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【ヒャダインの温故知新アナリティクス】「新しい学校のリーダーズ」のブレークで思い出す「少年ナイフ」の全米デビュー

2023.08.22

 ガールズユニット「新しい学校のリーダーズ」が評価されていますね。『オトナブルー』がTikTokを中心に大バズり、過去作含め注目されていますね。古参ぶるわけではありませんが私が長年サポーターを務める『musicるTV』では「新しい学校のリーダーズ」を6年ほど前から追いかけており、こうやってブレークしたのは本当にうれしい限りです(とはいえ、出てきた当初は「わあ、コンセプト蟻地獄のグループがまた大人によって作られた」と、売れるとは全く思っていませんでしたが。後日、ちゃんと本人たちに謝りました)。

 さて「新しい学校のリーダーズ」の魅力は、メインボーカルSUZUKAの圧倒的歌唱力と日本の歌謡曲を意識した節回し、4人のコンセプチュアルないでたち、そして組み体操などを組み込んだほかでは見たことない振り付けとダンス能力、H ZETT MさんやYonkeeさんなどの国内外にとどまらないサウンドメイキングなどなど特筆すべきことはたくさんあるのですが、何よりも4人のセルフプロデュース能力の高さが一番ではないでしょうか。

 2010年代のアイドルブーム、やはり「大人にやらされている」女の子たちが必死にがんばる、という構造だったことは否めないですが「新しい学校のリーダーズ」と話をした時、完全に本人マターになっていて海外のアーティストのアプローチと似通っているなと感じました。そう。彼女たちはなんなら海外で先にブレークしていて「ATARASHI GAKKO!」という名前であの名門88risingと契約、アメリカでバンバンライブしているんです。しかも大盛り上がり。頼もしいったらありゃしません。

「新しい学校のリーダーズ」個性と自由ではみ出す4人組ダンスヴォーカルユニット「新しい学校のリーダーズ」。左からSUZUKA、KANON、MIZYU、RIN。

あのニルヴァーナの心もつかんだ少年ナイフ

 しかし、日本の音楽業界が世界で活躍するのは本当にレアケース。過去を振り返っても数々の人が夢半ばでした。日本国内では圧倒的な人気を誇るドリカムや宇多田ヒカルさんでさえアメリカではドカンといきませんでした。日本じゃ神様みたいな位置にいるのに!!

 一方、アメリカでドカンといった、で思い出されるのがガールズバンド「少年ナイフ」です。1981年結成のガールズバンドでジャンル的にはオルタナになるんでしょうか。歌唱力抜群!的な歌い方ではなく地声でまっすぐ届けるような歌声。彼女たちのインディーズ盤がアメリカで広まり、86年に全米デビュー。日本よりアメリカで人気が広まるんですね。そして少年ナイフの大ファンだ、というあのカート・コバーン率いる「ニルヴァーナ」とともに全英ツアーを行なうまでになります。

 しかし、凱旋帰国して日本でCDを出してもそこまでブレークはしませんでした。不思議ですよね。アメリカで人気なもの=全世界で人気というわけではないんです。注釈を入れておきたいのですが、彼女たちは別に「アジア性」を売りにしたわけではなく(やたら琴とか三味線が入る、とか)、あと全曲英語、ていうわけでもなかったのに受け入れられたんですね。私が勝手に分析するに、その魅力は「ほかになかった」からだと思います。当時のアメリカはまだロックブーム。いろんなロックバンドが出てきた中、日本人女性たちがわからない言葉でヘンテコだけどかっこいい音楽を奏でている。こりゃほかにはない! COOL! ってことでしょうか。

「ほかにはない」は非常に大きな要素で「ATARASHI GAKKO!」もほかにはない。日本人の女の子4人がセーラー服着てかっこいい曲を歌い上げてバキバキのトンチキダンスを見せつける、こりゃ唯一無二ですね。海外を目指す日本人アーティストの多くは正面突破を狙うほうが多かった気がします。アメリカで受けている音楽をトレースして英語でまんまやる。要するに相手の土俵で相撲したわけです。その意気込みは立派だし野心的だとは思うのですが、やはり相手の土俵では不利ですよね。そこを「少年ナイフ」も「ATARASHI GAKKO!」もずらした。自分たちの土俵を空輸して演舞を見せた、とでもいいましょうか。今、世界的にK-POPに押されているJ-POP界ですが、YOASOBIが海外チャートで1位を取ったりと逆襲が始まっていますし、未来が楽しみです!

文/ヒャダイン

ヒャダインヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動している。

※「ヒャダインの温故知新アナリティクス」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME9・10夏の合併号に掲載されたものです。

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