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ビジネスパーソンが生成AIを活用するためには企業ガバナンスが不可欠である理由

2023.08.18

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

ビジネスパーソンがAI時代を生きるために必要なこととは

DX支援においてビジネスの生産性向上への寄与が高いとされる生成AIは、様々な業界、領域での効率化や事業成長を促進するテクノロジーとして期待が高まっている。

デジタルとエンジニアリングを融合させたソリューションを世界30ヵ国で提供するAKKODiSの日本法人「AKKODiS コンサルティング」では、ビジネスパーソンの間で生成AIの活用は進んでいるのか、どのように活用しているのかについて調査を実施。その結果、業務で生成AIを活用したことのないビジネスパーソンは80.3%に上った。活用したことのない人のうち、今後活用したいという回答も22.5%にとどまっている。

同社では、スタートアップ、教育機関、研究開発機関との連携を促進し、新たなビジネスの創出、知識の共有、実証実験を通じて未来を拓くプラットフォームとなることを目指して、社内外のコラボレーションを促進しイノベーションを創発する拠点「AKKODiS innovation Lab(アコーディス・イノベーション・ラボ)」(以下、ラボ)を新設した。

ラボ開設の発表会にて、生成AIが今後世の中に及ぼす影響や、ビジネスパーソンがAI時代を生きるために必要なことは何かなど、識者を交えたトークセッションが開催された。

【登壇者】

〇AKKODiS コンサルティング取締役 兼 COO 北原秀文氏
〇AKKODiSコンサルティング 常務執行役員テクノロジー統括 CTO 前田拓宏氏
〇慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科 特別招聘准教授 Qosmo代表 徳井直生氏

北原氏「今後5年のスパンで生成AIが指数関数的に進化をしていくと思われ、スピード感もインパクトも私の感覚ではインターネット登場以上だと感じている。今後あらゆる領域で影響を及ぼしていくと思うが、その点について伺いたい」

徳井氏「創作活動の中でAIをどう活用するのか、日々の取り組みを通じて社会の中でAIがどのような役割を果たすべきかを研究しているが、AIによって置き換えられる職域がある一方で、AIを使って生き残っていくイノベーションが起きていく職域もあり、社会の二極化が進むと思う。

AIで生き残る職域でも、創造性が必要になる場面は人間が行いAIを加味して新しいものを作っていくケース、AIはコストがかかるからと人間が学習データを作ったり、AIのアウトプットを確認するようなAIに使われてしまうケースがあり、AIを使うのか、AIに使われるのかが大きな境になると思う」

前田氏「現在のテクノロジーの波は『自分には関係ない』では事実上済まなくなっている。どう使っていくか大事で、私も日々生成AIを使っている中で、業務効率化だけでも3~4割上がった。社内で500人ほどに試験的に業務で使ってもらったが、やはり要は使い方ということがわかってきた。うまく使うほど自分のメリットになるので、AI時代におけるビジネスパーソンのマインドセット次第で良い方向、悪い方向へ行くと感じている」

北原氏「生成AIは芸術や音楽とすでにクリエイターの領域に入ってきているが、それに対して人間の良さをどう引き出していくべきか」

徳井氏「今の生成AIは精度が高く『それっぽいもの』を出してくるが、新しいジャンル、新しい表現方法を生み出すというレベルまでには行っていない。AIは基本的に大量のデータから内在しているパターンを学習していくものなので、過去にあるものを基にした平均的なものになりがち。人間が今後やるべきこととしては、過去にない新しいものを造り、AIが出してくる表現の外側に行く意識が必要になってくるのではないか」

北原氏「生成AIを使ってビジネスを推進していかなくてはならない時代が来たが、経営側、ビジネスパーソンはどこを変えていく必要があるか」

徳井氏「今まではビジネスを回すためのタスクにかなり時間が使われてきたが、それをAIによって効率化できれば新しいことを考えるのに時間を使えるようになる。そこで大事なのは、どこまでを自動化するか、どこを自動化しないかという判断だと思う。

私の中では生成AIはどの教科もこなすことができて、何でも知っている優等生だが、話してみると案外面白くないというイメージ。なんでもそつなくこなす優等生タイプよりも、サッカーだけは誰にも負けないなど、尖った人の方が実際は面白い。

今までサッカーしかできなかった、ピアノしか弾けなかった人たちが75点でも80点でもいいからAIをこなせるようになれば、尖った才能にAIがプラスされ、絶対にこちらの方が強い。

ビジネスも同じで、自動化できるということは他社も同様にAIを使っているので差別化は難しいが、ここだけはAIで自動化できないところを見極めて、そこに注力できるかということが重要になってくると思う」

北原氏「尖った人材は日本のビジネスパーソンではなかなかいないという印象がある。ビジネスパーソンの手前である学生がChatGPTを使って論文を書くことが話題になっていたが、大学生と接している中で、使っているかどうかの見極めは可能?」

