働き方や価値観など〝多様化の時代〟と言われる現代では、車のパワートレインも多様化しています。馴染みがある内燃機関(ガソリン車やディーゼル車)やハイブリッド、プラグインハイブリッドをはじめ、燃料電池車や電気自動車といった新しいパワートレインを搭載する車も販売されています。そこで今回は、それぞれのパワートレインの特徴、メリットとデメリットなどをわかりやすく簡潔に解説します。自分のライフスタイルに合ったパワートレインがどれなのか知りたい時の参考にしてみてください。
車のパワートレインの多様化でどれが自分に合っているのか?
車のパワートレインの多様化によって、選べる車の選択肢が広がったのはユーザーにとって嬉しいことです。一方、多様化するパワートレインによって、どれが自分に合っているのかわからないという方も少なくないでしょう。ここからは、各パワートレインの特徴やメリット、デメリットをご紹介します。
ガソリンエンジン
ガソリンエンジンは、軽自動車、普通車、SUV、ミニバン、高級車、スポーツカーなど、様々な車に採用されています。
【特徴】
ガソリンエンジンは、燃料にガソリンを使っているエンジンです。ガソリンには、レギュラーガソリンとハイオクガソリンの2種類があり、オクタン価の違いでレギュラーとハイオクが分けられています。「無鉛レギュラー」や「無鉛プレミアム」などの燃料指定は、エンジンの性能を引き出すためのもの。そのため、指定されたガソリンを入れるようにしましょう。
【メリット】
・静粛性が高い
・エンジンそのものの重さが軽い(軽快な走りにつながる)
・高い回転域まで回すことができるエンジンもある
・低コストで製造しやすい(車両価格を抑えられる)
【デメリット】
・燃料代が高い(ディーゼルより1Lあたり20円~30円ほど高い)
・ディーゼルより燃費性能が劣る
ディーゼルエンジン
ディーゼルエンジンは、乗用車に使われることが増えてきたエンジンです。SUVやワゴンなど、力強さが必要な車に搭載されているだけでなく、プレミアムカーにも採用されています。
【特徴】
ディーゼルエンジンは、軽油(ディーゼル)を燃料とするエンジンです。力強い走りと燃費性能を両立していることが特徴となっています。
【メリット】
・ガソリンエンジンよりも燃料代が安い(ガソリンより1Lあたり20円~30円安い)
・力強さがある(大人数で乗っても力不足を感じにくい)
・燃費性能が良い
【デメリット】
・車両価格が高くなりやすい
・ディーゼルエンジン独特の音や振動が気になる時がある
ハイブリッド(HV/HEV)
ハイブリッドは、今や環境性能が高い車の定番パワートレインといっても過言ではありません。もともと「ハイブリッド(Hybrid)」は、「異種の組み合わせや掛け合わせ」といった意味です。車においては、内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)に電気モーターを組み合わせて、環境性能を高めている車のことをいいます。
【特徴】
ハイブリッドには、様々な仕組みがありますが、共通しているのは電気モーターのアシストを受けて走行するということです。そのため、燃料の消費が抑えられ、環境負荷の軽減に期待できます。また、燃費性能に優れていることから、お財布にも優しいという点が特徴です。
【メリット】
・燃費性能が良い(経済性に優れる)
・静粛性が高い
・1回の給油で走行できる距離が長い
【デメリット】
・車両価格が高い(ガソリン車より割高)
・エンジンがかかった時の音に驚く時がある
プラグインハイブリッド(PHEV/PHV)
プラグインハイブリッドは、駆動用バッテリーに外部から充電できる構造を備えるハイブリッドカーです。また、バッテリー容量がハイブリッドカーより大きくなっているケースが多いため、近場への買い物や送迎であれば、モーター走行だけで賄えることもあります。
【特徴】
プラグインハイブリッドは、モーター走行の距離が長いことが特徴です。また、バッテリー残量が十分にあれば蓄電池として使うこともできるため、防災対策にも有効といえるでしょう。
【メリット】
・電気モーターのみで走行できる距離が長い
・蓄電池としても使うことができる
・駆動用バッテリーの残量がなくなってもエンジンからの出力で走行できる
・1回の給油と充電で走行できる距離が長い
【デメリット】
・車両価格が高い(ハイブリッドカーよりもさらに割高)
・自宅に充電設備がないと効果を感じにくい
・車両重量が重い(重量税が高くなる)
燃料電池(FCV)
燃料電池車は、車種のバリエーションは多くないものの、環境性能に優れている車として注目されています。代表的なモデルは、トヨタ ミライです。
【特徴】
燃料電池とは、水素と酸素の化学反応により電気を取り出す装置のことです。車においては、水素タンクに水素を充填し、化学反応を起こして電気を作り、モーターを駆動させて走行します。車が走行している時に排出するのは水だけです。そのため、車の走行による環境汚染が少ないことが特徴となります。
【メリット】
・内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)並みの航続距離
・モーター走行であるため静粛性が高い
・走行中の環境性能に優れている
【デメリット】
・車両価格が高い
・水素を充填できる場所が少ない(水素ステーションの数が少ない)
電気自動車(EV/BEV)
電気自動車は、バッテリーに充電した電気でモーターを駆動させ走行する車です。走行中に排出ガスを出すことがないため、走行中の環境汚染が最小限に抑えられます。また、内燃機関のような騒音がしないことも魅力のひとつです。次世代の車として注目され、従来の自動車メーカーだけでなく、スタートアップ企業も電気自動車に参入しています。
【特徴】
電気自動車は、静粛性が高く、モーターならではの力強く瞬発力ある走りが特徴です。公共機関の充電器の設置台数も増え、インフラが整備されつつあります。
【メリット】
・静粛性が高い(内燃機関のような音や振動が少ない)
・鋭い加速性能(モーターならではの特性)
・車種バリエーションが増えてきている(各社力を入れている)
【デメリット】
・充電に時間がかかる(公共の急速充電は最長30分に制限されていることが多い)
・航続距離が短いモデルもあるため用途に応じたバッテリー容量を選ぶ必要がある(バッテリー容量が大きくなるほど価格も高くなる)
・エアコンや電装品を使うと電力の消費が多い(つまり航続距離が短くなる)
ライフスタイルに合った選択をしよう!
内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、燃料電池、EVには、それぞれメリットとデメリットがあります。各パワートレインの特徴を理解すると車選びでの悩みが少なくなるでしょう。
例えば、駐車場が1台分しかなく、日常生活から休日の遠出まで対応したいのであれば、内燃機関を搭載する車(ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、プラグインハイブリッド)がおすすめです。
近所の買い物や最寄り駅までの送迎など日常使いが主な用途で、自宅に充電設備を設置できるのであれば軽自動車のEVでも問題ないでしょう。自宅に充電設備が設置できないのであれば、ガソリンエンジンのコンパクトカーや軽自動車を選ぶことをおすすめします。
このように、ライフスタイルに合わせてパワートレインを選ぶのも車選びの基準のひとつといえるのではないでしょうか。
取材・文/齊藤優太