安全故の面倒臭さ
筆者は長年のiPhoneユーザーだが、いざとなれば「デバイスを消去」という手段も用いることができる。これにより、iPhoneの中の情報ごと消してしまうのだ。
つまり、カードを完全電子化することにより自分の手でそれを保護することが容易になるというわけだ。これを鑑みても、バーチャルカードが物理カードより高い安全性を保持している事実が分かる。
もっとも、バーチャルカードにはある種の「煩わしさ」もある。カード発行会社のアプリを使ってカード番号を表示する際、その度にIDと暗証番号を入力しなければならなかったりもする。ID・暗証番号の保存機能を敢えて設けていないアプリも存在する(一定期間が経過したらID・暗証番号入力を求める仕組み)。
しかしこれも、セキュリティー面を考慮しているからこその設計である。面倒臭いところはどうしても出てしまうが、その分だけ物理カードと比べたら情報が漏洩してしまう可能性が少ないのだ。
誰でもバーチャルカードを所持する時代へ
バーチャルカードが普及することで、誰でもクレカやデビットカードを所持する光景が実現するかもしれない。
「誰でも」というのは、未成年者も含まれる。さすがにクレカは持てないが、デビットカードなら問題ない。そして近年、デビットカードのバーチャルカード化も着実に進んでいる。
デビットカードなら審査がないため、オンラインで申し込みをした直後にバーチャルカードが発行されるというメリットもある。あまりの呆気なさに、唖然とする人もいるかもしれない。
世代によっては「未成年者がデビットカードを持つのはよくない。まだ早過ぎる」という声も根強い。が、金は電子化したほうが管理しやすくなる上、その気になれば1日の利用上限額も設定できるのだ。
どのみち、カードはもはや「カード」ではなくなっている。バーチャルカードの普及・流通によりあらゆる商取引が効率化され、キャッシュレス決済自体の安全性も向上していくだろう。
取材・文/澤田真一