スマートフォンといえば、スレート状(板状)のデザインが一般的です。もはや画一的ともいえるほど定着したデザインですが、近年は「折りたたみスマートフォン」という、新しい形状の製品が続々と登場しています。
折りたたみスマートフォンは、一般的なサイズのスマートフォンを折りたたみ、コンパクトにして持ち運べる「縦折りタイプ」と、タブレットサイズを折りたたみ、通常のスマートフォンに近いサイズにできる「横折りタイプ」の2種類があります。
これまで折りたたみスマートフォンを使ったことがないという人にとっては、興味があってもどれを選べばいいのかが難しいところ。そこで本記事では、コンパクトさが魅力の縦折りタイプに着目し、執筆時点(2023年8月上旬)に国内外で販売されている製品を徹底比較。横折りタイプは別記事にてご紹介予定なので、合わせてチェックしてみてください。
現行の縦折りスマートフォンを比較
まずは、執筆時点で国内、国外で販売されている、主要な縦折りタイプのスマートフォンのスペックを見ていきましょう。大まかな違いがわかるかと思いますので、ザックリとご確認ください。
縦折りスマートフォンは「閉じたまま何ができるのか」が重要
縦折りタイプのスマートフォンは、一般的なサイズのスマートフォンを半分に折りたたむ製品。折りたたんだ際には、外側に搭載されているカバーディスプレイから通知や天気予報を確認したり、アラームの設定をするといった使い方が推奨されています。
つまり、「折りたたんだまま、外側のディスプレイで何ができるのか」が、縦折りスマートフォンの使い勝手を大きく左右します。閉じたままできる作業が少ないとなると、折りたたむメリットは低減してしまいます。
比較表を確認すると、2023年に発表されている「Galaxy Z Flip5」や「razr 40 Ultra」といったモデルのカバーディスプレイは3インチ以上。2022年モデルの「Galaxy Z Flip4」と比べると、1インチ以上も拡大しています。これにより、これまでは〝ウィジェット的〟にしか使用できなかったカバーディスプレイから、様々なアプリが起動できるようになりました。縦折りスマートフォンとしては、正当なアップデートといえるでしょう。
Galaxyシリーズで見ると、折りたたみスマートフォンとしては初めてIPX8の防水性能に対応した「Galaxy Z Flip3 5G」が、1つ目のブレイクスルー、そして3インチ超えのカバーディスプレイを搭載した「Galaxy Z Flip5」が2つ目のブレイクスルーといえます。着々と機能を増やし、一般的なスマートフォンの使い勝手に〝プラスα〟した端末へと進化していることが、多くの人に縦折りスマートフォンをおすすめできる理由の1つともいえるでしょう。これから縦折りスマートフォンを購入するのであれば、カバーディスプレイのサイズが3インチ以上のものを選ぶのが吉です。
縦折りスマートフォンは普通のスマートフォンよりも薄い?
折りたたみスマートフォンにとって、サイズは重要な要素。特に縦折りタイプの場合、携帯性を左右する「厚さ」と「質量」が大切になります。
厚さは、スマートフォン本体を開いた状態では使用感、閉じた状態では携帯性に直結します。今回比較している機種を見ると、開いた状態ではおよそ7mm前後が相場となっています。
開いた状態では一般的なスマートフォンに近いデザインになり、特に7mmを下回る機種に関しては相当薄く感じます。「iPhone 14」が7.8mm、「Galaxy S23」が7.6mmと考えると、圧倒的に薄いことがよくわかります。7mmを切るモデルがおすすめではありますが、今回紹介している製品に関しては、いずれも使っていて分厚いと感じることはほとんどないでしょう。
一方、折りたたみスマートフォンは、閉じた状態で持ち運ぶことがほとんどなので、ポケットに入れてもかさばらない厚さである必要があります。
折りたたんだ状態の厚さを比較すると、15mm~17mm程度。「Galaxy Z Flip4」は、折りたたんだ際にディスプレイが完全に重ならず、少し隙間ができる設計になっているため、最厚部が17mm超えと分厚くなっていますが、新モデルの「Galaxy Z Flip5」ではぴったりと折りたためるようになっており、15.1mmまで厚さが低減されています。
そのほかの機種を見ると、OPPO、Vivoの2機種が16mm台、モトローラの「razr 40 Ultra」とファーウェイの2モデルは15mm台となります。当たり前ですが、いずれも一般的なスマートフォンと比べると倍近い厚さがあり、ポケットに入れると存在感があるというのが本音ですが、長さがなくなる分、そこまで邪魔と感じることはありません。15mm、16mm台であれば、違和感なく使用できるでしょう。
縦折りスマートフォンは質量とバッテリー容量の関係が〝買い〟のヒント
一方、携帯性という意味では質量も重要なポイント。今回比較している機種はいずれも180g後半~190g程度になっています。6.7インチを超えの大画面ディスプレイを搭載していると考えれば、一般的なスマートフォンと比べてもかなり軽量であることがわかります。
折りたたみというギミックを搭載しながら、一般的なスマートフォンよりも軽量にできる主な原因の1つに、バッテリー容量があります。ヒンジを搭載して折りたたむ関係から、近年のハイエンドスマートフォンに搭載されるような、5000mAh、6000mAhといった大容量のバッテリーを搭載できず、今回比較している機種でも「vivo X Flip」の4400mAhが最大となります。つまり、バッテリーサイズがコンパクトな分、質量も極端に重くならないというわけです。
4000mAh前後のバッテリー容量だと連続使用時間が気になるところですが、折りたたみという性質上、大画面を〝使わない〟時間が長いので、一般的なスマートフォンよりもバッテリーの消耗が少なくなります。こういう意味でも、カバーディスプレイを大型化し、閉じた状態でできる作業が増えることが重要といえます。
とはいえ、バッテリーが大きいに越したことはありません。カバーディスプレイが大型化してきている分、1インチ程度のカバーディスプレイを搭載したモデルよりはバッテリー消費が増えると考えられるので、できるなら4000mAhは確保したいところです。
縦折りスマートフォンは〝買い〟の時期到来? 選びのポイントは?
比較してきた通り、現行の縦折りスマートフォンはいずれも、スマートフォンを持ち運ぶ上で重要な「厚さ」と「質量」は、製品の特性も相まって、ほとんどのモデルで使いにくさを感じることはないでしょう。今回は言及していませんが、縦折りスマートフォンはほぼすべての製品が、ハイエンドチップセットや大容量のメモリを搭載していることも、快適さを助長する1つの要因です。
今回複数のモデルを比較して、縦折りスマートフォンを選ぶ上で基準となるのは、「カバーディスプレイのサイズ」と「薄さと軽さを実現しつつ、大容量のバッテリー」にあると感じます。日本で発売されているモデルでいえば、「razr 40 Ultra」が3.6インチ、日本での発売も期待できる「Galaxy Z Flip5」は3.4インチのカバーディスプレイを搭載していますが、バッテリーは3000mAh台。足りないとはいわないものの、若干心もとない印象です。
3インチ台のカバーディスプレイを搭載した縦折りスマートフォンが登場したのは、ここ最近なので、これからバッテリー容量との両立も進んでいくと考えられます。個人的には、この1ステップさえ乗り越えれば、いよいよ縦折りスマートフォンの一般化が進んでもおかしくないと感じています。
取材・文/佐藤文彦