Peachの「旅くじ」といえば、2021年からPeach航空が不定期に発売しているキャンペーン商品で、定額を支払ってガチャ等をひくと「どこか」への航空券購入に使えるコードが当たるというもの。
SNSで話題となり、その後もさまざまなコラボレーションを展開。今回のコラボレーション相手は、リラクゼーションドリンクブランド「CHILL OUT(チルアウト)」! 「チルする旅くじ」という名称で、2023年7月14日より東京都杉並区の「小杉湯」と大阪市の「入船温泉」にカプセル型自動販売機が設置されています。
東京のサウナーである筆者にとって小杉湯はおなじみの銭湯ですが、入船温泉は未踏の地。ちょうど大阪を訪ねる予定があったので、せっかくなので入船温泉にお邪魔することにしました。
レトロな外観、モダンな内観に驚きの「入船温泉」
入船温泉があるのは、大阪市の西成区。JR新今宮駅東口から徒歩3分、南海新今宮駅から徒歩4分、OsakaMetoro御堂筋線・動物園前駅から徒歩3分という、アクセス抜群の場所です。
大通りから少しだけ入ったところに位置する入船温泉は歴史を感じさせるレトロな外観。「チルする旅くじ」ののれんやのぼりが存在感抜群です。
一歩中に入るとレトロな下駄箱(かわいい)や入場券を購入する設備が。銭湯の入浴料は490円、サウナセットは+300円の790円、タオルも借りると+200円です。良心的な価格です。この機械は現金のみですが、フロントでは各種キャッシュレス決済にも対応しています。
ここまでは普通の銭湯……という感じですが、一歩中に入って驚くのは、そのモダンな内観。ウッド調で統一された明るくおしゃれなインテリアに、大きくとられたガラスの引き戸や窓が、入りやすさを後押ししてくれます。そして右手に「チルする旅くじ」の自販機も発見。
中に入ると、まるでサウナ施設さながらの居心地の良い明るい休憩処が広がり、待ち合わせだけでなく、ちょっとした打ち合わせやPC作業にも使える電源付きの小上がりまで。軽食やオロポ、ビール等も楽しむことができます。
なんだここは……本当に銭湯なのか……。入船温泉のことをもっと詳しく知りたくなり、株式会社入船温泉の代表取締役 土手下順也さんにお話を伺いました。
大きなストーブにオートロウリュ、水深115cmの軟水の水風呂…
株式会社入船温泉 代表取締役 土手下順也さん
69年の歴史がある入船温泉がリニューアルしたのは、2022年8月のこと。
「サウナのない銭湯でやってきましたが、経営も良くなくなってきたのと、昨今のサウナブームを鑑みて、思い切ってサウナを作ることにしました」と土手下さん。
入船温泉はインバウンドの影響もあり、バックパッカーの人が多く立ち寄っていたこともあり、外国の人に日本の良い文化をアピールすべく、フロントや休憩処は格子天井をあしらったり、ちょっとした小庭が見えるようにしたり、和の雰囲気を全面に押し出しているのだそう。
「サウナを作るのは初めてだったので、DESSEさんやいろいろな方にお話をお伺いして、どういうサウナがいいのか教えていただきながらリニューアルしました。
銭湯ではなかなか見ない、サウナ施設に置いているようなメトスのZIEL(ジール)というサウナストーブを置いているんですが、すごくパワフルで、オートロウリュもしっかりできるものです。
1日に3、4回はアウフグース(※)を提供していて、ストーブの温度はそこまで高くないのですが、とにかく湿度高いぶん体感温度が高く、皆さん『ストロングや』『5分入ってられへん』とおっしゃいます。
女性のほうは少しストーブの温度を低めに設定しているのですが、女性だからというわけではなく、お客さんの数が男性より女性のほうが少ないので、ドアの開閉の回数が少なく、温度が上がりやすいためです。なので、ストーブは低く設定しているものの、アウフグースに入ったスタッフは『女性のほうが熱い』と言っていますね。
あとは、従来から水風呂はあったものの、もっと深くしたいと考えました。しかし下を掘るのは難しいので、上に上げる形で深さ115cmにしました。今までは普通の水だったのですが、装置を入れて軟水の水風呂にしたことで『水風呂がいい』とおっしゃってくれるお客様が増えました」
※アウフグース=熱したサウナストーンにアロマ水などをかけて蒸気を発生させ、それを仰ぐことで入浴者に熱い蒸気を送る
ここまでこだわりを詰め込んでサウナを設置し、サウナ代は300円。近年の燃料費の高騰も踏まえ、大丈夫なのでしょうか?
