた。そして、8月24日配信分でいよいよ完結の時を迎える。

※以下の記事はネタバレを含みますので、ご注意ください。

圧倒的成功を収めている独身男性でないことが生んだ意外な変化

かつてのバチェラー達は確立された成功者であり、多少浮世離れした側面を持っていた。どちかといえば、自分の人生とは絶対に混じり合わない方々である。対して長谷川は、前任者のような圧倒的成功を収めている独身男性ではない(外車も持っていない)。今後の伸び率を見越した末のバチェラー役であることから、視聴者にとって身近な存在として画面に収まっていた。
そんな長谷川のキャッチコピーは「この男、名バチェラーか?迷バチェラーか?」、ここからも不確定要素の多さが汲み取れる。

自分の軸を確立していない長谷川を起用したことは、番組に大きな変化をもたらした。以前までのシリーズから女性との関わり方が変わったことで、『バチェラー』をフレッシュに楽しむことができた。例を出すとデートにおいて、バチェラーが積極的にアテンドすることが美徳ではなくなっていた。かつては「頼りない」と評されていた自主性の欠如はかわいげとなり、ナチュラルに女性にリードされる長谷川は好感を持って受け入れられていた。

以前は詭弁に聞こえた「自分も女性から選ばれる立場である」といった歴代バチェラー全員が言ってきたセリフも、今回は物語にわかりやすく作用していた。バチェラーを上の立場に置かないことから、女性間の嫉妬が全くない。バチェラーを頂点としたヒエラルキーが存在しないので、揉める理由がないのだ。何か問題が発生した場合も、建設的な話し合いで解決していた。かつての番組の華であった、バチェラーとの距離間をマウントし合う女性陣のケンカは終戦。「まぁそういった争いが観たい方は『BREAKING DOWN』へ」ということなのだろう。

昭和世代にこそ観て欲しい価値観のアップデートの重要性

またシーズン5は、価値観のアップデートの重要性を唱えていたことも注目したい。様々シュチュエーションで現れたメッセージではあるが、なかでもエピソード2の食事会シーンは一見の価値あり。タコスを食しつつ、繰り広げられたバチェラー長谷川と女性5人のやりとりは興味深い。

和気藹々と盛り上がる食卓で長谷川は、自身がバスケットボール選手だった経験から「自分の子供にも何か一つのことを取り組んで欲しい」と話した。
この時点の私はアップデート前だったこともあり、長谷川の発言に疑問を抱くことはなかった。もちろん私生活で女性にこういった話をするわけはない。ただ非日常かつ現在の大奥のような側面を持つ『バチェラー』なのだから、「そりゃ真剣に跡継ぎことは話すわなぁ」と楽観的に観ていた。

しかし、参加女性陣の受け取り方は真逆で、悲観を超えて最悪だったようだ。食事会終了後の女性メンバー全員の集まりで、「バチェラーを最も愛している」と自称する竹下理恵は「みんなのことを知るというよりも、『俺は子供ができたらこう育てたい』といった教育方針を真っ先に聞いたの。産む前提で話が進んでいた」と振り返る。話を聞いた食事会に不参加の鈴木光も「私たちだもんね、産むのは」と共感していた。

VTR後のスタジオトークでも上記の件は議題となり、MCの指原莉乃は「さっきの子供の話、ほとんどの人が違和感を抱くと思います。女性同士でも『いつ子供どう?結婚どう?』と言う人もいないし……」と振り返った。藤森慎吾も「いやぁそこ、すごい勉強になりました。割と言っちゃたりしますよね」と頷く。そして指原は「女性の裏側を見ないとわからないことじゃないですか。あの食事会ではわからないこと」とまとめた。

バチェラーと女性陣の考え方の違いは、翌日の行われたクルージングデートにも影響していた。7人の女性が参加し、全員に長谷川と2人きりで話す機会が与えられた。そのなかでパーソナルトレーナー大野博美は、「昨日その子供の話をしてたやん。もちろん私も子供欲しいし、産みたいと思う。けど産めない場合はどうするのかなってすごい思って。私は勝手に昨日は、子供がいる前提で話が進んでいるように思えちゃって。子供の育て方とかはもっとゆっくりと2人の時間に話したいと思って」と疑問をぶつけた。先ほどまで笑顔だった長谷川も真剣な面持ちとなり、「俺も軽い気持ちで話したわけじゃないけど、今聞けて良かったし。それでなんか辛い気持ちにさせちゃったら……」と答える。
この対話は現代的で良かった。ハッキリと違和感を伝える大野、それを受け入れる長谷川、互いに魅力的だった。

一人の人間にどう寄り添うか

この大野とのやりとりが、クルージング後に行われた西山真央とのデートに変化をもたらすのだから興味深い。長谷川と西山がヘリコプターに乗り、着陸したのはプライベートビーチ。白い砂浜で長谷川は西山に自分を大いに語った。これは大野の助言によって、生まれた長谷川の言動だと読み取れる。自身の間違いを自覚する他者からの指摘は、感謝と共にキツさもある。凹んだ長谷川は目減りした自尊心の埋め合わせを望み、西山は癒しでそれに応えた。女性陣とのすれ違いの延長線上にある長谷川と西山の交流だった。ここで2人の関係は濃密となり、結果的に西山は『バチェラー』シーズン5を最後までサバイブし、ファイナリストとなる。

エピソード2の見所はまだまだあり、同じくファイナリストとなった大内悠里と長谷川の関係性が深まったキッカケも描かれていた。カクテルパーティーで大内が自身の弱さを長谷川に曝け出したことが契機となり、2人の歩みが始まる。結果を知っている今だから言えるが、大内の話に耳を傾ける長谷川の顔がまぁ幸せそうなこと!
指原も「バチェラー、大内さんに対してちょっと、ほかの子と違う感じがしませんか。優しいというか、寄り添い方がより大きいみたいな」とコメントしていた。とどのつまり、大内は長谷川のタイプだったんだと思う。

お世辞抜きにバチェラー長谷川とお似合いな2人が残ったわけだが、結果はいかに!?
また今後の『バチェラー』シリーズがどう変化していくのか、シーズン5を観たことで期待が高まった。そもそも一人の男性が、多くの女性を自身の趣味嗜好でオーディションしていく番組の構造が古いわけだ。どうやって時代と折り合わせていくのか、配信される限りは追っていきたい。 

作品名:『バチェラー・ジャパン』シーズン5

配信表記:Prime Videoにて2023年8月3日(木) 22時より独占配信開始

コピーライト:©2023 Warner Bros. International Television Production Limited

文/ヨシムラヒロム
1986年東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。武蔵野美術大学卒、イラストレーターでコラムニスト、そして大正大学助教。著書に「美大生図鑑」。

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