皆さんは、ABARTH(アバルト)ってご存じですか?
簡単にいうと、フィアット車のスポーツモデル。メルセデス・ベンツでいうとAMG、BMWならアルピナ、日本車だとトヨタのGRや日産のNISMOのようなもので、フィアット版がアバルトです。
1949年、カルロ・アバルトがイタリアで設立したアバルトは、フィアット車でレースに参戦したり、パーツを製造・販売していましたが、1971年にフィアットに買収されてから、現在はフィアットのスポーツ部門となっています。目印は、サソリのエンブレム。これはカルロ・アバルトの星座だそうだす。そして、アバルトの魅力であり、最大の特徴は、スタイリッシュなデザインとダイナミックな走行性能にあります。
そんなアバルトは、フィアット初の電気自動車(BEV)「500e」の、アバルト版「500e」を発売。日本には今秋導入される予定ですが、ひと足お先に、フィアットとアバルトのお膝元、イタリアで試乗が叶いましたので、その模様をお届けしたいと思います。
場所は、ミラノとフィアット本社があるトリノのちょうど中間あたりにあるステランティスのテストコース「ステランティス・バロッコ・ブルーピング・グラウンド」。アバルト、フィアット以外にも、ステランティスグループのマセラティ、アルファロメオ、フェラーリもここでテストを行なうそうです。
フィアット「500」といえば、イタリアの国民車と呼ばれ、人気が高いクルマですが、最新モデルは電気自動車(BEV)の「500e」。2020年に欧州でデビューし、日本にも2022年に導入されています。フィアット「500」同様、見た人を虜にするキュートなデザインはBEVになっても同じですが、アバルトはそれをどうやって、らしく仕上げたのでしょうか?
まずは、エクステリアから。見るからに電動化という感じのデザインで、フルLEDのフロントライトは寄り目のように見えて、表情が豊か。フロントグリル部分に「ABARTH」のロゴが入っています。他に専用のフロントバンパーやサソリの爪をイメージしたという専用アルミホイールも印象的。
そして「電気のサソリ」マーク(電気自動車用のスコーピオンマーク)は、アバルト「500e」専用のボディカラー、アシッドグリーンに黒い斜めストライプ。真ん中に稲妻がビビビと刺さっているデザインで、これが「電気サソリ」(BEV)のマーク。サイドボディ、インテリアにもあしらわれていて、ヘッドレスト一体型のスポーツシートのヘッドレストやステアリング中央、メーターパネルのグラフィックにも、最初と最後に電気サソリマークは登場します。その際、ギターの音色のような音を発します。シートはエンボス加工されたアルカンターラで、そこにも電気サソリが登場。
ボディサイズは、フィアット「500e」と比べて、アバルト「500e」は、全長が41㎜長く、全高が9㎜低く、フロントのオーバーハングが42㎜大きく、リアのオーバーハングが1㎜小さくなっています。車両重量は1335㎏で、45㎏重くなっています。リチウムイオンバッテリーの容量は、フィアット「500e」とアバルト「500e」は同じ42kWhのものを搭載していますが、モーターを強化しており、最大出力が155hp、最大トルクを24㎏m、満充電時の航続可能距離は265㎞となっています。アバルト「500e」のほうが車両重量やパワフルな走りを手に入れた代わりに、航続距離が短くなったというわけですね。
試乗車は、アバルト「500 eツーリング」で、アバルト「500e」の充実装備バージョンでした。それと、カブリオレ。残念ながら、試乗日は雨だったので、ルーフを機会はありませんでしたが。試乗会場には新色のアシッドグリーンとポワゾンブルーの個性的なボディカラーが並び、視覚的にも印象に残りました。
そして、さらに、アバルト「500e」を印象付けるのは音。BEVは本来、エグゾースト音は無く、モーター音だけなので静かなのですが、敢えて、アバルト「659」の音を演出する「アバルト・サウンド・ジェネレーター」が気分を盛り上げます。
そのため、プレゼンテーションの後、まずは「アバルト695コンペティツィオーネ」の試乗。コーナーの多い曲がりくねったハンドリングコースを走ります。これはこれで楽しい! 軽快に加減速を楽しめます。メインはその後のアバル「500e」ですが、スタートスイッチを押すとギター音! アバルトはロックな感じ。
そして、「アバルト・サウンド・ジェネレーター」をセットすると、いきなり迫力のあるエグゾーストが流れ出します。「これか~」。プレゼンテーションでは「轟音」と呼んでいましたが、確かに轟音! バリバリと迫力があります。
とにかく、加速がクイックで、最もおいしい低速から中速への加減速が何度も何度もやってくるこのスピードの加減速を存分に楽しめるコース設定です。楽しいわ~。ちなみにドライブモードは「ツーリスモ」、「スコーピオンストリート」「スコーピオントラック」の3つ。回生ブレーキは「ツーリスモ」と「スコーピオンストリート」で効き、ワンペダル感覚のドライブを楽しめます。ただ、こういったサーキットのような場所では「スコーピオントラック」の本領発揮!
加速減速を繰り返すので、何度もアバル「500e」得意な気持ちのいいエンドレスドライブ。アバルト「695」に乗った後は、「アバルト695楽しいじゃん」と思っていましたが、この迫力、滑らかな加減速のつながり、アバルト「500e」はその世界観をさらに洗練させてレベルアップさせた感じ。
「アバルト・サウンド・ジェネレーター」の疑似695のエンジン音は、もちろんオフにすることも可能。ただし、止まった状態でしか切り替えはできませんが。ちなみに私は「カブリオレ」バージョンの試乗でしたが、この日は雨模様のため、出番なし。
そして、アバルト「500e」のプレゼンテーションでは楽しいサプライズがありました!
本日から日本でも公開されるトム・クルーズ主演「ミッション インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」にアバルト「500e」が登場するらしい!? こちら、どんな感じで登場するのかも楽しみ~~~!
■関連情報
https://www.abarth.jp/cp/500e/
取材・文/吉田由美(カーライフ・エッセイスト)