同じ都道府県の中でも複数の信用金庫が
ことらの送金サービスに、今年8月から170の信用金庫が参画する。
これにより、計231の金融機関でことらを利用できるようになる。PDFの資料で参画金融機関の一覧を見てみると、ちょっとした地理の勉強にもなる。また、同じ都道府県の中でも複数の信用金庫が存在するのは、やはり「地域」というものがあるからだ。
たとえば筆者の地元静岡県も、その中の地域や文化圏は多数ある。筆者の家族は静清信用金庫の顧客だが、同じ静岡県でも三島市には三島信用金庫というものがある。
静岡市から焼津市にかけてはしずおか焼津信用金庫、島田市は島田掛川信用金庫といった具合に、地域の数だけ信用金庫があると言っても大袈裟ではないだろう。なお、以上に挙げた静岡県内の信用金庫も8月からことらのサービスを利用できるようになる。
これをきっかけに、信用金庫の預金口座がメガバンクのそれよりも使いやすいものになっていく逆転現象が発生する可能性もある。
過疎地域のデジタル化
「地方は高齢者が多いからデジタル化や新しいサービスは必要ない。そういうのは若者の多い都会でやるべきだ」ということは、今でも言われている。
しかし、実際は逆だ。高齢者の多い地域、過疎化の進んでいる地域こそ新しいサービスが必要なのだ。これは日本を離れてみたらよく分かることで、新興国では都市部よりもインフラが脆弱な地域で「スマホアプリを使ったサービス」が普及していたりする。
筆者自身、銀行のATMすら見当たらない場所に住んでいたことがあるため、そうしたところにこそスマホ送金サービスが物を言うことはいささか心得ているつもりだ。そして仮に24時間365日いつでも無料で送金できる手段が確立されたら、地方にいながら個人規模の様々なビジネスを実施できるようになるはず。
これこそが21世紀の「地方創生」なのだ。
21世紀の地方創生
さて、現在筆者の手元にこのような本がある。
吉川弘文館『軍隊を誘致せよ 陸海軍と都市形成』(松下孝昭)という本なのだが、これは19世紀から20世紀前半の全国各都市の軍隊誘致運動について説明した内容だ。
静岡市もそうだったが、まとまった土地を陸軍に無料で差し出してまで基地や駐屯地を建てた理由は「軍隊が来ると街が栄える」からだ。軍事施設の周りには近代的な水道や鉄道は不可欠で、さらには軍人たちの需要を満たす商店もなければならない。そうしたことを細かく解説している会心の書である。
19世紀の地方創生とは、即ち巨大な施設を誘致することだった。が、21世紀の現代は「手段のデジタル化・オンライン化」こそが地方創生につながる。
しかしそれには、地銀・信用金庫との協力が欠かせない。ことらの躍進は、その原理を我々に教えてくれる。
【参考】
ことら
https://www.cotra.ne.jp/p2pservice/
『ことら送金』ますます便利に!更に170信用金庫が対応予定-ことら(PDF)
https://www.cotra.ne.jp/news-releases/download/39/news-releases-file
取材・文/澤田真一