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ランボルギーニ初のV10エンジンを搭載したベビーランボ「ガヤルド」20年の歩み

2023.07.30

2003年のジュネーブ・モーターショーで発表されたガヤルドは、ランボルギーニで初めてV10エンジンを搭載した市販モデルであった。当初から驚異的な人気を誇り、ランボルギーニの販売記録を次々と塗り替えてきた。20周年を迎え、アイコニックな「ベビー・ランボ」を記念して、その歴史を振り返ってみよう 。

フェルッチオ・ランボルギーニは、特に購入価格と維持費を抑えた「小さな」ランボルギーニを求める市場があることを、以前から感じていた。1970年代はじめ、彼は後にウラッコとなるモデルの開発を奨励し、1980年代にそれはジャルパへと進化した。

そして1987年、ランボルギーニはよりコンパクトなモデルの実現を目指す「L140プロジェクト」を立ち上げる。プロトタイプが何度も開発され、最初はV8エンジン、次はV10とさまざまな技術が試された。1998年、慎重に検討を重ねた結果、コンセプトとおおまかな寸法、それまでランボルギーニの市販モデルには採用されたことのなかった10気筒エンジンという要素のみをたたき台にして、すべてを一からやり直すことが決まった。

新しいエンジンを手掛けたのは、ランボルギーニに10年以上在籍し当時テクニカルディレクターであったエンジニアのMassimo Ceccarani(マッシモ・チェッカラーニ)氏と、技術部門でエンジンの開発設計を担当していたMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏であった。

2006年から2022年にランボルギーニのテクニカルディレクターを務めたマウリツィオ・レッジャーニ氏は、次のように回顧している。

「L140にはオイルパンエリアにギアボックスを組み込んだ72度のV10エンジンを搭載していました。ランボルギーニで設計したエンジンでしたが、それは目的のモデル用に生産するには現実的ではありませんでした。その上、エンジンの下にギアボックスを配置したことで重心が高くなり、ランボルギーニのスーパースポーツカーに期待されるドライバビリティやハンドリング特性が保証できなくなっていました。このため、『ベビー・ディアブロ』というコードネームのプロジェクトが開始されたときにはV8の採用が決まり、アウディのものを含め、既に市場に出ているエンジンの中から候補を選ぶことになりました。その後アウディ傘下に入ったことで、アルミニウム製のチューブラーフレームと10気筒エンジンをランボルギーニで設計し、新しいトランスミッションをマニュアルとロボタイズドの両方で用意するという、完全に新しいモデルを開発することが決まりました」

初代ガヤルドに搭載されたエンジンは、5リッター10気筒V型90度の4バルブDOHCで、最高出力は500PSだった。典型的な72度ではなく90度を採用したのは、エンジンの高さを抑えることでレイアウトに有利に働かせ(エンジンフードを低くすることでリアの視認性を向上)、重心を低くしてダイナミクス向上を図るためだった。また、クランクピンを18度オフセットさせて等間隔燃焼を実現している(エンジンのスムーズさを保証)。潤滑方式にはドライサンプを採用し、過酷な走行環境下でも完璧な潤滑が可能になるだけでなく、重心もさらに低くすることができた。

マウリツィオ・レッジャーニ氏は次のように説明している。

「計画通りの台数を生産するためには、V10に90度のV角を持たせる必要があったため、90度でも等間隔燃焼を実現できるようにクランクシャフトで『スプリットピン』を採用することになりました。クランクケースはランボルギーニの設計者が改良、再設計し、ライナーを従来のニカシルコーティングではなく過共晶アルミニウム合金とし、直接アルミニウムで鋳造できるようにしました。これによってシリンダー間の間隔、ひいてはエンジンの長さ、重量、コストも削減できました。こうして、初代ガヤルドに搭載する5リッター90度V型10気筒MPIエンジンが誕生したのです」

初のV10は、5リッター、ドライサンプ潤滑方式、各シリンダーバンクにオーバーヘッド・カムシャフトを備えたDOHC、可変バルブタイミング(1シリンダーあたり4バルブ)、チェーン駆動と、最先端の技術を駆使したエンジンだった。 6速ギアボックスは最新世代のダブルおよびトリプルコーンシンクロを備え、最適化された制御方式を採用してエンジンの後方に配置、AWDには実績のあるVTシステムを採用した。

