呆れるような光景を目にした時に使われることが多い「茶番」という表現。日常的に使われる言葉ではあるものの、言葉の正確な意味や語源については説明できない人も多いだろう。
そこで本記事では、茶番の意味や語源を詳しく解説する。茶番と似た意味を持つ英語表現や例文も、この機会にチェックしておこう。
「茶番」とは?
はじめに、「茶番」の意味と語源を見ていこう。茶番には大きく分けて3つの意味がある。
読み方と意味
「茶番」の読み方は「ちゃばん」。この言葉が表す意味は主に以下の3つ。
1.観客などに茶果を給仕する人
2.見え透いた浅はかな行為
3.滑稽な即興劇を意味する「茶番狂言」の略称
愉快に感じる事柄に対して使われるほか、呆れたり蔑んだりする場合に比喩として表現されることも少なくない。ネガティブなニュアンスを含む言葉であるため、使い方には注意が必要だ。
語源は茶汲の滑稽劇
茶番は、江戸末期の歌舞伎俳優が控える大部屋で、茶果を給仕する茶汲の滑稽劇が語源とされている。もとより、茶汲として茶菓の用意や給仕を担う者を茶番と呼んでいたことが由来だ。
大部屋で茶番をしていた下級の俳優が、余興で酒や茶菓を用いた滑稽な寸劇や話芸を披露したところ評判を呼び、言葉や仕草で笑いを誘う台詞劇のことを「茶番狂言(ちゃばんきょうげん)」と称すようになる。転じて「取るに足りない見え透いた行為」や「下手な芝居」のことを茶番劇と表すようになり、現在は「茶番」と略した形で使われることも多くなった。
茶番の類義語
次に、茶番の類義語を紹介する。似た意味を持つ言葉はいくつかあるが、そのうち3つを取り上げたい。
寸劇
「寸劇(すんげき)」は、余興として座敷や舞台などで披露する「時間の短い演劇」のこと。寸劇の「寸」という言葉は、物の長さを測る際などに使う「尺貫法」における長さの単位を表す。茶番と同様に、観客を笑わせるような台詞を用いるものとされるが、大規模な劇場などで行う場合は寸劇に含まれないこともある。
猿芝居
「猿芝居(さるしばい)」は複数の意味を持つ言葉で、主に以下の3つが含まれる。
1.見るに堪えない下手な演技
2.下心があり見え透いた企みや蕪雑な嘘
3.猿に芸を仕込んで芝居を披露する
猿芝居とは、猿に衣装や鬘などの装束をまとわせ、舞台上で芸を披露させる見世物を指す言葉。もとの意味が転じて「故意に相手を騙すような分かりやすい行為」を例えて、慣用句として使われるようになった。
八百長
「八百長(やおちょう)」は、相撲などの競技で事前に勝敗の口裏を合わせておき、表向きでは至って真剣に勝敗を競うように見せかけた仮初めの行為を指す。試合の結果は最初から決まっているため、意図的に金銭が絡むやり取りが行われることもある。
「八百長」という言葉の由来は、明治時代の八百屋を営んでいた店主である「長兵衛(ちょうべえ)」の通名「八百長」とされる。長兵衛は、大相撲の年寄として知られる「伊勢ノ海 五太夫(いせのうみ ごだゆう)」と碁仲間だったが、店の利益のために相手の機嫌を損ねないよう、故意に負けて勝敗調整していた。のちに不正行為が発覚し、相撲界では裏で勝敗を決める行為を「八百長」と表すようになったという。
茶番の英語表現
最後に、「茶番」と似た意味を持つ英語表現を紹介する。使用シーンを想像しながら確認してほしい。
farce
“farce”は「茶番」や「笑劇」を意味するほか、料理の「詰め物」を指す名詞。一般的に茶番を英語で表現する際に使われることが多いとされる。
【例文】
“The farce that unfolds in Kabuki is entertaining no matter how many times you see it.”
(歌舞伎で繰り広げられる茶番劇は、何度見ても面白い)
nonsense
“nonsense”は「無意味な事柄」や「滑稽な言動」を表す名詞。主に呆れたり卑下したりする際に感嘆詞として用いられることが多く、ややネガティブなニュアンスが含まれる。
【例文】
“Can we stop arguing nonsense and talk calmly?”
(無意味な議論は止めて、冷静に話し合わないか?)
travesty
“ travesty”は「茶番」や「まがいもの」を意味する名詞。作品などが本来の意図とは反対に改ざんされた状態を指して使われることもある。
【例文】
“Parody of a popular movie was produced, but it is a travesty that is hard to watch.”
(人気映画のパロディが制作されたが、見るに耐えない茶番だ)
文/編集部