オーストラリアでは、Vol.1で紹介したように世界中から集まった移住民による本格的な多国籍グルメが街中にあふれていることから、舌の肥えている人が多く、食材に対するこだわりも強いようだ。Vol.2では、オーストラリアで味わえる独自のコーヒーをはじめ、ビール、ワイン、牛肉のおすすめについて紹介しよう。
オーストラリア人の多くはコーヒーチェーン店ではなく小規模の〝推しカフェ〟に行く
オーストラリアの都市であるシドニーやメルボルンを歩いていると、日本にありがちなコーヒーチェーンの姿がほとんど見られないことに気付く。もちろん日本のように飲み物の自動販売機が歩道に置かれていないし、街中で缶コーヒーを飲んでいる人も当然いない。
それもそのはず。オーストラリアでは「コーヒーを飲むなら個人が経営しているような小規模の〝推しカフェ〟に行く」というカルチャーが深く浸透しているからだ。小規模なカフェはメルボルンだけでも1000店舗以上あるという。
オーストラリアではイギリスの植民地時代に〝ティー文化〟が根付き、第二次世界大戦後には移住してきたイタリア人による〝コーヒー文化〟が流入。その影響により、オーストラリアにある多くのカフェでは、エスプレッソマシンが置かれている。
飲み方としては、エスプレッソマシンで抽出されたコーヒーに、ミルクを入れて飲むのが一般的。「カフェラテ」「カプチーノ」といった日本でも知られるメニューに加えて、ミルクの配合量や泡立て方などにより「フラットホワイト」「ロングマキアート」といったオーストラリア独自のミルクコーヒーを提供している。
オーストラリアでは、ここ十数年の間に、産地と品質を厳選したこだわりのコーヒー豆を使用する「スペシャリティー・コーヒー」を振る舞うカフェが増加。各店舗によって取り扱っているコーヒー豆の種類はもちろん、焙煎方法も実に様々。その中から選んだ自分好みの〝推しカフェ〟を選んで通うのが、オーストラリア流のコーヒーの楽しみ方なのだ。
〝激推しの人〟は1日に3回も通うことも。当然、カフェのスタッフと顔なじみになる人も多い。カフェで働く人にとっては、バリスタとして美味しいコーヒーを提供するスキルはもちろん、店頭での〝コミュ力〟も極めて重要。カフェでは、コーヒーのことだけでなくスポーツや政治の話を交わすこともあるという。
このようなカルチャーが息づいていることから、日本で多く見られるようなコーヒーの大規模チェーン店がオーストラリアでウケないのも無理もない。スターバックス コーヒーも過去に撤退を余儀なくされたことがあり、現在は都市部に数店舗だけ、主にオーストラリア国外からの観光客向けに展開しているような状況だ。
コーヒーの煎れ方や店づくりのコンセプトはカフェによって実に様々
「チビ(CIBI)」
今回、オーストラリアのコーヒー文化について教えてもらった、日本人オーナーの田中善太さんが経営している「チビ(CIBI)」は、メルボルンの大人気カフェ。もともと服の縫製工場だった広い空間を生かし、コーヒーや料理を楽しめる食事のスペースだけでなく、日本の文化を発信するライフスタイルショップとして、日本にちなんだ調理器具や食器類の販売コーナーも用意。味噌づくりなどのセミナーも積極的に開催している。朝8時にオープンし、午前中から常連客などで満席になることも多いようだ。
定番メニューの「カフェ・ラテ」($4)は、フレッシュにローストした浅煎りのコーヒーと、濃厚かつサッパリしたオーガニックミルクがベストマッチ! ちなみに、お店に仕入れるミルクの容器には、使い捨てのボトルではなく〝ケグ〟という樽のようなものを使うことで、ゴミを減らすことにも注力している。
「マーケット・レーン・コーヒー(Market Lane Coffee)」
「マーケット・レーン・コーヒー(Market Lane Coffee)」も、メルボルンを代表するスペシャリティー・コーヒーのカフェのひとつ。オーストラリアのコーヒー文化について造詣が深い日本人の焙煎士・石渡俊行さんが品質管理を担当しており、ブラジルをはじめとする国々の農園で作られた高品質なコーヒー豆を買い付け、素材本来の風味を引き出せる浅煎りにこだわっている。コーヒーに対する情熱がある人を、一からトレーニングする教育体制を整えており、オーストラリアにある全6店舗では安定したクオリティーのコーヒーを提供。店内ではコーヒー豆やドリッパーなどの販売も行なっている。
「マーケット・レーン・コーヒー(Market Lane Coffee)」ではフィルターで淹れたドリップコーヒー($4.5~)も人気。ティー感覚で飲めるフローラルな香りのボリビア産や、フルーティーな味わいを楽しめるルワンダ産などの銘柄を用意している。抽出に使われているのは、独自に発注した〝2つ穴〟のメリタ製ドリッパー。
「セブンシーズ・コーヒー・ロースターズ(seven seeds coffee roasters)」
都市メルボルンの中心地に存在する「セブンシーズ・コーヒー・ロースターズ(seven seeds coffee roasters)」は、豆の個性や品質にこだわった自家焙煎のコーヒーが有名なカフェ。スクエア形状のスポンジ生地にチョコレートをコーティングしたオーストラリアの伝統的なスイーツ「ラミントン」をはじめ、ハンバーガーやトーストといった食事が充実しているのも人気の理由だ。店舗内にはオリジナルのアイテムを陳列しているコーナーもある。
コーヒーの人気メニュー「フラットホワイト」($5)は、きめの細かいミルクをたっぷりと使ったクリーミーな味わいと、コクが豊かな深煎りのエスプレッソとのハーモニーが絶妙! 一緒に注文した「フルーツトースト」($8)は新鮮なブルーベリーの酸味が程よいアクセントに。ボリューム感があって食べ応え十分だ。
ちなみに上記で紹介している「CIBI(チビ)」は日本にも店舗があり、オーストラリア独自の「フラットホワイト」(500円)も用意。オーストラリアのカフェカルチャーをプチ体験してみてもいいだろう。
「CIBI Tokyo Store」
東京都文京区千駄木3-37-11
「CIBI corner store Kitasando」
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-14-10