徳井氏「簡単なレポートだとChatGPTを使う学生は多い。最初は急に言葉遣いがうまくなったり、英語のレポートだと妙に流暢になっていたりしていたのでわかったが、最近は学生も賢くなって「あまり難しい言葉を使わずに」と指示を出すのでわかりにくくなっていて、イタチごっごという状況。

ChatGPTを使わせないということではなく、使ったうえで何ができるか、何ができないのか、人としてどこに注力すべきか考えることが大事。授業では敢えてChatGPTを使ってレポートを書かせ、生成したAIを題材にそれを批評する文章を書くということを行っている」

前田氏「ビジネスで生成AIを使わない選択肢はもはやないので、どうやって使うかが重要だが、お客様と接していてよくあるパターンが、経営陣が『AIを使って何かやりたい』と漠然としたイメージしか持っておらず、現場が『どうしたらいい?』となるケース。

現場レベルでは、工場を例に引くと、いまだにエクセルが何百種類もあり、エクセルでの仕事をAIでどう効率化するかと考えてしまって、生成AIに置き換えるという発想がない。

重要なのは経営者がデジタルの波を捉えたうえで、自社のビジネスにどう活用すべきかの方針を打ち出すこと。経営陣から現場まで、方針がしっかりと合致するとイノベーションにつながっていくのではないか」

北原氏「日本はITリテラシーが低く、デジタルの活用が欧米と比べると10年単位で遅れている。逆に言うと今がチャンスで、徳井さんがおっしゃったように徹底的に活用しに行く側に立って、一足飛びに生成AIを使いこなす社会にしていく発想もあるのでは」

前田氏「可能性はあると思う。弊社も体現することが重要だと考え、今月から生成AIを活用したコンサルティングサービスを始めている。戦略はもちろん、社内に実装して結果につなげるところまで伴走していく。導入の際にスキリングまでしっかりと考えている企業は取り入れるのが早い。一方で、未だに教育費はコストだと考えてしまう経営者もいて、そのあたりは変えていくべきところではないか」

北原氏「OpenAIのサム・アルトマンCEOは、ベーシックインカムの提唱者でもあり、面倒な作業はAIに任せて人間はもっと楽に生きて創造性を発揮しようと言っているが、日本に生成AIが普及してくると、今のままで便利だからこれでいいという発想になってしまう可能性もある。日本で生成AIをうまく活用していくために、人間自体もアップデートしていく必要があるのではないか。ビジネスパーソンがAI 時代を生きるためには、どのようなリスキリング、アップスキリングが必要になるか?」

徳井氏「使ってみるとAIの限界がわかってくるので、リスキリングも必要になってくると思う。特に日本人の場合、上から来るものを無条件に受け入れてしまうという面がある。政府も産業界もこぞって生成AIを推進しているが、クリティカルな目で見て、この技術が社会においてどのように活用されていくべきか、社会にどのような影響を与えるかということをきちんと考える必要がある。

AIが出してくるものは平均的になりがちなので、経営の効率化まではいいが、アイデアを出すというところまで任せてしまうと、人間の考える力を失わせてしまう結果になりかねない。どこまで任せるか線引きする力をつけていくことが大事なのではないか。規制が入ることでイノベーションが滞ってしまう可能性もあるが、最低限のルールも必要だと思う」

【AJの読み】生成AIを業務で活用しているビジネスパーソンは2割未満

AKKODiS コンサルティングの調査では、生成AI を仕事で活用したことがあるビジネスパーソンは2割未満で、ほとんど活用していないことが判明した。利用者が限定的である理由を前田氏はこう分析している。

「生成AIに関する法的枠組みや運用ポリシーが十分に整備されておらず、企業内のガバナンス整備への対応が早急に求められている。また、ビジネスパーソンは生成AI の正確性や精度についても懐疑的な部分があり、活用を控える傾向にあると考えられる。どのようにすれば企業が生成AIを適切に活用することができるか検証すると共に、コンプライアンスや倫理的な側面からも企業ガバナンスを整える必要があると思う」(前田氏)

新設された「AKKODiS innovation Lab」では、研究成果の発表や情報交換のプラットフォームとしても機能し、産業や社会のトレンドに関する最新情報を共有し、新たな知見の獲得と、進化し続ける環境に適応する力を養う場にしたいと同社は意気込む。

「AKKODiSコンサルティングでは約1万人のエンジニアが数千社の取引企業先に常駐しており、日本の企業の課題が吸い上がる仕組みを作っている。課題を産業ごとに集約してソリューションを作っていくが、ラボではそれを展示するスペースを作り、実際に体験できるようにしている。

ラボでの実証実験を通じて、社内外の課題の解決やアイデアを具現化し、デジタル技術に関わるものはその場でアジャイルにシステム開発を行い、アイデアの創発から実装までを短期間に実現させる取り組みを自社、企業様と共に取り組んでいきたい」(前田氏)

文/阿部純子

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