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猛暑でも涼やか!夏着物のおしゃれな着こなし方

2023.07.30

 着物は暑いから夏には向いていない。そんな勘違いをしている方、結構多いのではないでしょうか?実は、着物は素材や着こなしによって、涼やかに着ることができるのです。この夏、着物姿で涼しげに、そして優雅に街を歩いて、周囲の視線をくぎ付けにしましょう。

そもそも夏に着物は暑くないのか?

 もちろんTシャツに短パン姿と比べたら、暑いかもしれませんが、洋服の社交着と比べたらとっても快適です。人は動脈の通っている首、手首、足首の「三つの首」の風通しを良くすると涼しく感じます。着物はこの「三つの首」が空いているでしょう、だから快適なのです。

夏にぴったりな着物とは?

1. 素材

着物といえば、絹、シルク素材が浮かぶと思います。蚕という虫が成虫になる前の蛹(さなぎ)の状態を過ごすために、糸をはいて繭(まゆ)というバリアを作るのですが、絹はその繭から作られます。動けない蚕を守るために、繭は、水分を吸い取り(=吸湿性)、放出する(=放湿性)、臭いを消す(=消臭力)、太陽の紫外線を遮る(=抗紫外線力)、酸化せずに長持ちさせる力(=抗活性酸素力)に優れています。だから、絹で作られる着物は、べとつかず、匂わず、紫外線から肌を守り、またお肌を若々しく保ってくれます。さらに、繭に含まれているタンパク質は人の成分に近いので、肌へのなじみがよく、ストレスを感じないため、気持ちが穏やかになれるのです。

麻素材の夏着物も人気です。絹は高価なので、庶民の着物には江戸時代までは主に麻が用いられてきました。繊維が硬くパリッとして軽く、肌に密着せずべとつきません。また吸湿性、放湿性にもすぐれ、汗を吸収し蒸発させて熱を奪っていくので涼しく感じます。しかも汚れをはじき丈夫です。注意したい点は、シワになりやすいこと。お手入れは、着物ハンガーにかけて浴室に吊り、霧吹きで水をたっぷりかけて、汚れと汗を流し落とすとよいでしょう。これである程度シワを伸ばすこともできます。

また、浴衣は木綿地が多いです。木綿も吸湿性、放湿性にすぐれ、熱を逃がしてくれるので、涼しく感じます。安価で丈夫なので、優しく扱ってやれば洗濯機で洗うことができます。やはり、縮みやすくシワになりやすいことは知っておきたいです。摩擦に強いので裾さばきが滑らかとはいえない点もあります。

2. 色

かつて夏物の着物や浴衣の主流は藍染による青色でした。藍という植物染料は虫を寄せつけない(=防虫)、肌にやさしく汗疹もなどの炎症になりにくい(=抗菌)、匂わない(=抗臭)という効力にすぐれているからです。そして藍染には、生地を強くする、また火に強い効果もあるので、浴衣の染料として特に好まれました。また藍染の染料は太陽光線を浴びるときらきらと紫色に変化して輝きます。紫への変化も光の強さによって紫紺から濃紺へとさまざま。昨今は多様な色の着物や浴衣が見られますが、藍染の豊かな色に勝るものはないと思います。

3. 柄

露草、朝顔、沙羅双樹(さらそうじゅ)など、夏の早朝に咲く花が涼感を感じさせてくれるのでおすすめです。さわやかな秋を感じさせてくれる秋の七草もいいですね。意外に人気なのが、雪の結晶をイメージさせる雪輪(ゆきわ)。雪は冷たく、涼しさを感じられるからでしょう。また雪が降り積もるときには、世間は静まります。それで心を静めるという意味もあります。暑くても雪輪柄で心は涼しく、穏やかにというわけです。

意外と知らない「着物」と「浴衣」の違い

そもそも着物とは、和の装い全般を指します。とすれば、浴衣も大きく捉えれば、着物の一種となります。実際、浴衣も夏用の着物も仕立て方は同じ。ただ、浴衣は元は名前のとおり浴室で着る衣だったのです。江戸時代まで、日本の風呂は主に蒸し風呂、浴室でやけどや怪我をしないように着ていた衣が浴衣です。一方で夏着物とは外出着、お出かけ着として着ていたスタイルを指していて、起源が異なるのです。

浴衣は、風呂の中で着るものだから、浴衣の下には何もまとわない、履くものも素足に下駄くらい、というのが本来の着方でした。風呂が湯船形式に変わっていくと、浴衣は入浴着から風呂上り着へと変化していきます。といっても、風呂上りから家に帰る道中、そして寝間着といった場面で用いる衣。だから簡単な着こなしで、帯は半幅(はんはば)か兵児帯(へこおび)、着物の下は下着、足は素足、持ち物は風呂敷か巾着、となります。

夏着物の方は、いろんなところに出かける、式典にでることもあるので、着物の下には着物が汚れないように、もう一枚長襦袢(ながじゅばん)を着ますし、素足で他人の家屋に上がるのは失礼なので、足袋をつけて、下駄より格の高い草履を履きます。帯も普段使いの半幅帯、名古屋帯はもちろん、祝い事が重なるように二重太鼓になる袋帯(ふくろおび)を締めることもあります。

着物や浴衣を美しく着こなす方法

色数が多いとうるさく感じるので、コーデイネートの色数は少なめに。暑いからといって衿元を開けすぎるとだらしなく見えてしまいます。コーリンベルトや衣紋(えもん)抜きを用いた着付けで衿元の形をしっかりキープしましょう。

夏物は薄い生地を用いるので、着物の下のシルエットが透けて見えがちです。特に背中側は着物の生地が重なることがないので、下着まで透けていないか確認しましょう。透けそうだったら居敷当て(いしきあて)か裾除け(すそよけ)を用いましょう。

文/池田 訓之(いけだ のりゆき)

株式会社和想 代表取締役社長。1962年京都に生まれる。1985年同志社大学法学部卒業。インド独立の父である弁護士マハトマ・ガンジーに憧れ、大学卒業後、弁護士を目指して10年間司法試験にチャレンジするも夢かなわず。33歳の時、家業の呉服店を継いだ友人から声をかけられたのをきっかけに、全く縁のなかった着物の道へ。着物と向き合うなかで、着物業界のガンジーになることを決意する。10年間勤務した後、2005年鳥取市にて独立、株式会社和想(屋号 和想館)を設立。現在は鳥取・島根にて5店舗の和想館&Cafe186を展開。メディア出演や講演会を通じて、日本の「和の心」の伝道をライフワークとして続けている。著書に「君よ知るや着物の国」(幻冬舎)。

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