画像技術により前立腺がん放射線治療の安全性が向上か
前立腺がんの放射線治療では、MR画像を用いてリアルタイムで腫瘍の位置や形状を確認して放射線照射を行うMR画像誘導即時適応放射線治療(MRg-A-SBRT)により、患者の短期的な副作用が有意に軽減することが、新たな研究で明らかにされた。
米ハーバード大学医学大学院ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJonathan Leeman氏らによる研究で、詳細は「Cancer」に2023年7月24日掲載された。
前立腺がんの放射線治療では、腫瘍に対して高線量の放射線をあらゆる方向からピンポイントで照射することで治療回数を減らす体幹部定位放射線治療(SBRT)の採用が増えている。
SBRTでは、重度の副作用が生じることはまれではあるが、軽度から中等度の副作用については、他の放射線治療法よりも強まる可能性が指摘されている。
一方、MRg-A-SBRTでは、MRIにより前立腺やリスクのある臓器がより明確に描出されるため、医師は、確認された変化に応じて患者の放射線治療計画を調整することができる。
また、放射線が照射されている間に、前立腺の位置をリアルタイムでモニターすることも可能だ。MRg-A-SBRTの実施件数は増加傾向にあるものの、CTやフィデューシャルマーカーを用いる、より標準的な治療法(CT-SBRT)と比べて、治療成績や有害事象にどの程度の違いがあるのかは明確にされていない。
Leeman氏らは、PubMed(MEDLINE)とGoogle Scholarを用いて、2018年1月1日から2022年8月31日までの間に発表された、前立腺がんに対するSBRTに関する前向き研究を検索。
基準を満たした29件を抽出してメタアナリシスを実施し、MRg-A-SBRTとCT-SBRTとの間で、治療に伴う有害事象を比較した。
29件の研究のうち、9件はMRg-A-SBRT、20件はCT-SBRTに関するもので、対象者の総計は2,547人(MRg-A-SBRT群329人、CT-SBRT群2,218人)であった。
その結果、泌尿器系と消化器系のグレード2以上の急性期有害事象が生じた割合は、MRg-A-SBRT群ではそれぞれ16%と4%であったのに対し、CT-SBRT群では28%と9%と推定された。
CT-SBRT群と比べたMRg-A-SBRT群での同有害事象発生のオッズ比は、それぞれ0.56(95%信頼区間0.33〜0.97、P=0.04)と0.40(同0.17〜0.96、P=0.04)であり、MRg-A-SBRT群で有害事象発生のリスクが有意に低いことが示された。
Leeman氏は、「本研究は、MRg-A-SBRTの有用性を、CT-SBRTと直接比較した初めての研究である。得られた結果は、前立腺がんの管理におけるこの治療法の使用を支持するものだ」と述べる。
そして、「今後の追跡調査により、短期的なベネフィットが長期的なベネフィットにつながるのかどうかを見極める必要があるだろう」との見方を示している。
また、MRg-A-SBRTで使われている技術のどの側面が治療成績の改善に関与しているのかについても、本研究では明らかにされていない。
Leeman氏は、「治療中の画像をベースにしたモニタリング機能や、臨機応変に治療計画を調整できるアダプティブ・プランニングの要素が改善に関連している可能性が考えられるが、この点を明らかにするためには、さらなる研究が必要だ」と話している。(HealthDay News 2023年7月25日)
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Abstract/Full Text
https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cncr.34836
構成/DIME編集部