心血管疾患や死亡のリスクの低さと関連のある6種類の食品
世界80カ国の人々の食事関連データを解析した研究から、野菜、果物、魚などの摂取量が多いほど、全死亡(あらゆる原因による死亡)や心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患(CVD)発症のリスクが低いことが明らかになった。
マクマスター大学(カナダ)のSalim Yusuf氏らの研究によるもので、詳細は「European Heart Journal」に2023年7月6日掲載された。
この研究ではまず、21カ国の35~70歳の一般住民16万6,762人が参加し現在も進行中の大規模疫学研究「PURE研究」のデータを用いて、新たな食事スコアを開発。そのスコアを、5件の疫学研究(80カ国、24万4,597人)に適用し、全死亡およびCVDリスクとの関連が検討された。
なお、論文の上席著者であるYusuf氏によると、「これまでにも地中海食スコアなどを用いた同様の検討が行われているが、それらのスコアは主に欧米の高所得国のデータを基に作られたものである」という。それに対してPURE研究は、「低・中・高所得国が含まれていることが特徴だ」としている。
新たに開発された食事スコアは、野菜、果物、ナッツ、豆類、魚、乳製品という6種類の食品について、対象全体の摂取量の中央値以下の場合は「0」、中央値より多い場合は「1」として、合計6点のスコアで評価するというもの。
PURE研究の参加者の平均は2.95±1.50点であり、国民1人当たり所得と正相関していた(傾向性P<0.0001)。
PURE研究では、中央値9.3年(四分位範囲7.5~10.8)の追跡で全死亡1万76件、CVDイベント8,201件が記録されていた。
食事スコアと全死亡およびCVDリスクとの関連の解析に際しては、交絡因子〔年齢、性別、喫煙・運動習慣、摂取エネルギー量、ウエスト・ヒップ比、糖尿病、教育歴、経済状態、スタチン・降圧薬の使用、居住環境(都市部か否か)など〕の影響を統計学的に取り除いた。
その結果、スコアが1点以下の群(17.6%が該当)と比較して5点以上の群(17.0%が該当)は、全死亡〔ハザード比(HR)0.70(95%信頼区間0.63~0.77)〕、CVD〔HR0.82(同0.75~0.91)〕ともに有意に低リスクだった。
PURE研究とは別の血管障害を有する患者を対象とする3件の研究、および2件の症例対照研究のデータを用いた解析からも、同様の結果が示された。
また、PURE研究を通じて、以下のような健康的な食事パターンが明らかになった。それは、スコアが5点以上の人が摂取しているものであり、野菜と果物は毎日それぞれ2~3食分(サービング)摂取し、そのほかに1週間で豆類を3~4サービング、ナッツを7サービング、魚を2~3サービング、乳製品を14サービング摂取するというもの。
ただしYusuf氏によると、これら以外にも「精製されていない全粒穀物や未加工の肉であれば、適量の範囲内である限り、健康上のメリットは変わらない」としており、それぞれ1日に1サービング程度はほかの食品と置き換えてもよいという。
なお、世界保健機関(WHO)によると、2019年には世界中で約1800万人がCVDにより死亡しており、これは全死亡者数の約32%に相当する。またCVD死の約85%は、心筋梗塞と脳卒中によるものだった。(HealthDay News 2023年7月10日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/eurheartj/article/44/28/2560/7192512
構成/DIME編集部