だいぶ長い間タイヤを交換していないという点に心当たりがあるなら、なるべく早めにタイヤの状態を確認しましょう。劣化したタイヤは思わぬトラブルを引き起こす可能性もあり、大変危険です。タイヤを交換するべきか判断するポイントを、分かりやすく紹介します。
タイヤ交換の目安
交換が必要だと分かっていても、毎日乗っていると劣化になかなか気付きにくいものです。まずは、「このような状態になったら交換すべき」という、一般的なタイヤ交換の目安について知っておきましょう。
タイヤの寿命は最長でも10年程度
通常、タイヤには使用期限が明記されていません。これは、車の使用状況によって、劣化の度合いが大きく異なるためです。
おおよその判断ポイントとなるのが、『製造年週』と『使用期間』です。タイヤの寿命は、製造年から約10年とされています。
製造年週の表示様式は世界各国共通で、タイヤの側面に刻印されています。4桁の数字が『1020』なら、2020年の10週目、つまり2020年3月がそのタイヤの製造年週ということです。
ただしこの目安は、最長でも10年という意味であり、保管状況や使用状況によって寿命は縮まります。使用を開始してから4~5年たったら、タイヤ交換を考える時期だと覚えておきましょう。
走行距離の目安
タイヤの交換時期は、走行距離からでもある程度想定できます。交換の目安となる走行距離は約3万kmです。
タイヤに使用されているゴムは走行距離5,000kmで1mm摩耗するとされており、3万km走ったとすると、タイヤの溝がおよそ6mmすり減っているということになります。
新品タイヤの溝は8mmで製造されているため、残りは約2mmしかありません。溝の深さが不足したタイヤはブレーキが利きにくくなるので、安全のためにも交換の必要があります。
なお、残り溝の深さは『スリップサイン』でも確認が可能です。スリップサインは、タイヤ側面の数カ所に刻印された三角マークの延長線上にあり、残り溝が1.6mm以下になると表面に現れます。
走行中の音などに注意
使用年数や走行距離のような数値だけでなく、乗り心地の変化でもタイヤの状態が分かります。特に気にしておきたいのが、『ロードノイズ』と『ブレーキ』です。
ロードノイズとは、タイヤと路面との摩擦により起こる走行音のことです。タイヤが劣化すると衝撃を吸収する力が弱くなり、走行音が大きくなります。
ロードノイズは主にタイヤ回りで発生するため、走行中に音が気になるようになったら、タイヤ交換の時期が訪れたと考えてよいでしょう。
また、劣化したタイヤはブレーキが利きにくくなります。特に雨の日など路面が濡れているときは、マンホールや横断歩道で滑りやすく感じるでしょう。
見た目から考えるタイヤの交換目安
タイヤの状態は、定期的に目視でチェックすることも重要です。その際にどういった部分に注目すべきか、タイヤの劣化具合が分かるポイントについて確認しましょう。
ひび割れやキズができている
ゴムを原料とするタイヤは、どんなに丁寧に扱っていても接地面や側面に『ひび割れ』が出てきます。ひび割れの原因は、空気圧不足・荷重による負荷・紫外線などです。
浅いものなら問題ないですが、ひび割れがタイヤ内部にまで達している場合、突然『カーカス』と呼ばれるコード層が破裂(バースト)するリスクが高まります。
また、金属片が刺さったり路肩に乗り上げたりした際に、タイヤにキズが付いてしまうケースもあります。もしカーカスコードが露出していたら、車を運転するのは中止しましょう。
バーストは高速道路で起きやすい傾向にあり、命に関わる重大な事故につながりかねません。溝がまだ十分に残っていたとしても、深いひび割れやキズを見つけたら早急に点検を受けましょう。
変形や偏摩耗が起きている
タイヤは、劣化によって変形する場合があります。使用しない期間が長く同じ場所に負荷がかかる、空気圧の低下により接地面が増えてゴムが伸びるといったことが原因です。
