日銀のYCC修正公表でも株価は下がらなかった。YCC修正とその影響について解説する。
現在の日銀の金融緩和政策、YCCとは?
日本は長く物価が下がるデフレが続いている。
デフレは物の値段が下がっていくため、消費者には良いことのように思えるが、以下のデメリットがある。
そのため、日銀は緩やかに物価の上昇、すなわち『2%の物価上昇』を目標に、現在『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』を行っており、主に以下の政策を行っている。2%程度の物価上昇が続けば、企業の売上高が増え、最終的に国民の給与も上がっていくもと考えられるからである。
・マイナス金利
・ETFを市場から購入
・YCC
このうち、YCCとは(イールドカーブ・コントロール)といい、長期金利と短期金利を操作して、適切なイールドカーブを保つことである。イールドカーブとは、債券の利回りと満期までの期間を表す曲線のことだ。
債券は、通常満期までの期間が短ければ利回りは低くなり、満期までの期間が長期になるほど利回りが高くなる。例えば、住宅ローンでは短期金利を基準とする変動金利は低く、長期金利を基準とする固定金利は高くなる。そのため、満期までの期間が短い短期金利から満期が長くなる長期金利までを線で結ぶと緩やかな右肩上がりのカーブを描く。
日銀は、このカーブを目標とする基準に調節しており、次の効果を期待して行われている。
①金利を低く抑える
具体的には、短期金利をマイナス金利とし、長期金利をYCC修正前は0.5%とするようにしていた。短期金利は民間銀行が日銀に預ける当座預金の金利設定を-0.1%とすることで、長期金利は長期金利の目安となっている10年国債を日銀が目標金利で指値をして買入れすることで調整している。債券価格が上がれば債権利回りは下がるため、国債が売られて債券価格が下がっても日銀が買入れすることで利回りを下げることが可能だ。
②市場に大量資金供給される
長期金利を目標利回りにするために、日銀は指値で国債の買い入れを行っているため、お金が大量に市場に流れ続け、目標である2%の物価上昇を達成できる可能性がある。
③円安効果
円の短期金利を低いと、米国金利との差で円安になる。唯一のマイナス金利である円で借りてその円を売り金利の高いドルを買う取引が活発化し、円安ドル高となる。日本は輸出企業が多いため、円安は多くの企業にとってプラスに働き、従業員の給与も増える可能性がある。
④銀行や保険会社の最低限の収益を確保
短期金利をマイナス、長期金利を0.5%とすればイールドカーブを緩やかに右肩上がりにすることができる。銀行は短期金利で資金を調達して、長期金利の水準でお金を貸しており、長短の金利差で収益を上げている。これがもし長短の金利が逆になり逆イールドカーブになってしまうと貸すと損してしまうため、イールドカーブをできるだけ右肩上がりにしておくことで、銀行の収益を確保することができる。また、保険会社も長期の国債等で保険収入を運用しているため、同様にイールドカーブを適切に調整することで収益を確保することができる。