■連載/阿部純子のトレンド探検隊
今年は関東大震災から100年を迎える。関東大震災が起きた9月1日は「防災の日」、9月は防災月間として、災害に向けた備えを考える機会でもある。
1億点以上の災害対策グッズを扱う「防災・非常時対策ストア」を展開するAmazonでは、防災アドバイザーの岡部梨恵子氏の協力のもと、本当に役立つ災害対策グッズを紹介するセミナーを開催した。
【岡部梨恵子氏 プロフィール】
防災アドバイザー・防災士。東日本大震災によって街の86%が液状化現象の被害を受けてライフラインが停止した千葉県浦安市に在住、その体験から防災に取り組むようになる。防災士、ファイナンシャルプランナー、整理収納アドバイザーなど多様な資格を活かして、被災後の食事や生活、備蓄法など主婦目線の防災備蓄術を伝えている。
本当に必要で役立つ備えについて考える
生活スタイルが多様になっている今、従来の「防災袋」といった画一的な備蓄ではなく個々の家庭に特化した防災備蓄を考える必要がある。
過去の災害の被災者からわかった「備えておけばよかったもの」
「モバイルバッテリー」~今や生活に欠かせなくなったスマートフォンだが、バッテリー切れが起こると連絡も取れず情報収集もできない。3回ぐらいフル充電のできる容量の大きなモバイルバッテリーを必ず身近に備えておく。
「小銭と家族の連絡先メモ」~災害時に一番つながるのが公衆電話だが、スマホに登録しているため家族の電話番号さえ覚えていない人が多い。濡れないパウチホルダーの中に100円、10円の小銭と家族の電話番号のメモを入れて常に持ち歩くようにする。
「だっこ紐」~乳幼児がいる家庭ではだっこ紐(おんぶ紐)は必需品。特に津波の避難の際は背負えば子どもの手が離れてしまうことを防ぐことができる。避難所や自宅の片づけの際も、抱っこだと行動が制限されてしまうが、背負っていれば両手が使える。
「オーラルケア」~子どもの場合は避難先で静かにさせるために、お菓子をダラダラ食べさせてしまいオーラルケアが疎かになるケースが良く聞かれる。ペーパー歯磨き、糸ようじなどを使ったオーラルケアの備えも大切。
「偏食に対応する災害食」「蓄電池」~障がい者や、アレルギー等の理由で偏食のある人は災害時に何を食べるか、平時から食べられるものをしっかりと確認して備えておく。
停電して人工呼吸器が補助バッテリーだけになり不安だったというケースもあり、医療機器のための大容量の家庭用蓄電池も備蓄しておく。
家庭での「備え」に必要な災害対策グッズ
物流機能の停止によって、スーパーやコンビニで食料などが手に入らないこともある。過去の災害においても、支援物資が避難所に一週間経っても全く届かないこともあった。東日本大震災ではこうした状況にあった人々は47万人だったが、首都直下型地震の場合は、266万人や720万人という説もあり、南海トラフ巨大地震は東日本大震災の20倍ともいわれる。
行政にまかせっきりではなく、自分が主軸になる防災を心掛けることも必要で、おすすめするのは在宅避難。避難所は他人との集団生活の場なので気苦労も絶えないことから、たとえライフラインが止まっていても、家族で協力して自宅で生活できるように、水・食料はもちろん日用品の備えもしっかりしておくことが大切だ。
岡部氏おすすめのAmazonで入手できる災害対策グッズ
ベースとなる災害対策グッズ
「BOS(ボス) 非常用トイレセット 50回分」~今の日本人はニオイにとても弱く、岡部氏自身、東日本大震災で一番困ったことはトイレだったと話す。断水後のトイレに備えて常にふろの残り湯を確保している家庭も多いが、とくに集合住宅の場合、排水管が破損し、階下に水漏れ事故を起こし損害賠償請求されたケースもあり、組合等で配管の安全確認がされるまで「水は流さない」が鉄則。水を流さないで使える「非常用トイレ」や「簡易トイレ」を用意しておく必要がある。
被災後はゴミ回収がすぐに来ないことがあり、排泄物の入った袋を自宅のベランダや庭で保管することになるが、防臭性の優れた袋でないと大便の成分「スカトール」のニオイは抑えることができない。
