2. 物損事故の損害賠償の請求方法
物損事故の損害賠償請求は、任意保険会社または加害者本人に対して行います。加害者が任意保険に加入していれば任意保険会社、加入していなければ加害者本人が損害賠償請求の相手方です。
実際の損害賠償請求は、主に以下の手続きを通じて行います。
①示談交渉
話し合いによって損害賠償の金額等の合意を目指します。
②交通事故ADR
裁判所以外の第三者機関による紛争解決手続きです。弁護士などの専門家が、中立的な立場で示談あっ旋などを行います。
交通事故ADRは、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターが取り扱っています。
参考:公益財団法人 交通事故紛争処理センターHP
参考:公益財団法人 日弁連交通事故相談センターHP
③訴訟
裁判所の公開法廷で行われる紛争解決手続きです。損害賠償請求権の要件事実を立証し、裁判所に対して損害賠償を命ずる判決を求めます。
60万円以下の損害賠償請求については、審理が原則として1回で終結する少額訴訟も利用できます。
参考:少額訴訟|裁判所
3. 物損事故の損害賠償請求に関する注意点
物損事故の損害賠償請求に関しては、特に以下の2点に十分ご注意ください。
①自賠責保険は適用対象外
②後からケガが発覚する場合がある
3-1. 自賠責保険は適用対象外
自動車の運転者には自賠責保険への加入が義務付けられていますが、自賠責保険が適用されるのは人身事故のみです。当事者にケガがない物損事故については、自賠責保険が適用されません。
特に、加害者が任意保険に加入していない場合には、被害者は物損事故について加害者側から保険金を受け取れません。ご自身の加入している自動車保険の保険金を請求するか、加害者本人に対して直接損害賠償を請求しましょう。
3-2. 後からケガが発覚する場合がある
交通事故直後の段階ではケガがないと思っていても、時間が経ってからケガが発覚するケースがあります。
事故から通院開始までの期間が長いと、ケガと事故の因果関係を立証することが難しくなります。交通事故に遭った場合は、一見して無傷であっても、できる限り早い段階で医療機関を受診することをおすすめします。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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