パブリックアフェアーズ領域で総合的なコンサルティングを行う紀尾井町戦略研究所は、月に2回程度、時事関係のトピックを中心としたWeb調査を全国の18歳以上の男女1000人を対象に行なっている。
今回は10月以降の納品分から始まるインボイス制度(適格請求書等保存方式)に関する意識調査を実施。その概要をお伝えする。
調査結果サマリ〜79%が「同制度について政府による周知が十分だと思わない」
まずインボイス制度について見聞きしたことがある人は80%だった。この制度が今年10月納品分から始まると知っている人は51%。請求書発行が9月以前であったとしても、納品が10月以降に行われる場合は対象となることを知らなかった人が69%に上った。
インボイス(適格請求書)に領収書やレシートも含まれると知らなかった人は61%。適格請求書は油性ボールペンなど書き換えできない筆記具なら、手書きで作れることを知らなかった人は75%となった。
今回導入するインボイス制度について、いずれも「どちらかといえば」を含めると、必要だと思う人は31%、必要だと思わない人が40%。同制度について政府による周知が十分だと思わない人が79%に達した。同制度により事業者の事務作業負担が「かなり重くなると思う」「ある程度重くなると思う」人が計68%に上った。
これまで零細事業者に「益税」を認めてきたことを、やむを得なかったとする人は40%、不適切だったと思う人は30%。中小零細企業などにはインボイス制度による作業が煩雑すぎて経済効率を下げると思う人が56%いた。
今回導入するインボイス制度の主な課題を複数回答で聞くと「制度設計が全体的に複雑すぎて分かりにくい」が最多で51%を占めた。
自身がどの立場でこの制度に関わるかを聞くと「いずれも関わらない」34%、「わからない」22%、「買い手」17%と続いた。制度について相談できる人がまわりにいるかどうかを聞くと「そもそも相談する必要性がない」40%、「いない」31%などの順となった。制度の知識や情報をどこから得ているかを複数回答で聞くと、インターネット・動画がトップで32%だった。
副業や兼業で1か月当たりに得ている収入を聞くと、副業や兼業をしていない人が80%、1万円未満6%、1万円以上5万円未満5%と続いた。
主な設問の回答事例
・インボイス制度について「見聞きしたことがある」人は80.9%だった。それを職業別で見ると、会社役員・団体役員、会社の正社員・団体の正社員、医療・福祉関係の職員等、自営業・専門職(士業等)・自由業でいずれも8割台で最多だった。年収別では、300万円未満の各層は7割台以下だったのに対し、300万円以上の各層は8割を超えた。(Q6)
・インボイス制度が今年10月納品分から始まることを「知っている」人は51.1%だった。それを職業別に見ると、自営業・専門職(士業等)・自由業が7割台で最多となり、次いで会社役員・団体役員、会社の正社員・団体の正職員の6割台だった。年収別では500万円未満の各層では4割台以下だったのに対し、500万円以上の各層は6割を超えた。(Q7)
・今回始まるインボイス制度は請求書の発行が9月以前であっても納品が10月以降に行われる場合には対象となることを「知らなかった」人が69.3%に上った。知っている人25.6%を職業別に見ると、会社役員・団体役員、教職員で5割と最多だった。年収別では、全体的に年収が上がるほど知っている割合が増える傾向があり、2000万円以上の層では7割を超えた。(Q8)
・インボイス(適格請求書)には領収書やレシートも含まれることを「知らなかった」人が61.0%を占めた。知っている人34.2%を職業別に見ると、教職員が5割で最多となり、会社役員・団体役員、会社の正社員・団体の正職員、公務員(団体職員や教職員を除く)、医療福祉関係の職員等、自営業・専門職(士業等)・自由業で4割台だった。年収別では、全体的に年収が上がるほど知っている割合が増える傾向があった。(Q9)
・適格請求書は油性ボールペンなど書き換えできない筆記具なら手書きでも作成できることを「知らなかった」人が75.3%に達した。(Q10)
・政府はインボイス制度導入の「目的」を複数税率に対応する正確な納税のためなどと説明していることを「知らなかった」人が62.7%を占めた。(Q11)