運転時の衝撃による変形もありえます。代表的な変形は、内部のカーカスコードが切れて、こぶのような膨らみができる『ピンチカット』です。修理はできないので、交換しなければいけません。
また、急ブレーキが多かったりカーブ時の速度が速かったりといった、運転のクセによって偏摩耗が起こる可能性もあります。
偏摩耗とは、タイヤが均等に減らず、摩耗が偏った状態です。タイヤが偏摩耗していると、乗り心地が悪くなり、走行を続けることでバーストしやすくなります。
夏用タイヤ、冬用タイヤの交換目安
雪が多い地域や、通勤に自動車を使用している場合、夏と冬でタイヤを履き替える人も多いでしょう。タイヤの種類によって、交換時期も異なるのでしょうか。夏用・冬用それぞれのタイヤ交換の目安について解説します。
夏用タイヤの交換目安
夏用タイヤの場合は、これまで解説してきたチェックポイントに当てはまっているかどうかが、交換の目安となります。
タイヤの溝が残り1.6mmというのは、道路交通法の第62条、第63条に定められたギリギリのラインです。1.6mmを下回ったタイヤで走行するのは交通違反となり、反則金が科されます。
タイヤ本来の性能を維持できるのは、残り溝4mmまでとされています。運転できないわけではありませんが、4mmを切った時点で、交換を念頭に置いておきましょう。
冬用タイヤの交換目安
冬場は積雪や凍結などにより、路面が滑りやすくなる日が増えます。そのため、冬用のスタッドレスタイヤは、夏用タイヤよりも強いグリップ力が求められます。
新品のスタッドレスタイヤの溝は、夏用タイヤより2mm深い10mmです。交換の目安となるのは50%摩耗したタイミング、つまり残り溝が5mmになったときです。
スタッドレスタイヤの残り溝は、スリップサインとは別に『プラットホーム』でも確認できます。プラットホームとは、タイヤのブロックの間にある5mm程度の突起のことです。
ブロックと突起が同じ高さになっていたら、タイヤが50%摩耗しているサインです。安全を確保するためにも、シーズン途中の点検を忘れないようにしましょう。
タイヤの寿命を延ばすには?
タイヤは決して安い買い物ではなく、交換を依頼すれば工賃もかかります。なるべく長持ちさせるためには、どのような点に気を付けておけばよいのでしょうか。
安全運転と日常的な点検が大切
異常が出た際にすぐに対処できれば、タイヤを交換せずに済む可能性もあります。破損やひび割れは素人目でも見つけられるので、乗車前にひと通り点検する習慣をつけておくとよいでしょう。
急ブレーキや急ハンドルも劣化の原因になります。できる限り安全運転することは、身を守るだけでなくタイヤの寿命を延ばすことにも役立ちます。
また、シーズンごとにタイヤを履き替える場合は、交換したタイヤにカバーをかけ、直射日光や雨が避けられる場所で保管しましょう。
空気圧を維持する
パンクしていないタイヤでも、毎日少しずつ空気が抜けていきます。そのまま放置しておくと空気圧が不足し、接地面が増えて摩耗が早まってしまうでしょう。
こうした状態を防止するためには、定期的な空気圧の点検と調整が必要です。空気圧の点検は、ほとんどのガソリンスタンドやカー用品店で無料で行ってくれます。
1カ月に一度くらいの頻度で点検するのが理想とされているので、給油のついでに点検してもらうとよいかもしれません。
タイヤの位置をローテーションする
タイヤは運転のクセにより、偏ってすり減るケースがあります。また駆動方式によっては、遊輪か駆動輪かで摩耗が異なる場合もあります。
こうした偏摩耗を防ぐには、定期的なタイヤのローテーションが効果的です。ローテーションとは、前後左右にタイヤの位置を交換する作業です。
装着位置を替えることにより、摩耗を均一化させられるためタイヤの長持ちにつながります。ローテーションを行う目安は走行距離約5,000kmとされているため、点検時に一緒に依頼するとよいでしょう。
構成/編集部