凝固剤と、医療用のフィルムでできた便袋が入っている「BOS 非常用トイレセット」は、ニオイだけでなく菌も封じ込めることができる。トイレの回数は男性で最低1日5回、女性で最低1日8回とされており、回数×家族の人数×7日分を用意する。トイレットペーパー、ノンアルコールタイプのウエットティッシュも忘れずに備蓄しておく。
「レスキューフーズ 一食ボックス 詰め合わせ」~東日本大震災の時に100万食売れた災害食。カレー、シチュー、中華丼など多種類あるので味の好みで揃えられる。火も水も使わずに温かい食事が食べられるように開発された商品で、発熱剤で温めることができる。一食当たり1000円と高めだが、温かい食事は生きるための活力となるので、被災直後の食事作りで、余震がある中でも安全に温かい食事が作れることはとても大切。
小さな子どもがいる家庭におすすめの災害対策グッズ
「和光堂 グーグーキッチン チキンと野菜のリゾット×6袋」~乳幼児のいる家庭では、普段から好みの味のベビーフードを備蓄しておくことが大切。瓶入りは重く割れる危険もあるので、パウチ入りの商品で、衛生的に食べられるもの、調理済みで常温でも食べられるものを備えておく。
レトルトの場合、容器がなくともスプーンさえあれば食べられるので、ゴミも軽減できる。
本商品は災害時なかなか届かない野菜や果物がペースト状になっていて、ご飯などのタンパク質が摂れるものも被災後に最適。
「【Amazon.co.jp限定】 キユーピー ベビーフード にこにこボックス 5種×2個セット」~カップ入りタイプで、容器はそのまま食器として使え、スプーン付きで災害時にも役立つ。味のバラエティーも豊富で、調理の必要もないため災害時にも衛生的に食べさせることができる。7大アレルゲン不使用のものもあるが、アレルギー食品かどうか、味の好みは事前に確認しておくこと。
※災害時の赤ちゃんの栄養、乳児支援に関しては以下を参考にしてください。
災害支援コミック「災害時の赤ちゃんの栄養」
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「Coleman(コールマン) スクリーンIGシェード」~素泊まりする用途はもちろん、着替えや授乳スペースとしても使える。小さな子どもがいる家庭では、災害時は子どもの居場所がなくなり寂しい思いをさせてしまうことが多い。テントの中に絵本やぬいぐるみを置いたり、色紙やトランプなど、かさばらないおもちゃを非常持出袋に入れておくと、子どもたちは災害時の辛さを少しでも忘れることができて、親の負担軽減にもつながる。
「アイリスオーヤマ マットレス 【専用ポンプ付き】ネイビー」~避難所の冷たく硬い床に直接寝るのは体調を崩す原因にもなるため、エアマットがあれば不快感を軽減できる。空気入れ付きが最適で、コンパクトにしまえるものを用意するとよい。
「【Amazon.co.jp 限定】メリーズパンツ(9~14kg) さらさらエアスルー ホワイト Lサイズ 168枚」~子どもは、トイレが屋外だったり、和式のトイレだと嫌がり排泄を我慢してしまうことがある。おむつなら排泄してくれたという例もあるので備えていれば安心。
高齢者や障がい者を持つ家庭におすすめの災害対策グッズ
「LOSCHEN 4ハンドル付き担架」~担架として使える介護シート。介護する人手が少なくなる被災時に、一人、または二人という少人数でも、「運ぶ」「寝返り」などの操作が可能な担架は持っておくと非常に便利。いろいろな場面で使用に適しているものがあれば、介護者の方の負担を減らすことができる。
「ウェルファン 夢ライフステッキ 折りたたみ杖 花柄」~突然の地震などで、普段使っている杖を持ち出せないケースが避難所では多く見受けられる。折り畳み式の杖ならかさばらずに非常持出袋に入れておくことが可能。
「MOON LENCE 折りたたみキャリーカート 大容量156L」~配給品を取りに行ったり、給水所から水を運ぶ時にあると便利。イス付のものだと避難所で座ることができる。腰痛や足の痛みで地面に座るのが難しい人には用意していたら重宝するアイテム。
ペットがいる家庭におすすめの災害対策グッズ
