いよいよ夏本番となり、各地で猛暑が続いている。
電力需要の拡大が見込まれるなか政府は、東京電力管内でこの夏の電力供給が非常に厳しくなる恐れがあるとして、7月1日から8月31日までの2カ月間、無理のない範囲での節電を要請している。
供給面での不安のみならず、大手電力7社は、2023年6月1日の使用分から電気料金を値上げした。電気料金の価格上昇による企業活動に与える影響も大きいと言える。
そんな中、帝国データバンクはこのほど、「夏の電力使用量の削減対策」などに関するアンケートを行い、その結果を発表した。
節電への対応策、「こまめな消灯」がトップ。クールビズは、企業規模によって取り組み状況に濃淡あり
自社における電力使用量の削減および電気料金値上げへの対応策(検討含む)について尋ねたところ、「こまめな消灯」(67.4%)が7割近くにのぼった(複数回答、以下同)。
以下、「クールビズの実践」(48.0%)やLEDなど「消費電力の少ない製品・設備の導入」(46.2%)が4割台で並び、「空調などの温度設定の見直し」(39.5%)、「オフィスの照明を落とす」(22.7%)が続いた。
また、「休暇取得の推奨」(8.3%)や「稼働・営業時間の短縮」(6.3%)、「在宅勤務の強化」(3.6%)、「始業・終業の時刻を早める」(2.8%)などといった、働き方を変えるような対応策[1]を企業の16.9%で実施または検討していた。
他方、「冷房等の電気代よりも暑さで仕事の効率が悪くなる方が問題なので節電などは一切行っていない」(メンテナンス・警備・検査)など、「取り組んでいない」企業は3.9%にとどまった。
規模別に対応策をみると、「こまめな消灯」は「大企業」(74.5%)では4社に3社で取り組み、「中小企業」(66.4%)や「小規模企業」(66.7%)でも6割以上となり、企業規模に関わらず、取り組んでいる様子がうかがえた。
しかし、「クールビズの実践」においては、「大企業」は70.1%の企業で取り組んでいる一方で、「中小企業」は44.7%、「小規模企業」は36.2%と企業規模によって実施状況に濃淡がみられる結果となった。
企業からは「ゴーヤ棚を設置栽培し、緑のカーテンとした」(建材・家具、窯業・土石製品卸売)や「空調機器を消費電力の少ないGHP(ガス・ヒートポンプエアコン)にしている」(建設)、「今期、太陽光発電装置を設置し7月から稼働開始した」(化学品製造)などといった対策を行う声が聞かれた。
オフィスにおける冷房温度、3割の企業で26℃を推奨
自社で推奨する夏場のオフィスにおける冷房温度について尋ねたところ、「26℃」とする企業が30.7%とトップとなった。次いで「27℃」(22.9%)、「25℃」(18.7%)、「28℃」(15.1%)が並び、25~28℃を推奨する企業が9割近くにのぼった。また、平均の冷房温度は、26.2℃[1]となった。
規模別、業界別、地域別にみても、大きな差異は表れておらず、概ね平均26℃程度に収まる傾向がみられた。
企業からも「室温を27℃以上28℃未満に保つため、冷房の設定温度は26℃にしている」(金融)や「28℃設定では冷房効果が薄く労働の効率が悪いため、あえて25℃程度にしている」(専門商品小売)といった声があがっている。
まとめ
本アンケートの結果、企業が取り組む節電対策として、「こまめな消灯」や「空調などの温度設定の見直し」など比較的すぐに実施できる対応策に取り組んでいる様子がうかがえた。
そのほか、敷地内での打ち水や植物などを利用した緑のカーテンの設置、働き方を変化させて節電対策を行う企業、電力会社の見直しを行う企業も一定数みられた。
加えて、断熱壁材による暑さ対策や消費電力の少ないGHP(ガス・ヒートポンプエアコン)を利用する企業、自社で太陽光発電を導入する企業も一部である。
また、推奨するオフィスの夏場の冷房温度は平均26.2℃となっており、政府がクールビズで提唱する室温28℃を目安にしつつ、快適な室温となるよう各社調整していた。
エネルギー価格の高騰は、物価上昇を加速させる大きな要因となり、各社各人の対応だけではその負担を吸収できないレベルに近づきつつある。
引き続き節電努力は必要であるが、企業活動や国民生活を営む上で、安定的なエネルギー供給のみならずインフレ圧力の抑制につながる早急なインフラ整備が急がれる。
<調査概要>
※調査期間:2023年7月7日~11日
※調査対象:有効回答企業数は1,277社(インターネット調査)
※調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい