ヒンドゥー教の聖地・ハリドワール。「シヴァ神の門」という意味を持つこの地に、恵まれない環境で育った若者に学びの門を開く教育施設がある。パナソニック エレクトリックワークス(以下、EW社)が運営する技能訓練校「アンカースキルスクール」だ。
今、世界中で注目されているグローバルサウスのひとつであるインドだが、低所得層(世帯可処分所得5000ドル未満)が66.47%(在インド日本大使館。「3:インドの人口・貧困状況」より) を占めるなど、まだまだ発展の途上にある。それゆえ、経済的な理由から高等教育を受けられず、職に就けない……そんな若者が多いのだ。そんな彼らに、EW社が手を差し伸べたというわけだ。
実践的な技能を学べる4つのコース
同校で学べるのは、インド国内での需要が高いとされる下記の4コース。
(1)「ASSEMBLY(組み立て)」コース……コンセントやスイッチなどの電材を組み立てる仕事を覚えられる。ここではEW社の製品と同じパーツを使っているので、卒業後、即戦力として働くことができる。
(2)「MOLDING(成形)」コース……射出&圧縮成形の技術を学ベる。教室では座学だけでなく、工場で使われている実際の射出成形機を使っての操作もできるので、実践的な技術を身につけられる。
(3)「ELEECTRICAL HOMEAPPIALANCE(家電修理)」コース……生活家電のメンテ技術などを習得。卒業後、家電メーカーのアフターサービスを行なう会社などへの就職を目指す人が多い。
(4)「MOBILE REPAIRING(携帯修理)」コース……スマホ(iOS、Androidどちらにも対応)の仕組みとメンテンス技術を学べる。4つのコースの中で、一番人気!!
1つのコースを修了するまでの期間は2〜3か月。もちろん学費、さらにはオリジナルの教材や工具などのキットも無料とすることで、貧困によって生じる壁を取り払い、多くの人が教育を受けられるようにしているのだ。
有名企業への就労を実現! 中には独立して成功する人も!!
そんな同校で学んだ卒業生が〝ある部屋〟に集まってくれた。その部屋の壁を覆うのは、様々な企業のロゴ。それは卒業生が勤めることになった会社のものでEW社はもちろん、インド国内の有名メーカーのロゴがズラリと並ぶ。それだけではない。話を聞くと、中には独立してスマホの修理店を経営し、「月に3万ルピー稼ぐ」という若者も!! インドの大卒初任給が約2万5000ルピーというデータもある。ここで技術を身につけることで、彼は見事に格差社会を脱することに成功したのだ。
校舎の壁に「NEVER STOP LEARNING.」と記されたポスターが貼られていた。同社は一過性の効果しか得られない寄付ではなく、永続性のある〝学び〟を支援することで、若者が未来を切り拓く手助けをしているだ。
取材を終え、バスの中からハリドワールの街を眺めていると、そこかしこに上のような家電修理店やスマホ修理店を見かけた。もしかしたら、「アンカースキルスクール」の卒業生の店かもしれない……頑張れ! と心からエールを送った。
取材・文/寺田剛治