基本的な機構はそのままに、ロボタイズド、シーケンシャル方式のギアボックスも開発した(ランボルギーニ「eギア」、初代モデルではオプション設定)。 全アルミニウム製のフレームは、鋳造接続部品に押出成形部品を溶接したものがベースだった。このフレームに、ボディ部品がそれぞれの機能によって異なる方式(リベット、ネジ、溶接)で組付けを行なった。その他の装着部品(バンパーなど)には熱可逆性樹脂を使用、ボルトで締めた。

デザインプロジェクトは2000年に開始した。デザインは「イタルデザイン・ジウジアーロ」の提案をベースに、Luc Donckerwolke(ルク・ドンカーヴォルケ)氏率いる新設ランボルギーニ・チェントロスティーレによって磨き上げられ、最終化された。デザイナーに求められていた、厳しいながらも心躍る任務は、ランボルギーニ的なフォルムの属性を洗い出し、それらを組み合わせて完全に新しい1台を生み出すことだった。

ガヤルドが目指す寸法と性能は、デザインに引き締まったアスリート感をもたらし、そのホイールベースとコンパクトになったオーバーハングは、よりダイナミックな印象を醸し出した。ガヤルドのアイコニックなデザインの主な特徴は、ボディと一体となったキャブフォワードのコックピット、鋭角に横たわるフロントガラスと張り詰めたピラー、明確な線が入った平面の複雑な処理、空気の流れに沿った冷却システム要素の配置など、航空機の影響を強く感じさせるもので、2001年に発表されたムルシエラゴでも採用された。

しかしながら、発売時にガヤルドを突出した存在にしたのは、その高い性能に加え、普段使いの1台としても十分なドライバビリティ、信頼性、日常的な実用性を併せ持っている点であった。それは、2004年5月、イタリア警察に車両を寄付する伝統がガヤルドから始まった。寄付された車両は、命を救うための医薬品や臓器の輸送など、特別な目的で使用されている。

クーペバージョンの発表から2年後の2005年、アウトモビリ・ランボルギーニはフランクフルト・モーターショーでガヤルド スパイダーを発表した。これはクーペの単なる「オープントップ」版にとどまらない、完全に一新されたモデルで、エンジンフードも関係する開閉機構を持つ、新しいソフトトップを備えていた。

ガヤルド スパイダーでは、エンジン、トランスミッション、性能に関しても重要な新機能が導入された。4,961ccの10気筒エンジンは8,000rpmで520PS(382kW)を発揮、6速ギアボックス(標準設定はマニュアル、オプションでロボタイズドのeギアを選択可能)のギア比は低くなり、よりダイナミックなハンドリングが実現できるようになった。この新しいエンジン性能は、2006年式モデルからクーペバージョンでも導入された。

2007年、「ベビー・ランボ」の累計生産台数が5,000台を超えた年に、ジュネーブでガヤルド スーパーレジェーラを発表。10PSの出力アップと100kgの軽量化でさらにダイナミックになった新モデルは、わずか2.5kg/PSというパワーウェイトレシオを実現していた。このスーパーレジェーラはロボタイズドギアボックスを標準装備し、それが以後のモデルにも引き継がれていくことになる。

そして追加費なしでMidas Yellow、Borealis Orange、Telesto Gray、Noctis Blackの4色の中からボディカラーが選べた。軽量化を図るため、固定リアスポイラーなどにカーボンファイバーを多用し、リアスポイラーは、カーボンセラミックブレーキとともにスーパーレジェーラの特徴的なオプションだった。

2008年3月のジュネーブ・モーターショーではガヤルドの改良版、LP560-4を発表。20kgの軽量化を果たし、直噴システムを採用した最高出力560PSの5.2リッターV10エンジンを搭載していた。同年、ガヤルドの生産台数は7,100台に達する。11月に開催されたロサンゼルス・モーターショーでは、同じ仕様でオープントップのLP560-4 Spyderを発表した。新しく採用されたエンジンには、予期されていなかった大きな技術的変更があった。

