日本の記念日には語呂合わせに由来する日も数多くありますが、特定の団体が記念日として設定する場合もあります。10月1日の『日本酒の日』はその代表例であり、全国で日本酒を楽しむ催しが開催されます。この機会に、由来や楽しみ方を知っておきましょう。
日本酒の日とは
日本酒の日とは、国民が日本酒に対して愛着を持ち、後世にその魅力を伝えることを目的に制定された記念日です。まずは、日本酒の日が制定された理由や、記念日に開催されるイベントについて確認しましょう。
日本酒造組合中央会が定めた日
日本酒造組合中央会が、日本の『國酒』である日本酒を後世に伝えるという思いから、1978年に10月1日を日本酒の日と定めました。
詳しくは後述しますが、10月は十二支の10番目である「酉(とり)」を表し、酉(とり)はお酒を意味する象形文字です。さらに、酒蔵が本格的に酒造りを始める時期が10月あたりであるため、季節の変わり目でもある10月1日を『日本酒の日』と定めました。
日本酒造組合中央会では、日本の文化遺産ともいえる日本酒を後世に正しく伝え、多くの人から愛情と理解を得るために、10月1日を記念日として制定したと発表しています。
全国で日本酒を楽しむイベントが開催される
『日本酒の日』の制定を受けて、毎年10月1日には全国の酒造組合・酒蔵・飲食店・酒販店などが連携して、日本酒を楽しむイベントを開催しています。
代表的な催しが、日本酒造組合中央会が主催する『KAMPAI!全国一斉日本酒で乾杯!』というイベントです。オンラインで全国の参加者が乾杯するとともに、皆で日本酒を楽しむ場として開催されています。
2023年9月23日〜10月1日の9日間にわたり、日本酒のおいしさや乾杯の楽しさなどを体感するイベント『全国一斉日本酒で乾杯!2023』が開催される予定です※。都合の合う人は、ぜひ参加してみるとよいでしょう。
※2023年8月末時点での情報です
日本酒の日の由来
前述の通り、日本酒の日は日本酒造組合中央会が定めた記念日であり、日本酒を後世に伝える目的で制定されました。日本酒の日の由来について、さらに掘り下げて確認しましょう。
10月は日本酒造りを始める時期
日本酒の日が定められた背景の一つとして、10月は新米が収穫される時期であり、国内の酒蔵が日本酒造りを始めるタイミングという点があります。晩秋から厳冬、早春にかけて仕込みが行われ、涼しい場所で夏を越すことで、秋口に熟成し芳醇な日本酒が完成するのです。
日本酒は、それぞれの季節を経て育てられるお酒であり、海の幸や山の幸が最もおいしい時期である秋に飲めるようになるという特徴を持ちます。
10月の「酉」は酒壺や酒を意味する
すでに説明したように、10月は十二支で酉(とり)の月にあたります。酉は壺(つぼ)の形を表す象形文字がベースとなっており、酒壺や酒を意味する文字です。古くから10月は新酒が生み出される時期であり、酒蔵によっては酒造りの『元旦』にあたる日として、10月1日を祝うケースも少なくありません。
そういった背景から、10月1日が日本酒の日として制定されました。上記のように誰でも参加できるイベントが各地で開かれるほか、地域によっては蔵元が集まり、地酒祭りを開催するケースもあります。
日本酒の日におすすめの日本酒
日本酒の日である10月1日におすすめのお酒を紹介します。旬の海の幸や山の幸とともに、おいしい日本酒を楽しみましょう。
ひやおろし
9~10月にかけて、まろやかでうまみの強い『ひやおろし』が登場します。これは出荷前に火入れを行わず、冷やのままおろす日本酒です。夏越し酒・秋出し一番酒・晩秋旨酒と、ほかにもさまざまな呼び名があります。
一般的な日本酒は殺菌や発酵防止のため、2回火入れをしますが、ひやおろしは1 回しか火入れをしないため、その後も発酵が続きます。そのため秋頃には、ほかのお酒では味わえないまろやかさを味わえるのです。
秋あがり
『秋あがり』とはその名の通り、秋口によい状態となる日本酒です。厳密には、春に搾ったお酒が夏を越して熟成し、秋になり旨味が増した状態を指します。厳密な定義や分類があるわけではなく、秋に旨味が増して飲み頃となる日本酒であり、逆に秋になっても熟成がうまく進まなかったものは『秋落ち』とされています。
ひやおろしと同様、秋においしく飲めるお酒で、同じ銘柄でも秋あがりと明記されている商品もあるので、一度チェックしてみるとよいでしょう。
一緒に楽しみたい食事も確認
ひやおろしや秋あがりは、秋に旬を迎える食材を使った食事とともに楽しむのが一般的です。シイタケやマツタケなどのきのこ類や、サケ・サンマ・サバ・ブリなど秋によく獲れる魚、ナスや大根をはじめとした野菜を使った料理によく合います。
例えば、魚は塩焼きや煮付け、きのこはマリネやアヒージョなどにすると、おつまみとして楽しめます。晩酌としてはもちろん、食事のお供に軽く1杯飲むのもおすすめです。料理のできる人は、日本酒の日のお酒に合うレシピを、自分なりに考えてみるとより楽しめるでしょう。
構成/編集部