PayPayはオンライン環境下でなければ使えない。いや、使えなかった。
なぜ過去形になったかというと、PayPayは7月に「オフライン決済」を実装したからだ。
スマホはいつでもオンライン環境下にあるというわけではない。特に人混みの中では、どうしても回線混雑が発生してしまう。そんな最中にコード決済を行う段になったら……いや、そもそもコード決済などできるはずがない。
だからこそ筆者は「1枚の千円札が身を救う」と以前から主張しているのだが、此度のPayPayオフライン決済の登場でその主張も訂正せざるを得なくなるのだろうか?
花火大会ではスマホは「ただの文鎮」
筆者は隅田川花火大会のニュースを観ながらこの記事を書いている。
何でも、浅草周辺に100万人以上もの人が集まったそうだ。100万人である。カリブ海地域の島国グレナダの人口が約12万人、筆者の地元静岡市が約70万人だから、ちょっとした国でも作れそうな勢いだ。
そんな中では、もちろんスマホもロクに使えないだろう。
隅田川花火大会に先立つこと1週間前、静岡市では安倍川花火大会が開催された。筆者はこれに足を運んだのだが、案の定会場ではスマホなどただの文鎮と化してしまった。
コード決済どころの話ではないほど、通信状況が悪い。安倍川花火大会に参加した屋台は軒並み現金決済しか対応していなかった理由は、まさにこのあたりだろう。
こういう場所で、冒頭のPayPayオフライン決済はどれだけ使えるのだろうか?
コード決済をオフライン環境下でも実施できれば、これ以上便利なことはない。が、実はこのオフライン決済には利用条件がある。PayPayのプレスリリースによると、
ユーザーは、携帯電話の回線速度が遅い場合やオフラインの状況の場合、「オフライン支払いモード」が表示され、ユーザーが提示したコード決済画面を店側に読み込んでもらうことで決済が完了します。本機能は、ストアスキャン方式(ユーザーがスマホなどに表示した決済画面を加盟店が読み取る方式)の加盟店でのみ利用可能で、利用にあたっては店舗の決済端末がオンラインである必要があります。また、1回の決済は最大5,000円で1日2回まで、ユーザーの保有している「PayPay残高」を上限金額とするなど、決済金額および回数の上限設定があります。
ということだ。「1回の決済は最大5,000円で1日2回まで」という点に注目していただきたい。この制限は、果たして実用的か否か?
筆者は「1回の決済最大5,000円」はともかく、「1日2回まで」がとても気になる。残高に余裕があるからといって無尽蔵にポンポン使えるわけではないのだ。また、この機能はストアスキャン方式限定という点も加味しなければならない。
実際問題、お祭りの屋台でPayPayのストアスキャン方式に対応している店はどれだけあるのだろうか? そんな屋台は滅多に見かけないはずだ。
もちろん、このオフライン決済機能が広く認知されて「ウチもストアスキャン方式に対応しよう」と考える屋台運営者も出てくるだろう。が、そうなると今度は「回線混雑が発生すると、屋台のストアスキャン端末も客のスマホ同様の状態に陥ってしまうのでは?」という疑問も出てくる。
するとこのオフライン決済機能は、時折発生する通信障害の時に緊急手段として利用する用途くらいしか見出せないのでは……?