自動車保険のペーパーレス化。これを利用すれば年間保険料の割引が発生する反面、「オフライン環境下では保険内容を確認できない」というデメリットがある。
「今時、オフライン環境下なんてそんなにないだろ!」と言われそうだが、筆者はこの記事を日航機墜落事故の慰霊行事のニュースを観ながら書いている。御巣鷹山は電波が届きにくく、パンデミックの際も行事への「リモート参加」ということが不可能だった。が、今年からは衛星を活用した通信網が整備されるとのこと。
日本は世界有数の山岳国であることを忘れてはいけない。山間部では、都市部のように「いつでも確実にスマホが使える」というわけではないのだ。
「山間部への行楽」を考慮すると、自動車・バイク保険のペーパーレス化は必ずしも最良の判断ではないのでは?
「保険証券のペーパーレス化」は最良の判断か?
まずは筆者のバイク保険を例に挙げて解説していこう。
筆者の所有するバイクは2台。どれも三井ダイレクト損害保険の商品に加入していて、紙の保険証券はもらっていない。こうすることで「eサービス特約」というのが付与され、筆者の場合は年額保険料から500円割引される。
故に紙の保険証券自体は送られてこないのだが、それはあくまでも「自分で保険証券を印刷する必要がある」という意味だ。
これをしておかないと、事故に遭ったところがオフライン環境下だったらどうするのかという問題が発生する。滅多に行かない高原や山の麓、だからこそこのようなところでトラブルが起こったらどうしよう……ということも思案しておかなければならないはずだ。
筆者の住まいは静岡市葵区の山間部に近い場所にある。休日になると、近くの通りをツーリングの一行が気持ちよさそうに走っている。行き先は口坂本、梅ヶ島、或いは井川である。夏でも涼しい山間部でしかも温泉があるから、バカンスシーズンには県外からもツーリング客が訪れるのだ。
静岡市山間部は、沿岸部とは交通状況がまったく異なるということをここで強調させていただきたい。
山間部で事故に遭ったら
筆者自身もよく行く口坂本温泉までの道路は、決して広くはない。
気をつけなければ対向車と衝突してしまう可能性もある上、崖からの落石も多い。ヘアピンカーブも当然ある。ツーリングの難易度は決して低くないのだ。だからこその達成感もあるのだが、やはりここは「事故を起こしたらどうするべきか」を考えておきたい。
非常時には「アナログな方法」が、案外有効だ。
そうしたことを鑑みると、紙の保険証券を敢えてもらっておく判断は決して悪いものではない。もちろん、そうすることで特約即ち割引はなくなってしまう。が、それを補って余りある「安心感」が紙の保険証券には備わっている。