NISAを始める際の注意点
メリットばかりに感じられるNISAにも、開始前に知っておきたい注意点があります。開設できる口座の数や非課税となる条件などを確認し、NISAの利用に役立てましょう。
1人に1口座まで
NISA口座は1人当たり1口座までしか開設できず、一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選ぶ必要があります。一方、運用の途中で「一般NISAからつみたてNISAへ」というように、種類を変更することは可能です。切り替え可能なタイミングは金融機関によって変わってくるので、こちらも公式サイトで確認しておきましょう。なお、開設者が18歳未満の場合は、ジュニアNISAしか利用できません。
さらにNISA口座の金融機関も、1年に1度のペースで変更が可能です。ただ、頻繁に金融機関や種類を変更すると、運用期間が短くなってしまいます。口座開設する際に運用する金融機関や種類を慎重に選び、長期的に続けることが大切です。
非課税になるのは新規購入分のみ
NISA制度で非課税となるのは、NISA口座を開設後に購入した株式・投資信託といった金融商品に限られています。すでに投資をしている人がNISA口座を開設し、保有している金融商品を移しても非課税扱いにはならない点に注意しましょう。
一方で初めて投資をする人は、NISA口座で運用を始める限り、限度額までの購入は全て非課税扱いとなります。投資経験がない人は、NISAの運用から始めてみるのもおすすめです。
損益通算ができない
現行の制度において、一般口座とNISA口座との損益通算は認められていません。NISA口座以外の投資用口座では、運用がうまくいかずに損失が出た場合、他の金融商品の投資で得た利益と相殺ができ(損益通算)、最終的な利益分のみが課税対象となります。
しかしNISA口座の場合、運用益が非課税となると同時に、発生した損失は税務上ないものとして扱われます。そのため、たとえ他の口座で利益が出ていたとしても、損失の相殺ができません。NISA口座の運用状況によっては、かえって納税額が増えてしまう可能性がある点に注意しましょう。
※参考:No.2250 損益通算|国税庁
2024年から始まる新しいNISAとは
2024年から新しいNISAがスタートするため、現行の制度は2023年の12月で終了します。現行制度との違いを踏まえ、新しいNISAの特徴を確認しましょう。
※参考:新しいNISA|金融庁
年間投資上限額が拡大・枠の併用も可能
現行の制度では、一般NISAで年間120万円、つみたてNISAで年間40万円までの非課税投資枠が設定されています。しかし新NISAでは、一般NISA・つみたてNISAの名称は使われなくなります。代わりに新設されるのが、「成長投資枠」「つみたて投資枠」です。成長投資枠では年間240万円、つみたて投資枠では年間120万円と、非課税となる上限額が2〜3倍に増えます。
さらに成長投資枠・つみたて投資枠の併用も可能なので、年間360万円まで非課税枠を利用できます。これから本格的に投資を始めたい人にもおすすめな制度といえるでしょう。
非課税保有期間の無期限化
現行制度では、一般NISAで5年間、つみたてNISAで20年間の非課税保有期間が設けられています。しかし、新しいNISAでは非課税保有期間が無期限化され、恒久的に制度の恩恵を受けられるようになります。
ただし、全体で最大1,800万円(成長投資枠は最大で1,200万円)の「生涯非課税限度額」がある点に注意が必要です。また、2024年以降のロールオーバーは廃止されるため、2023年に期限を迎える現行NISAの非課税運用は終了します。さらに、現行NISAから新しいNISAへのロールオーバーも認められません。
新NISAが始まるまで待った方がよい?
期間や上限額だけを見ると、現行のNISAよりも新しいNISAの方が有利なように感じられるでしょう。しかし税金の負担を考えると、新しいNISAの開始を待たずに、できるだけ早くNISAを始めるのがおすすめです。
2024年からは新しいNISAに変わりますが、すでに現行のNISA枠で保有している金融商品の運用は継続できます。2023年12月で終了するのは新規の買い付け分なので、それまでにNISA口座で投資した金融商品は対象外です。そのため新制度のスタート後も、外枠として現行制度の非課税措置が適用されます。
つまり、2023年中にNISAを始めると、現行制度と新しいNISAの非課税枠を使えるというわけです。迷っている人はできるだけ早くNISA口座を開設し、投資を始めてみましょう。
構成/編集部