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砂遊びのようだった生産体制を改善し年産4億2000万個を実現できた理由とは?インド北部にあるパナソニックEW社の電材工場に潜入

2023.08.09

近頃〝グローバルサウス〟という言葉をよく耳にする。改めて調べると、明確な定義はないが、主に北半球の南部に位置する、経済的、社会的、政治的に発展途上の国々を指すことが多い。インドは、その中でも最も注目される国のひとつだ。その理由は、2023年4月末にインドの人口が14億2860万人(国連人口基金 発表)に達して世界最多になっただけでなく、2022年のGPD(実質国内総生産)が6.7%の成長となり、中国を抜く伸び率となったからだ。しかも国連の将来人口推計によるとインドの人口は2071年には23.4億人まで増加すると予測されており、内需拡大を背景にともない高成長が続く見通しなのだ。

年産4億2000万個の生産能力を実現!!

そんなインドにいち早く着目したのが、パナソニック エレクトリックワークス(以下、EW社)だ。2007年にインドでシェアナンバーワンだった電材(コンセントやスイッチ)メーカー「ANCHOR(アンカー)」 を買収したのを機に、7つの工場と30の営業拠点をインドに展開し、製販一貫体制をとったのだ。

@DIMEでは、7つある工場のひとつで、北インドにある中核工場にあたるハリドワール工場へ取材を試みた。ここは2022年に竣工した南インドのスリシティ工場と異なり、買収したANCHORから引き継いだもの。それゆえ、〝日本のものづくり〟の姿勢を伝えるうえで苦労があったという。

インド電材事業トップの加藤義行さんは、「買収当時は、まず清掃から始めなければならない状況でした。しかも照明さえ行き届いない。そんな暗い工場で、作業台にドサッと山積みしたパーツを工員が思い思いに組み立てる……まるで〝砂遊び〟をしているかのような労働環境でした。そんな状況を改善すべく、多くの日本人スタッフを派遣。さらに金型加工設備、自動組み立てラインなど導入することで、年産4億2000万個の生産能力を誇る工場に成長させました」と話す。

「半自動化」を図って、生産体制を改善!

そんなハリドワール工場を見学することに。すると、徹底した無人化を図っているスリシティ工場と打って変わり、工員さんがズラリと組み立て作業をしている様子を見られた。その数、2900人!! この中に技能訓練校「アンカースキルスクール」の卒業生もいるのかもしれない。

聞くと、組み立てに関しては、設備投資するよりも人の手で組み立るほうが安く仕上げられるという。が、すべてが手作業というわけではない。50人に1台、機械を導入して「半自動化」しているのだ。実際、自動組み立てを行なうマシンの横に工員さんの姿も見られた。

一方で、ほぼ無人のユニットも。スイッチなどのパーツや金属部品をつくるマシン、自動運搬機などが稼働。スリシティ工場は無人化を図っていたが、人口の多いインドでは、生産効率と設備投資のバランスを見ると、この「半自動化」のスタイルのほうがバランスが良いのかもしれない。雇用を守るという意味でも……。

事故を未然に防ぐ安全道場&託児所も併設

ハリドワール工場は、生産性効率だけをアップしたわけではない。工員さんたちのケアもしっかりしているのだ。下の写真は、作業時に起こりうる事故を未然に防ぐために設けられた「SAFETY DOJO ROOM」。過去の事例を掲出したり、機械のモックで事故を防ぐチェックポイントを解説したりしている。日本の工場で最も大事な「安全第一」の心がけを、インドでもしっかり伝えている。

託児所も設けられている。このハリドワール工場には、女性の工員さんが非常に多い。こうした施設があると、子供のいる人は安心して働ける。職場に併設されている託児所は、日本でもまだ珍しい。むしろインドのほうが一歩先を行っていた。

ハリドワール工場の見学を終え、構内のベランダで休憩していると終業のチャイムが鳴った。すると工場の出入り口に帰宅を急ぐ工員さんたちが列をなした。離れていても聞こえてくる、にぎやかな話し声。背中を丸めて、トボトボと歩く人などおらず、実に楽しそう。実際、この工場と工員さんたちとのエンゲージメントは高いという。だから、仕事を終えて疲れているはずなのに、こんなにも軽やかなんだろう。

EW社は製造力だけでなく、商品力、営業販路に加えてサプライマネージメント力も磨き上げることで、広大なインドに隈なく商品を届けるという。さらにはインドを拠点とし、中東、東アフリカへの輸出も見据えているのだとか。それを実現するのは、EW社の実力はもちろん、ハリドワール工場で見たような同社に勤める工員さんたちの笑顔あってのものだろう。

取材・文/寺田剛治

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