3. フリーランス保護新法に基づく業務委託事業者の義務
フリーランス保護新法に基づき、フリーランス(特定業務受託者)との取引において、業務委託事業者は主に以下の義務を負います。
<すべての業務委託事業者が負う義務>
①契約事項の明示(法3条)
フリーランスに対して、業務の内容・報酬の額・支払期日などの事項を書面または電子データで明示しなければなりません。
<特定業務委託事業者が負う義務>
②報酬の支払期日(法4条)
フリーランスの報酬は、成果物の給付または役務の提供を受けた日から起算して60日以内に、かつできる限り短い期間内に支払う必要があります。
ただし、特定業務委託事業者が他の事業者から受注した業務をフリーランスに再委託した場合は、元委託業務の対価の支払期日から起算して30日以内に、かつできる限り短い期間内に支払えば足ります。
③発注者の遵守事項(法5条)
一定期間(具体的な期間は未定)以上にわたってフリーランスに業務委託をする特定業務委託事業者は、以下の行為を禁止されます。
・特定受託事業者の責に帰すべき事由がないのに、給付の受領を拒むこと
・特定受託事業者の責に帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること
・特定受託事業者の責に帰すべき事由がないのに、給付を受けた成果物を返品すること
・通常支払われる対価に比べて、著しく低い報酬の額を不当に定めること
・正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、または役務を強制して利用させること
④募集情報の的確な表示(法12条)
特定業務委託事業者が業務委託先のフリーランスを募集する際には、募集に関する情報について、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはなりません。
⑤妊娠・出産・育児・介護に対する配慮(法13条)
一定期間(具体的な期間は未定)以上にわたってフリーランスに業務委託をする特定業務委託事業者は、フリーランスからの申出に応じて、妊娠・出産・育児・介護と業務を両立できるように、状況に応じて必要な配慮をする義務を負います。
⑥ハラスメントに対する規制(法14条)
特定業務委託事業者は、フリーランスに対してセクハラ・マタハラ・パワハラが行われないように、ハラスメント防止体制の整備など必要な措置を講じなければなりません。
また、フリーランスがハラスメントについて相談したことなどを理由に、業務委託契約の解除その他の不利益な取り扱いをすることは禁止されます。
業務委託事業者(特定業務委託事業者)が上記の規制に違反した場合、公正取引委員会または厚生労働大臣による行政処分などの対象となります。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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