アスベスト(石綿)は、かつて防火・防音・断熱用の資材として広く利用されていた繊維状の金属です。肺がんや悪性中皮腫などの健康被害を引き起こすことが判明したため、現在では、日本国内におけるアスベストの製造が全面的に禁止されています。
アスベストの健康被害は、アスベストの生産工場(=石綿工場)や、アスベストが使用されている建設現場で働いていた方に数多く見られます。これらの方を対象に、国は「アスベスト給付金」を設けて補償を行っています。
アスベストによる健康被害は、潜伏期間が20~50年と非常に長いのが大きな特徴です。過去に石綿工場や建設現場で働いていた方は、アスベスト給付金の受給要件に該当するかどうかをご確認ください。
本記事では、アスベスト給付金の受給要件や手続きをまとめました。
1. アスベストに関する賠償金・給付金の対象者
アスベストによる健康被害につき、規制権限を適切に行使にしなかったことによる国の責任を認めた最高裁判決を踏まえて、国はアスベスト被害者に対する賠償・補償を行っています。
国の賠償金・給付金の対象となるのは、以下のいずれかに該当する方です。
①石綿工場の元労働者・遺族
②石綿に晒される建設業務の元従事者・遺族
1-1. 石綿工場の元労働者・遺族
以下の要件をすべて満たす方またはその遺族は、国に対して賠償金を請求できます。
①1958年5月26日から1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと
②①の結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと
(例)石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚など
③提訴の時期が損害賠償請求権の期間内※であること
※もっとも重い症状が新たに判明した時点から3年(2020年4月1日以降に新たに判明した場合は5年。ただし、2020年3月31日までに損害賠償請求権が時効消滅している場合を除く)
参考:石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々との和解手続について|厚生労働省
1-2. 石綿に晒される建設業務の元従事者・遺族
以下の要件をすべて満たす方またはその遺族は、国に対して建設アスベスト給付金を請求できます。
①以下の期間において、石綿にさらされる建設業務に従事したこと
石綿の吹付け作業に係る建設業務:1972年10月1日~1975年9月30日
一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務:1975年10月1日~2004年9月30日
②①により、石綿関連疾病※にかかったこと
※中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)、良性石綿胸水
③労働者、または一人親方・中小事業主(家族従業者等を含む)であること
④石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断日、または石綿肺に係るじん肺管理区分の決定日(石綿関連疾病により死亡したときは、死亡日)から20年以内に請求すること