電材(スイッチやコンセント)などを扱うパナソニック エレクトリックワークス(以下、EW社)が、近頃、新しい提案をしている。ひとつは成長事業にあたる海外電材事業。グローバルサウスにいち早く注目し、現在インド、トルコ、ベトナムなどに工場を設けているのだ。こうした裏事情には、少子高齢化にともない国内市場が成熟したのが理由だ。
同社代表の大瀧 清さんは、6月に行なわれたメディア説明会で、「建設業界の動向をうらなう新設・新築着工件数はここ10年ほど横ばい。2025年度以降は下落傾向に入るという予測されています。そこで成長領域である海外電材やエネルギーソリューションに振り向け、新たな事業の軸を育てようと考えている」と話す。が、厳しい国内電材でも多様なソリューションを事業化する、次の一手を打っている。
そのひとつが「ウェルビーイング」をキーワードにした様々なサービスだ。今夏発売した、次世代照明と謳う『LANTERNA(ランターナ)』は、その一例。一見すると、インテリアショップでよく見かける単なるランプシェードのようだが、違う。何と直方体の4面部分に10.1インチの液晶パネルを搭載。ここに映像を映し出すことで、これまでと一線を画す空間演出をできるようにしたのだ。
残念ながら、基本的に業務向けの商品なのでオフィスはもちろん、レストラン、ホテルのフロントなどを利用シーンとして想定。だが、文字通りランタンのようなサイズ感にしたことで、大掛かりなデジタルサイネージやプロジェクターでは難しかった空間での映像演出を実現。
例えば、レストランや料亭などでは、季節ごとに表示する映像を替えれば、春は桜、夏は海、秋は紅葉、冬は雪といったような映像を流すことで季節感を演出できる。オフィスには癒しを感じられる演出、さらに結婚式などのパーティーの際は感謝のメッセージを表示するなど、用途は様々。
発表会では『LANTERNA』を用いたバースデイパーティーをイメージした映像を表示してくれた。動画を見てもらえば一目瞭然! Happy Birthdayの文字が出てくるまでに、グラフィックによる華やかな演出がなされている。
こうした映像コンテンツは、本製品と同時に展開するクラウドサービスから取り込むことができる。また、専用のオーサリングツールを用いることでオリジナルの写真や動画コンテンツを編集・投影すすることもできる。もちろん映像演出にはBGMが不可欠だ。これはBluetoothも搭載。外部スピーカーとペアリングすることで映像とリンクした演出も楽しめる。
このほか、オフィスでの利用シーンも見せてくれた。下の写真のように時刻を表示したり、スタッフ向けのインフォメーションを表示したりできる。休憩スペースに置いて癒しの演出などをすれば、ストレスを軽減する役割も果たすだろう。
面白いのは、週末にはビールの演出をする提案。こんな表示がされれば、残業をする気にはならないだろう。
もちろん、こうした映像演出は広告でも活用できる。小さな筐体なので居酒屋のテーブルにこれを置いて、ビール会社が注力している商品の映像を流せば、注文したくなるのは必至!! 出版社なら新発売の書籍や雑誌の内容に関する映像を流してポップ代わりにできるだろう。近年、広告予算をネットに割く企業が多いが、これを使えば、ピンポイントのユーザーに訴求できるのだ。照明器具の域を超えた『LANTERNA』が、街のそこかしこで光を灯すのは、間違いないだろう。
取材・文/寺田剛治