消費者(個人)は、事業者(会社、店舗など)に比べて経済力や情報量などに劣るため、事業者から搾取されてしまうケースがよく見られます。
事業者との取引において、消費者を保護するために制定されたのが「消費者契約法」です。事業者による搾取から身を守るため、消費者契約法のルールを正しく理解しておきましょう。
本記事では消費者契約法について、消費者(個人)が知っておくべきポイントをまとめました。
1. 消費者契約法とは
消費者契約法とは、消費者と事業者の間で締結する契約(=消費者契約)について、消費者の利益を擁護することを目的とした法律です。
消費者:個人(事業者として契約を締結する場合を除く)
事業者:法人その他の団体、および事業者として契約を締結する個人
消費者は事業者に比べて、持っている情報の質・量や交渉力に劣るのが通常です。そのため契約自由の原則を貫くと、消費者が事業者に搾取されてしまうリスクが大きいと考えられます。
そこで消費者契約法では、主に以下の2つのルールを設け、消費者契約における消費者の利益保護を図っています。
①不当勧誘時の契約取消し
②不当条項の無効
2. 消費者契約法のポイント①|不当勧誘時の契約取消し
消費者契約法の1つ目のポイントは、事業者による不当な勧誘が行われた場合に、消費者による契約の取消しが認められている点です。
具体的には、事業者によって以下の勧誘行為がなされた場合に、消費者は契約を取り消すことができます(消費者契約法4条)。
・契約上の重要な事項について、事実と異なる説明がなされた
・不確実な事項について「確実である」と説明された
・消費者に不利な情報を告げなかった
・退去を求められたにもかかわらず、消費者の自宅や勤務先などに居座った
・退去しようとする消費者を強引に引き留めた
・勧誘することを告げずに、退去困難な場所へ同行して勧誘した
・威迫する言動を用いて、契約締結について他人に相談しようとする消費者を妨害した
・将来の不安を煽るような勧誘をした
・恋愛感情など、好意の感情を不当に利用して勧誘した(デート商法)
・消費者の判断能力の低下を利用して、不安を煽るような勧誘をした
・霊感など合理的に実証困難な知見を基に、不安を煽るような勧誘をした(霊感商法)
・契約締結前にサービスを提供した上で、断ろうとする消費者に損失補償を要求した
・必要な量や回数に比べて、あまりにも多すぎる量や回数の契約をさせた(過量契約)
3. 消費者契約法のポイント②|不当条項の無効
消費者契約法の2つ目のポイントは、消費者契約における条項のうち、消費者の利益を一方的に害する条項が無効となる点です。
具体的には、以下の消費者契約の条項が無効となります(消費者契約法8条~10条)。
・事業者の損害賠償責任を全部免除する条項、またはその責任の有無を決定する権限を事業者に与える条項
・事業者の故意または重大な過失がある場合につき、事業者の損害賠償責任を一部免除する条項、またはその責任の限度を決定する権限を事業者に与える条項
・事業者の損害賠償責任を一部免除する条項のうち、故意または重大な過失がある場合に限って適用されることが明記されていないもの
・債務不履行に伴う消費者の解除権を放棄させ、またはその解除権の有無を決定する権限を事業者に付与する条項
・消費者が後見開始、保佐開始、補助開始の審判を受けたことのみを理由として、事業者に解除権を付与する条項(消費者が契約の目的となるものを提供する場合を除く)
・消費者の損害賠償額を予定し、または違約金を定める条項のうち、事業者の平均的な損害額を超える部分(金銭債務の支払遅延については、年14.6%を超える部分)
・上記のほか、法律の規定よりも消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの
4. 消費者被害の主な相談先
消費者契約に関して、事業者からの搾取に遭ってしまったと感じた方は、お近くの消費生活センターや弁護士会へご相談ください。
参考:全国の消費生活センター等|独立行政法人国民生活センター
参考:法律相談|日本弁護士連合会
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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