「Aprica(アップリカ) ニオイポイ ウンチも臭わないおむつ袋 180枚入り」~ペットの避難では衛生的に管理することが重要。ゴミの回収がすぐに来ないこともあり、おむつやペットのフン、生ゴミなどを処理するのに臭いも菌も封じ込める医療用の防臭袋は必須アイテム。嘔吐した時の衣服の処理など幅広く使え、衛生管理ができる。
「アイリスプラザ ペットサークル 折りたたみ Sサイズ」~ペットの避難において、特に猫の場合、ゲージに閉じ込めていたらストレスになることもあり、テントの中だけでも自由に歩かせてあげるとストレス軽減につながる。
夏場の被災に備えるアイテム
「XEBEC(ジーベック) 空調服ベスト&スターターキット」/「7.2Vワンタッチファン ロングケーブルBXL」~夏場で停電している状況では、命に関わる暑さへの対策は必須。扇風機付きのベストは、本来は工事現場など屋外で作業する方向けの商品だが、夏場の被災に使えるアイテムとして注目されている。
「インセクトシールドジャパン 虫よけメッシュジャケット」~夏場の被災は虫対策も必要になるが、シャワーや風呂が使えない災害時に虫よけスプレーを使用すると、皮膚がかぶれやすくなる心配も。同商品は、米国陸軍の制服にも採用されている特殊な虫よけ加工で、着るだけで防虫効果を発揮する。防虫加工技術として初めて米国環境保護庁に登録され、効果と安全性、環境へ配慮が認められており、赤ちゃんから大人、ペットにも、安心して使うことができる。
「【Amazonブランド】SOLIMO 純水99% ウエットティッシュ60枚入×20個」~大判のノンアルコールタイプは、肌に刺激がなく身体をさっぱりさせることができる。断水によりシャワーや風呂に入れない時やトイレの時にあると重宝するので多めに用意しておくとよい。
冬場の被災に備えるアイテム
「Iwatani カセットガス ストーブ ポータブルタイプ」~電源不要で防寒対策になり、屋内外で使える暖房機は、冬場の被災時の必需品。カセットボンベ1本で約3.5時間の暖を取ることが可能。
「アイリスオーヤマ× BLUETTI ポータブル電源 ホワイト PS720AA-W」~電気も備蓄して、スマホだけでなく、夏場は扇風機、冬場は電気毛布などが使えるようにしておくことが大切。充電速度が早く、バッテリーの部分が交換や追加して利用できるものがおすすめ。ソーラーパネルはオプションであっても付けた方が被災時には心強い。
「SOL (ソル) エマージェンシーブランケット 1人用」~羽織ると体温の低下を防ぐことができ、マットとしても使えて、ポンチョとして雨風から身を守ることもできる。外面は視認性の高いオレンジ色がおすすめ。アルミブランケットの多くは広げるときに音がするので、避難所ではクレームになったケースもあり、音があまりしないものにするのもポイント。
【AJの読み】備えない防災「フェーズフリー」で防災時に役立つ備蓄を
災害対策グッズに関する問題として「非常食の消費期限切れ」「使い方がわからない」「どこにしまったか忘れてしまう」という点が多く挙げられる。
「防災時に役に立たない備蓄は、スペースも時間も無駄にし、お金を浪費しただけになってしまいます。日頃からの災害対策グッズのメンテンナンスが必要です。
今注目されている『フェーズフリー』とは、身の回りのアイテムやサービスを普段使いだけではなく、非常時にも応用しようという考え方。さまざまな物の値上げが続く今こそ実践したい高コスパな『備え方』ともいえるでしょう」(岡部氏)
今回紹介したマットレスやポータブル電源、ブランケットのような、普段使いもできて災害時にも役に立つ商品や、近年かなり浸透してきた「ローリングストック方式」もフェーズフリーのひとつ。
ローリングストックは消耗品を日常使いしながら常に新しいアイテムを備蓄するというもので、期限切れのアイテムを廃棄することなく、かつ災害対策グッズとしても常にフレッシュな状態をキープできる。
水のローリングストックを実践している人も多いが、大量に買ったまま、毎日の生活で使わないことによって消費期限切れを起こしてしまうことも。「飲料水だけでなく、お茶やコーヒーを作るときにも、常にストックの水を使うことで商品を回転して使うことができます」(岡部氏)。常に使うことができる商品がローリングストックには向いており、レトルトカレー、飲料水、パックご飯がおすすめだ。
文/阿部純子