輝いている人たちの姿に衝撃を受けた
尾崎氏がピラティスに出会ったのは、2004年、アメリカ。当時経営していた不動産会社を売却し、新たなビジネスを始めようと、カリフォルニアのビジネススクールでMBA取得を目指していたときのことだった。たまたまピラティスのスタジオを視察したところ、通っている人々のいきいきと輝いている様子に衝撃を受けたのだとか。
「表情、立ち姿、会話をするときの様子など、これこそがナイスパーソンという印象。みんな元気で、年齢を問わず心がピュアで、ハッピーなムードにあふれている。彼らが素晴らしい人生を歩んでいるのを、ひと目で感じました」
その場でBASIピラティスの創業者であるラエル・イサコウィッツ氏からピラティスのメソッドについて説明を受け、「これは人間の心を整えるために最適な手段だ」と確信。
「僕が大学卒業後に証券マンとしてキャリアをスタートし、日本有数の企業を支える優秀な社長たちを相手に営業をするなかで強く実感したのが、人間的な魅力を高めていくことの重要性でした。仏教や禅、瞑想なども個人的に研究しましたが、ピラティスこそ、現代人が人間性を磨いていくために最も簡単で効果的なツールだと直感的に理解したんです」
日本の医療と寿命は1位でも、幸福度は47位
「zen place」を通して、ピラティスの魅力を発信し続けて17年。「日本のビジネスパーソンにこそ、ピラティスは必要」と尾崎氏は語る。
「日本は医療も寿命も世界トップレベル。それに対し、国連の世界幸福度ランキング2023年版では47位と、主要7カ国のなかでは最下位。これって、普通に考えたらおかしなことなんです。日本人のウェルビーイング、つまり、自分の心と身体が満たされた状態で生活できているかということへの意識がいかに低いかということの表れ。一人ひとりがウェルビーイングにもっと取り組んでいかないと、日本の経済や社会が抱えている課題は根本的に解決できないと思います」
一度きりの人生、大いに楽しみたいと思う一方で、目の前の現実はというと、仕事や人間関係の悩みを抱えて、常に心のどこかで不安やストレスを感じている――もしもあなたもそんなビジネスパーソンのひとりなら、ぜひ、ピラティスを体験してみてはいかがだろうか。人生のパフォーマンスを上げるための最高の答えが、きっと待ち受けているに違いない。
取材・文/志村香織 撮影/五十嵐美弥