「大阪の銭湯業界のサウナで一番高いのは300円なんですね。一応、自分のこだわりを詰め込んだサウナですが、初めてでどれだけお客さんが来てくれるかという不安もあり、300円より上にするという勇気が出なくて、かなりの決断で300円に設定しました。ガス代や電気代はえげつないことになっています(笑)」(土手下さん)
個人的には良い銭湯サウナは長く続いてほしいので、多少の値上げはしてもいいのでは……と思いますが、さまざまなお客さんが来る公共浴場という性質上、簡単に値上げもしづらいのだろうなというジレンマを感じとりました。
「チルする旅くじ」はしょっぱなから活況!
「幸いにも関空から一本で、駅から近い立地にあり、Peachさんに乗るにもアクセスが良いということで、“チルする旅くじ”を置いていただくことになりました。
この自動販売機を置く場所を考えたときに、小庭のスペースの窓を空けて置いたらちょうどよくて。置くと、みなさんけっこう挑戦されるんですね。まだ2日(※)で20人以上の方がひかれているので、8月13日まで補充しないともたなさそうです。今後も積極的に、そういったみなさんに楽しんでいただけるようなコラボレーションなどやっていきたいです」(土手下さん)※取材日は開始2日目の7月16日
筆者は「チルする旅くじ」がどんな感じで銭湯に設置されているのか、サウナついでに見に来たつもりだでしたが、ゆったりした雰囲気の休憩処でリラックスしながらお話を伺ううちに、引いてみたい気持ちになり、自腹で挑戦することに。
買い方は、自動販売機に提示されたQRコードを読み取り、5000円のPaypay決済を済ませるとボタンが押せるようになり、押すとカプセルが転がり出てきます。
カプセルを開封すると、CHILL OUTのステッカー、Peach航空の缶バッジと共に、行先を書いた紙が登場。
筆者がひいた旅くじのは長崎。大当たりだと20000円相当のピーチポイントに極上のチル体験チケット付きのカプセルのようなので、今回のカプセルは「普通」。でもいいんです、強制的に行先が決まるって面白いじゃないの。長崎も8年ほど行っていないし、いいかも……。
使い方は、Peachの公式サイトに会員登録し、紙に書かれたコードを記入すると、決められた行先までの片道航空券分のPeachポイント(多くが6000ポイント)が付与され、その路線でしか使用できないので注意が必要。
と、そこで自らの失態に気づいてしまいました。「大阪―長崎」路線しか買えないという事実に……。筆者は東京に住んでいるので、使いようがありません。しまった! 大阪のお友達に譲ることにしましょう。
こだわりが詰まったハイクオリティサウナを堪能
気を取り直して、お風呂とサウナを堪能することに。クラシカルな銭湯をベースに、タイルや壁をジャパニーズモダンな雰囲気にアレンジした清潔感のある浴室がとても素敵。
主湯のほか、電気風呂やジェット水流が楽しめるクリニックバスが設置。男性のほうは打たせ湯つきの露天風呂があり、ととのいスペースもあるとか!うらやましい。
そして男女とも定員10名のサウナは、サウナ料金に含まれる専用バスタオルを巻いて入るルールになっています。
土手下さんのお話どおり、サウナ室のサイズ感に対しストーブが大きい! 毎時00分、20分、40分にオートロウリュが発動するため、湿度は充分に保たれています。そして嬉しいのが座面の広さ。銭湯サウナは狭めなことが多いですが、あぐらもかけるたっぷりした広さがうれしいですね。
ガチなサウナーの方も満足しそうな高めの温度で充分にあたたまったら、出てすぐに水風呂というナイス導線。さすがわざわざ導入しただけあって、軟水の肌当たりのやさしさが、水の冷たさを和らげてくれます。
女性風呂は露天のととのいスペースはありませんが、脱衣所に休憩用の椅子が設置されており、正面には首振りサーキュレーターが複数台設置されているので、ランダムに送られてくる風が心地良い。外気浴じゃなくても快適な休憩ができる心遣いが沁みます。
アウフグースはタイミングが悪く体験できませんでしたが、ノンストレスのサウナ浴に銭湯ならではの大きな湯船。タオル持参なら790円で楽しめるとは、自宅の近所にあったらいいのに…!と思わずにはいられませんでした。
実は入船温泉は銭湯には珍しく、朝の6時からオープン。大阪に旅行予定のある方、大阪近郊在住のサウナーの方、ぜひ一度足を運ぶ価値ありですよ!8月13日まで開催中の「チルする旅くじ」をひく場合は、大阪発の便なので違う土地の方はお気をつけくださいね。
・入船温泉
住所:大阪府大阪市西成区萩之茶屋1-6-3
TEL:06-6641-2681
営業時間:
平日・6:00~23:00(最終受付22:30)
土日・6:00~24:00(最終受付23:30)
定休日:月曜
※年末年始は特別営業
公式サイト:https://irihune.co.jp/
取材・文/安念美和子