ボードゲームは小児の数学的スキルを高める
夜に家族でボードゲームをして過ごす時間は、単に楽しいだけではないようだ。モノポリーやオセロなどのボードゲームは、幼児期の数学的スキルの育成にも役立つ可能性が、新たな研究で示された。
チリ・カトリック大学のJaime Balladares氏らによる研究で、詳細は「Early Years」に2023年7月6日掲載された。
ボードゲームの特徴は、コマの数や位置、動かし方などに関してルールが決められており、その動きや位置の変化がゲームの進行や結果に影響を与えることだ。
そのため、小児期から成人期まで、目的と年齢層に応じてレベルを調整して、いくつかのプレイパターンを作ることも可能だ。過去の研究では、ボードゲームが小児の読み書きや読解力を向上させる可能性が報告されるなど、教育面で有効なことが示唆されている。
しかし、特に、プリスクール(幼稚園前)や保育園・幼稚園でのボードゲームの使用が小児にもたらす効果について定量的に分析した研究結果は報告されていない。
Balladares氏らは論文データベースから、2000年以降に発表された、3〜9歳を対象にボードゲームが認知機能に及ぼす効果を検討した研究を19本抽出し、メタアナリシスを実施した。いずれの研究もボードゲームを介入手段としており、一つの研究を除き全ての研究がボードゲームと数学的スキルとの関係を探ることに焦点を当てていた。
介入は、教師やセラピスト、訓練を受けた親の指導の下で、平均して1回当たり20分を週に2回、1カ月半にわたって実施されていた。
一部の研究では、介入に使ったボードゲームが数学的スキルに焦点を当てたものであるかどうかで対象者を2群に分類していた。
また、別の研究では、全ての対象者が数学的スキルに焦点を当てたボードゲームを行っていたものの、全員が同じ種類のゲームを割り当てられていたわけではなかった。
対象者は、介入前と介入後に、数を数える能力や足し算・引き算の能力などの数学的スキルの評価を受けた。
その結果、介入後には介入前と比べて、分析した課題の52%以上で小児の数学的スキルが有意に向上していることが明らかになった。
また、ボードゲームによる介入を受けた群と受けていない対照群とで数学的スキルを比較した研究結果の32%で、ボードゲームがスキル向上に有益であると示されていたことが判明した。
こうした結果を受けてBalladares氏は、「ボードゲームは幼児の数学的スキルを向上させる。ボードゲームをすることは、基礎的な数学的スキルとより高度な数学的スキルに潜在的な影響をもたらす方法と見なすことができる。ボードゲームは、数学的スキルや他の領域に関連した学習目標を含むように簡単にカスタマイズすることができる」と話す。
Balladares氏はさらに、「今後の研究では、このようなボードゲームが数学的スキル以外の認知能力や発達能力に及ぼす影響について調べる必要がある」と語る。
また、「ゲームの複雑さや教育目的のためのより良質なゲームをこれまで以上に考えだす必要性に鑑みると、ボードゲームによる介入の開発と評価のための興味深い領域が、今後数年間で、拡大していくはずだ」と話している。(HealthDay News 2023年7月10日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/09575146.2023.2218598
Press Release
https://newsroom.taylorandfrancisgroup.com/board-games-are-boosting-math-ability-in-young-children/
構成/DIME編集部