飲む中絶薬
これまで、日本国内では「手術」に限られていた人工妊娠中絶。そこに新たな選択肢として加わったのが、この4月、厚生労働省に認可された日本初の〝飲む中絶薬〟『メフィーゴパック』だ。
そもそも中絶手術は子宮を傷つけるリスクがあるとして、WHOでも「薬」での中絶が推奨されている。そんな中、「世界70か国以上で使用されている状況をふまえ、様々な知見やデータをもとに薬剤の投与量や投与方法を検討、最良の中絶薬として開発しました」(発売元・ラインファーマ)。
同薬は2種類の薬剤からなり、最初に妊娠の継続に必要なホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」を投与、36〜48時間後に子宮の収縮を促す「ミソプロストール」を服用。治験ではその24時間以内に93%が中絶に至った。
ただし、指定医師が在籍する医療機関でのみの扱いで、薬局での購入は不可。また当面の間、中絶確認までは院内待機が義務づけられるほか、保険対象外となり、費用も妊娠初期手術と同水準の10万円程度になるとの見方がある。一方で手術より心身の負担が少ないというメリットも。いまだ課題はあるものの、ひとつの大きな進歩であることは間違いない。
日本では出産や性生活について女性自ら決める権利(SRHR:Sexual/Reproductive Health and Rights)が軽視されがちな傾向にある。この認可が変化の一歩になることを期待したい。
◆『メフィーゴパック』の概要
『メフィーゴパック』を利用するにはまず専門医が検査。妊娠63日(9週0日)を超えていないことや、子宮外妊娠でないことを確認することが必要とされている。
取材・文/桑原恵美子