キムチ鍋と豆乳鍋、2大人気鍋のかけあわせ…「濃厚キムチ豆乳鍋」(キッコーマン食品)
市販されている鍋つゆの味種別市場規模を見ると、「キムチ鍋」が最大ボリュームゾーン。市販されているパウチタイプの鍋の多くは、3~4人前を想定しており、喫食シーンを想像すると、「夫婦2人+子供1~2人」の家庭がターゲットとなる。しかし、キムチ鍋に代表される辛い鍋は、子供には食べづらい。この課題を解消するべく、豆乳シェアNo.1のキッコーマンが発売したのが「キッコーマン 濃厚キムチ豆乳鍋」だ。
▲「キッコーマン 濃厚キムチ豆乳鍋(750g)」希望小売価格396円(税別)。「キッコーマン おいしい無調整豆乳」と豚白湯を合わせたクリーミーで濃厚なスープに、韓国産唐辛子を合わせた鍋つゆ。豆乳が入っているので、子供でも食べやすいマイルドなキムチ味
「最も苦労したところは、豆乳とキムチの風味のバランスです。豆乳本来のやさしく、クリーミーな味わいの中にもキムチのやみつき感をしっかりと感じるよう、試作を繰り返しました」(キッコーマン食品)
とはいえ、夫は「味にパンチがなくて、食が進まない」という理由で、豆乳鍋が苦手。そして2人とも辛い物が得意ではないので、キムチ鍋は鍋シーズンを通して1回作るか作らないか。得意ではない2種類の鍋のかけあわせということになるので、正直、コンセプトを知っても期待薄だった。
キムチ鍋でも豆乳鍋でもなく、辛さがちょうどいい!
▲「キッコーマン 濃厚キムチ豆乳鍋」。パッケージの指示に従い、豚肉、白菜、ニラ、豆腐を入れた
「つまりはマイルドにしたキムチ鍋だな」というイメージでスープを味見してが、そうではなかった。豆乳鍋にキムチを入れてキムチ鍋風にしたのではない、豆乳とキムチ味の一体感があり、辛さとまろやかさのバランスが絶妙なのだ。夫も「辛さがちょうどいいから、食が進む」と驚いていた。またこのちょうどいい辛さを下支えしている豆乳のコクも感じられ、豆乳鍋の美味しさにも開眼したようだった。
▲子どもでも食べられるレベルの辛さだが、旨みが濃厚で食欲をそそる
パッケージで紹介している具材のほかに開発担当者がおすすめしているのが、タラを入れた「海鮮キムチ豆乳鍋」。「スープに魚介の旨み加わって、さらに奥深い味わいになる」とのことで、確かに美味しそう。シメに餃子を入れても美味しいとのこと。
「コロナ禍では大きい鍋で作った鍋料理を、複数人でシェアすることを敬遠する意識の高まりもあり、個食タイプの鍋つゆの伸長に拍車がかかりました。しかし今後、改めて複数人で同じ鍋からシェアして食べるシーンが増えるため、パウチタイプの需要が高まると見込んでいます」(キッコーマン食品)
ピリ辛ブーム×健康ブーム=「アーモンド担々鍋スープ」(マルサンアイ)
最近、カフェメニューやスイーツの素材としてよく見かけるようになったアーモンドミルク。その波は鍋つゆにも波及している。他社に先駆けて2013年から日本国内でアーモンドミルクの製造・販売をスタートさせたマルサンアイが、2023年秋冬限定商品として発売したのが、「アーモンド担々鍋スープ」。
「近年注目度が上がっているアーモンドミルクや、アーモンドそのものの輸入量も上がっており、アーモンド関連の市場は、右肩上がりの状況にあります。そこで当社だからこそできる商品として、アーモンドを加工するノウハウを生かし、豆乳鍋に続く健康感の高い鍋スープとして、『アーモンド担々鍋スープ』を企画いたしました。アーモンドは油分の多い素材のため、油分の調整には非常に苦労しました」(マルサンアイ)
▲「マルサンアイ アーモンド担々鍋スープ(720g)」350円(税抜き)。香り高いアーモンドベースにチキンのうまみを合わせ、2種類のごまのコクを効かせ、マルサン伝統のこうじみそに、豆板醤を加えている
じんわりとした辛さの奥に、ほんのりアーモンドの香り
▲おすすめの具材の中から豚肉・白菜・豆腐・青梗菜を使い、春雨も入れて作ってみた
スープをあけると一般的な坦々鍋より白っぽく、辛み成分を抑えている感じ。温まってくるとほのかにアーモンドの香りも感じられる。驚いたのは、沸騰するとそぼろ状の白い泡がたくさん出てくること。最初は豚肉のアクかと思ったが、パッケージをよく読むと「スープがそぼろ状になることがありますが、アーモンドペーストが固まったものですのでそのまま召し上がれます」とのこと。沸騰がおさまると、泡はそれほど目立たなくなる。
▲バランスのとれた旨みと穏やかな辛みで、ほんのりアーモンドの香りも
スープはアーモンドのまろやかさが前に出て、じわっとくる穏やかな辛さが後からついてくる感じ。「アクセントとなる辛味についても、家族みんながおいしく食べられるピリ辛のバランスを探るために試作を重ねました」(マルサンアイ)とのことで、一般的な坦々鍋よりはかなり辛さがマイルドなので、子供にも食べられそう。
アーモンドを原材料に作られたアーモンドミルクは、豆乳などの植物性ミルクの中では比較的低糖質・低脂質でカロリーが低い。また抗酸化作用を持つビタミンEが豆乳より多い(100gあたり、豆乳0.01mgに対しアーモンドミルク3.32mg※文部科学省, 日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)。これまでアーモンドを使った鍋つゆはなかったので、美容に関心の高い女性に歓迎されるかもしれない。
「今年の鍋トレンドとして、スタンダードな系統をベースにしつつ、ピリ辛系など味にパンチがあるものや、濃いめの味の鍋が多いのかなという印象を受けています。当社の『アーモンド担々鍋スープ』も、ピリ辛+健康感で幅広いお客様においしく食べていただける商品設計にしています」(マルサンアイ)
◎取材協力/ヤマサ醤油株式会社、株式会社 Mizkan、キッコーマン食品株式会社、マルサンアイ株式会社
取材・文・撮影/桑原恵美子