犯罪者も頭が悪いわけではない。様々な詐欺の手口を、日々研究している。
ここ最近の筆者が最も驚いたのは、「決済できない詐欺」である。
飲食店でクレジットカードを店員に預ける。しかし、「おかしいですね。決済に失敗してしまったようです。通信が良くないのかな?」と言い、何度も何度もクレカを端末に通してしまう。結果、正規料金の何倍もの額をせしめることができるという手段だ。
この手口を見抜く方法は?
「決済できませんでした」と嘘をつく
まずは毎日新聞の記事を引用させていただきたい。
会計時に客に何度もクレジットカードで決済させ現金をだまし取ったとして、警視庁保安課は26日、東京都台東区根岸5、風俗店経営、楊瑶琴容疑者(64)=中国籍=ら4人を電子計算機使用詐欺容疑などで逮捕したと発表した。
同課によると、4人は港区新橋2の風俗店や飲食店で、酒に酔った客がクレジットカードやスマートフォンで決済会計する際に「決済できていない」などとうそをつき、何度も決済させる手口で繰り返し現金をだまし取っていたとみられる。
(『新橋の風俗店主ら、客のクレカで何度も決済疑い 警視庁が逮捕』毎日新聞 2023年7月26日)
何かしらの理由で、店舗側の端末の通信状態が悪くなることは珍しくない。つまり、容疑者はそれを装って客のクレカを何度も端末に通したというわけだ。
なるほど、これなら暴力に頼ることもないしすぐにはバレない。こんな手段があったのか!? と筆者は驚愕してしまった。が、もちろんこれは犯罪である。そうである以上、この「決済できない詐欺」を防ぐ方法をテクノロジーライターとして思案しなければならない。
さて、上記の毎日新聞の記事で重要なポイントは「酒に酔った客が」という部分である。酔っ払ってしまっているのだから、店員から「通信できないからもう一度お願いします」と言われてもそれを不審に思わなかったのだろう。本当に通信できないのか確認もできなかったはずだ。
こればかりは「酒はほどほどに」としか言えないが、もし少しでも理性と判断能力が残っているのなら、最後まで決済端末を凝視しておくことをお勧めしたい。
数万という高額の決済であれば、必ず端末備え付けのテンキーに暗証番号を入力するはずだ。それを押した直後に端末を店員に返すのではなく、しっかり決済が完了したかを確認するために最後まで画面を睨んでおく必要がある。