・今回導入するインボイス制度について、どちらかといえばを含め「必要だと思わない」人が40.7%で、どちらかといえばを含め「必要だと思う」とした31.7%を上回った。後者の31.7%を職業別に見ると、会社役員・団体役員、会社の正社員・団体の正職員、公務員(団体職員や教職員を除く)、契約社員・パート・アルバイト等、年金生活・無職が3割台で最多だった。支持政党別に見ると、自由民主党と公明党で5割を超え最多となる一方、れいわ新選組、社民党、参政党は1割台で最も少なかった。(Q12)
・インボイス制度について政府による周知が「十分だと思わない」人が79.8%に達した。(Q13)
・インボイス制度により、事業者の事務作業負担が全体的に見て「かなり重くなると思う」「ある程度重くなると思う」人が計68.6%を占めた。かなり重くなると思うと答えた人を職業別に見ると、自営業・専門職(士業等)・自由業が4割で最多となり、次いで会社役員・団体役員、会社の正社員・団体の正職員、公務員(団体職員や教職員を除く)、医療・福祉関係の職員等の3割台だった。(Q14)
・インボイス制度導入に伴う政府による補助金や経過措置などの負担軽減策があることを「知らなかった」人が71.2%に達した。(Q15)
・インボイス制度導入に伴う政府の負担軽減策について、どちらかといえばを含め「不十分だと思う」人が61.8%を占めた。(Q16)
・これまで零細事業者を免税事業者だとして「益税」を認めてきたことを「やむを得なかった」とする人が40.0%、「不適切だったと思う」人が30.6%だった。(Q17)
・政府が消費税課税開始後も、これまでインボイス制度を導入してこなかったことを「やむを得なかったと思う」人が32.7%、「不適切だったと思う」人が28.1%だった。(Q18)
・中小零細企業などはインボイス制度による作業が複雑すぎて経済効率を低下させるとの指摘について「その通りだと思う」人は56.5%を占めた。(Q19)
・今回のインボイス制度の主な課題を複数回答で聞くと「制度設計が全体的に複雑すぎて分かりにくい」51.0%が最多だった。(Q20)
・自身がどの立場でインボイス制度に関わるかを聞くと「いずれも関わらない」34.8%、「わからない」22.5%、「買い手」17.9%と続いた。(Q21)
・自身が課税事業者として登録済み、あるいは登録申請済みかを聞くと「事業者ではないので登録も登録申請もしていない」59.5%が最多だった。(Q22)
・インボイス制度をめぐり、課税事業者として登録申請手続きをした感想を聞くと「登録申請手続きをしていない」71.0%がトップだった。(Q23)
・まわりにインボイス制度について相談できる人がいるかどうかを聞くと「そもそも相談する必要性がない」40.6%、「いない」31.1%と続いた。(Q24)
・インボイス制度について情報や知識をどこから得ているかを複数回答で聞くと「インターネットや動画」32.7%が最多だった。(Q25)
・自身が副業や兼業をしているかと、している場合は課税事業者になるかどうかを聞くと「副業や兼業はしていない」が75.0%に上り、「副業や兼業をしていて、課税事業者になる予定はない」7.0%などとなった。(Q26)
・副業や兼業で1か月あたりに得ている収入について聞くと、「副業や兼業をしていない」80.4%、「1万円未満」6.2%、「1万円以上5万円未満」5.4%と続いた。(Q27)
・自身が行っている副業や兼業の種類を自由記述方式で聞いたところ、種類を大まかに分類すると「サービス、小売、販売業」26人が最多で「ポイント活動、アンケートやモニター調査への回答」18人が続いた。(Q28)
・個人事業主やフリーランスが課税事業者登録すればインターネットを通じて登録番号から氏名を検索できることについて「氏名の場合は検索できないようにすべきだと思う」が41.1%、「やむを得ないと思う」24.4%となった。(Q29)
・事業者のデジタル化や効率化のため日本のデジタルインボイスの標準仕様「JP PINT」が普及することに「期待していない」「あまり期待していない」が計47.9%、「わからない」が32.5%、「大いに期待している」「期待している」は計19.6%だった。(Q30)
調査概要
調査期間/ 2023年7月4日
調査機関(調査主体)/紀尾井町戦略研究所株式会社
調査対象/全国の18歳以上の男女
有効回答数(サンプル数)/ 1000人
調査方法(集計方法、算出方法)/インターネット上でのアンケート
関連情報
https://ksi-corp.jp/topics/survey/web-research-54.html
構成/清水眞希