各金融機関のアプリで利用できる「ことら」送金サービス、8月から全国信用金庫との連携強化
日本には「信用金庫」という形態の金融機関がある。
信用金庫は互助組織のような色合いが強く、地方では先祖代々地元の信金の顧客ということも珍しくない。そして、そのあたりは地方銀行も同様である。
キャッシュレス決済サービスにしろ送金サービスにしろ、日本でシェアを広げようと思うなら地銀や信金との協力が必要不可欠なのだ。
その論理は最近頭角を現すようになった送金サービス「ことら」に、はっきり投影されている。
各金融機関のアプリで手軽に送金
スマートフォンを使った少額送金サービスとして知名度を確立しつつあることらは、自前のアプリを持っていない。
提携している金融機関のアプリを利用し、依頼元と受取先が異なる金融機関であっても殆どの場合は無料で送金できる。受取人は個人に限定し(営業性個人も含む)、1件あたりの送金上限は10万円。携帯電話番号・メールアドレスを紐付けすれば、相手の口座番号を知らなくとも送金を実施することが可能だ。
営業性個人も利用できるのだから、個人事業主がことらを活用するという手もある。
或いは、友達との外呑みで立て替えてもらった分の勘定をことらで送金するという使い方も。同一人物が別の金融機関に作った口座に送金、という用途も考えられる。想定すればキリがないが、それだけ幅広い使い方のできるサービスということはここに明記しておきたい。
が、こうした送金サービスは日本では地銀と信用金庫を背後に添えないとなかなか普及しない。
地銀・信用金庫の存在感
地域密着型の金融機関と地元の中小企業は、極めて密接な関係を保っている。
筆者がとある地方都市の中小企業を取材した時、そのついでに近くの観光スポットを見てみようという段になった。しかし泊りがけの取材だったから、筆者は大きな荷物を抱えている。
すると取材先の企業の社長が、
「何なら、ウチのメインバンクに置かせてもらえばいいよ」
と言って、何と地銀の店で荷物をしばらく預かるよう交渉してくれたのだ。今考えれば、この話だけで@DIME向けの記事を執筆できたに違いない。
また、地方都市に限らず東京や大阪の中小企業にも必ず「出入りの行員」がいる。特に大きな要件はないが、割とこまめに訪問して元気な声を聞かせてくれる人……と書けばいいか。
そういうこともあり、先祖代々受け継がれる家業を営む人は地銀や信金の社員と二人三脚のような暮らしを営んでいるのだ。
この光景を無視できる金融サービスは存在しない。あのPayPayですら、今年に入って地銀・信用金庫との提携を強化しているのだ。