バラエティ鍋つゆの火付け役は、「カレー鍋」だった
「鍋料理」といえば真冬のイメージだが、実は鍋つゆの新商品の大半は盛夏の8月に発売される。
現在のような鍋つゆのバラエティ化が始まったのは2006年。三軒茶屋の飲食店で新メニューとして登場しヒットした「カレー鍋」が大流行し、翌年には市販のカレー鍋つゆが次々発売された。その後、チーズ鍋、トマト鍋など変り種鍋つゆが次々に登場。毎年、新機軸のバラエティ鍋の戦場状態に。2000年代から2010年代前半まで鍋つゆは毎年、2桁の伸び率で市場を拡大していた。
最近はかつてのような目立ったヒット鍋つゆは出ておらず、定番の寄せ鍋、豆乳鍋、キムチ鍋が不動のベスト3を占めている。ちなみにそれぞれ市場規模は約33億円、約36億円、約63億円といわれている。2023年、各食品メーカーはどのような戦略で、鍋つゆの新たなトレンドを作ろうとしているのか。注目の新商品4品を食べてみた。
「シメまで待てない!」人に朗報…「いきなり〆(シメ)ちゃう鍋」(ヤマサ)
鍋のクライマックスのひとつが、最後に食べるシメ。だが「最後のシメまで鍋つゆが残っていない」「満腹でシメまで食べられない」「子どもはシメまで待てない」「のんびりシメまでやる時間がない」などなどの不満も多いという。そこでこの秋冬にヤマサが提案するのが、最初から麺を入れて煮込むことで、鍋の醍醐味であるシメのおいしさを最初から楽しむことができるという「ヤマサ いきなり〆(シメ)ちゃう鍋」シリーズ。
「ヤマサ いきなり〆(シメ)ちゃう鍋シリーズ(35g×4袋)」税別370円。左から、国産青ゆずこしょうのさわやかな辛味と鶏節・かつお節・宗田節のだしのうま味が特長の「ヤマサ いきなり〆(シメ)ちゃう鍋 ゆずこしょう鍋つゆ醤油 4食入」、「4種類の魚介(カニ・あさり・ホタテ・枯うるめ節)のうま味とコチュジャン・豆板醤・唐辛子で辛さをきかせた「ヤマサ いきなり〆(シメ)ちゃう鍋 旨辛チゲ鍋つゆ 4食入」、米味噌と豆味噌の2種類の味噌にとんこつのうま味をあわせた「ヤマサ いきなり〆(シメ)ちゃう鍋 味噌とんこつ鍋つゆ 4食入」
コンセプトを聞いた時、正直「それは単なるラーメン鍋やうどん鍋なのでは?」「鍋つゆの旨みがクライマックスになった最後にシメるからこそ、美味しいのでは?」といった素朴な疑問が次々に浮かんだ。
だがヤマサによると、「だしの原料の粉末を使用することで麺にうま味が絡みやすくしたり、海鮮のうま味や味噌は2種以上を組み合わせて複雑なうま味を演出したりして、ぐつぐつ煮込んだ〆の味わいを最初から感じていただける味づくりを工夫しました」とのこと。
誤算!スープが美味しいので、最後もやっぱりシメたくなる
▲麺でボリュームが出るので、シンプルな具材でもさびしく見えないのがありがたい
3種の中から、「ヤマサ いきなり〆ちゃう鍋 ゆずこしょう鍋つゆ醤油」を試してみた。封を切ると柚子胡椒そのものの鮮烈な香りが広がり、食欲をそそる。メーカーの推奨のシメは冷凍うどんだったが、夫の好物のインスタント麺を1分ほど下茹でして試してみた。
最初にシメ用の麺を入れるといつもより具が入らないので、鶏肉、キャベツ、豆腐といったシンプルな具でもボリューム感が出るのがありがたい。冷蔵庫に材料が乏しい時にもいいかもしれない。
▲柚子の爽やかな香りが効いたさっぱり味の塩系スープなので、野菜、豆腐、鶏肉がよく合う
麺好きの夫には大ウケで、「いいねえ」とご満悦。さっぱり味のスープがインスタント麺によく合って、「うどんより、麺にスープの味が染みこみやすいインスタント麺のほうがいいのでは?」と意見が一致。
だが、食べ始めてから気がついたのだ。シメる時は麺しか食べないが、最初から麺を入れると同時に具も食べなければならないので、あっという間に麺が伸びてしまう。インスタント麺は特にのびやすいので、メーカーが伸びにくい冷凍うどんを推奨している意味がここでわかった。
そして誤算がもうひとつ。この鍋スープがとても美味しいので、やはり食べ終わって残ったスープに何かを入れてシメたくなってしまうのだ。シメが2回楽しめると思えば、シメ好きにとってはアリな鍋かもしれない。
「昨今の食卓トレンドとして、家庭内での鍋料理は具材数が減り、汁物料理は具材数が増えている傾向にあることが分かりました。鍋物と汁物の境界が近づき、『汁物以上鍋物未満』といった新たな食べ方が増加し、常識にとらわれない、新しい鍋の時代が訪れていると思います」(ヤマサ)