異次元のパーソナライズ機能を搭載!高音質化を追求したDENONの完全ワイヤレスイヤホン「PerL Pro」の実力
2023.08.03連載/ゴン川野のPC Audio Lab「完全ワイヤレスイヤホンの高音質化」
Bluetooth接続の完全ワイヤレスイヤホンの高音質化には2つの方法がある。まずは音の上流を確保するためのコーデックで、aptX Losslessが最高なのだが対応スマホとDAPが少ないのが弱点。次にaptX Adaptive、LDACが控えている。そしてaptX HD、aptX、AACと続く。しかし、コーデックが良ければ絶対に音がいいかと言えば、そうも言い切れない。
音の出口のドライバーが良くなければせっかくのハイレゾ音源を生かせない。さらに最近、注目されているのがパーソナライズである。Finalがパーソナライズのみのサービス展開を発表して話題になったが、自分の耳の特性に合わせてイヤホンを調整するパーソナライズは、ハードウエアのカスタマイズに対して、ソフトウエアのカスタマイズと言える。ここで有利になるのが完全ワイヤレスイヤホンなのだ。なぜなら音楽データをデジタルで受けているため音質劣化なくDSPを使って音のパーソナライズを実行してからDACに信号を渡してアナログ化できるからだ。
私が注目するパーソナライズの方法はMasimo AAT(Adaptive Acoustic Technology)と呼ばれるもので、乳児の耳を測定するために開発された。一般的なパーソナライズの方法は、スマホアプリで低い音から高い音のテスト信号を聞かせて、音が聞こえなくなったらタップするといったものだが、乳児は言葉が話せないため、Masimo AATは全自動で測定から補正までを済ませてくれる。具体的には測定信号を蝸牛に送り、イヤホンに内蔵したマイクを使って、外耳道に放射された反射音を測定して聴覚特性を調べるのだ。これを最初に採用したのが、Nura「nuraphone」で、私は2019年におこなわれた日本での発表会を取材している。
パーソナライズによって本来の音楽信号をユーザーが聞けるようになる
Masimo AATは高度な医療技術を使い耳の特性を自動補正する
測定結果は視覚化され、3人分のパーソナルデータをスマホに保存できる
Masimo AATをDENONが採用
今回、発表されたDENON「PerLシリーズ」には、このMasimo AATが搭載されている。この測定技術を開発したMasimo CoporationがDENONブランドを持っているSound Unitedを買収したために使えるようになったのである。Nuraのイヤホンはいささか低音が強めの傾向があったがDENONブランドとなれば、この辺りのチューニングも変わってくるに違いない。
「PerL Pro」(実勢価格約5万1480円)と「PerL」(実勢価格約2万9700円)の主な違いは、Proはドライバーに3LayerTitaniumを採用、BluetoothのコーデックでaptX LosslessとaptX Adaptiveにも対応、電池寿命が本体8時間、ケース32時間でワイヤレス充電対応、急速充電は5分で1時間再生、ケース充電1時間、マルチポイント接続対応、aptX Voice対応、5バンドのEQ、空間オーディオ対応などになる。Masimo AATの効果はどちらも体験できるので、私はハイコスパな「PerL」を推したい。
「PerL Pro」はハウジングの外側のリングがクローム仕上げになっている
ケースのサイズは同じだが、「PerL Pro」の方が重くワイヤレス充電対応だ