マウリツィオ・レッジャーニ氏は次のように語っている。

「(Gallardoの)5.2リッターエンジン搭載バージョン以後は、クランクシャフトの剛性を高めるため、クランクシャフトのジオメトリを変更し、スプリットピンを廃止して不等間隔燃焼にしました。直接燃料噴射技術の採用で、燃焼室内の効率が向上、出力アップと汚染物質の減少につながりました」

生産台数が9,000台に達した2009年、アウトモビリ・ランボルギーニはガヤルドLP 550-2 バレンティーノ・バルボーニを発表。250台限定生産のこのモデルは、550PSと後輪駆動という、同モデル初の技術を採用していた。その後、多数の要望を受け、ガヤルドLP 550-2には市販モデル(2010)とスパイダーバージョン(2011)も登場した。

その個性を生かすため、サンタアガタ・ボロネーゼのエンジニアたちはこれらのバージョンではRWDを採用してスプリング、ショックアブゾーバー、スタビライザーバー、タイヤなどのドライビングダイナミクス関連部品を一新ました。動力の流れの変化を考えると、こうした変更はビークルダイナミクスにも影響した。リアディファレンシャルも新しくし、動的安定性システムESPにも多くの調整を加えた。

2010年3月、よりダイナミックで軽量、さらに強力で魅力的なガヤルドLP 570-4 スーパーレジェーラをジュネーブで発表した。同名の2007年バージョンの成功を引き継ぐことを狙い、前モデルより70kgの軽量化を果たし、570PS(419 kW)のエンジンを搭載し、パワーウェイトレシオは2.35kg/PSにまで下げた。

空力性能の改良を図るためエクステリアに変更を加え、そのデザインはラジエーターへの空気の流れを増大させ、フロントアクスルのダウンフォースを向上させた。フロアパネルの変更とサイドスカートの使用、新しいカーボンファイバー製のリアディフューザーも、空力性能の向上に貢献した。リアアクスルへの空力負荷のバランスを取るため、固定リアスポイラーが備えられた。

2010年は、このほかにも同じエンジンを搭載した2モデルを発表。さらなる軽量化を実現したLP 570-4 スパイダーペルフォルマンテ(LP 560-4 スパイダーに比べ全体重量が65kg軽い)と、スパートロフィオのレーススピリットを完璧なロードハンドリングと見事に融合させ、2009年から始まったワンメイク選手権「Lamborghini・Blancpain・Super Trofeo」に触発された特別デザインのガヤルド LP 570-4 ブランパン エディションである。

2012年、アウトモビリ・ランボルギーニは、ガヤルドの最新2モデルをパリ・モーターショーで発表した。より一層大胆に、過激さを増したガヤルドLP 560-4とガヤルドLP 570-4エディツィオーネ・テクニカは、ランボルギーニ初のV10モデルのさらなるスタイリングの進化を表していた。

2013年1月、ガヤルド MY13に基づいた新しいGT3プログラムの開発が発表され、同年のフランクフルト・モーターショーでガヤルドLP 570-4スクアドラ・コルセを披露。ガヤルドのラインアップの中でも最も過激なこの新しい限定シリーズは、Lamborghini・Super Trofeoで競うガヤルド・スパートロフィオにインスピレーションを得ていた。

2013年11月25日、ガヤルドの最後の1台が、由緒あるサンタアガタ・ボロネーゼ工場の生産ラインを後にした。最後に生産された1台はRosso MarsのガヤルドLP 570-4 スパイダーペルフォルマンテだった。

10年以上にわたる生産の中で、ガヤルドには数多くのスペシャルエディションが登場し、45カ国で販売され、32種のバージョンを合わせると生産台数は合計14,022台に上る。これらの数字だけを見ても、ガヤルドはイタリアンデザインと自動車技術を代表する名車として位置付けられ、史上最も高く評されたスーパースポーツカーに名を連ねることになるであろう。

関連情報:https://www.lamborghini.com/jp-en

構成/土屋嘉久

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