焼き肉店を3軒はしごしたことがあるだろうか。
先日、友人に誘われて、
町焼き肉ツアーに連れて行ってもらうことになった。
1軒目は、足立区興野にある『長興屋』さん。
住宅街の中に突然現われる老舗だ。
歴史を感じる暖簾をくぐると、中にはカウンターと小上がり席が2つ。
地元のなじみ客が多いのだろう。
皆、余計なことはしゃべらず、黙々と食べ続けている。
とりあえず1軒目なので、様子を見ながら注文した。
味のしっかりしたお肉を丁寧に味わう。
ニラと卵を和えた、想像とは違う「ニラたま」や、
お肉を一緒に炊き込んだ「肉めし」は絶品だった。
2軒目は、荒川区町屋にある『正泰苑』さん。
こちらも昭和の雰囲気が漂う外観だった。
特に印象的だったのはレアステーキ。
ローストビーフのようで、よりさっぱり食べられる。
仕事終わりの人が多いのか、隣の席ではスーツ姿の男女が盛り上がっていた。
「会社帰り」とか、「上司のつきあい」とか。そういうものが、何だか懐かしい。
3軒目は、台東区根岸の『鶯谷園』さん。
予約必須の人気店だが、
すでに22時近かったので、並ばずに入ることができた。
上質な肉をリーズナブルに楽しめるとあって、周りは若い人たちが多かった。
ついに最後の店までたどり着いたという安心感から、
これまで抑えていた気持ちがあふれ出し、たくさん頼んでしまう。
ロースにヒレ、ホルモンなど……。
ライスも付けたし、〆には冷麺もいただいた。
もちろん、1軒でじっくり味わう焼き肉も良い。
でも、はしごしたことで、それぞれの店の良さが際立ち、
見えてくることもあった。
お腹の具合や時間配分も考え、頭を使ったけれど、
無事に完走できたという喜びに包まれ、幸せな〝肉後感〟だった。
写真は、1軒目のニラたま。
これをお肉に絡めていただくと、たまらなくおいしい。
テレビ朝日アナウンサーを経て、2019年よりフリーとして活動。現在、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)、自身初のラジオ番組『日本郵便 SUNDAY’S POST』(TOKYO FM/JFN)、『テンカイズ』(TBSラジオ)、MCを務める『土曜はナニする!?』(関西テレビ・フジテレビ系)などに出演中。
文/宇賀なつみ
※「宇賀なつみ 素顔のままで」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME9・10夏の合併号に掲載されたものです。