2010年代、我々日本人を含む人類は「チケット転売問題」に苛まれていた。
需要のあるコンサートやイベントのチケットを買い占め、それをネットで転売する。正規価格でチケットを入手することは困難になり、本当にコンサートを観に行きたい人は何倍ものカネを払って購入するしかなくなった。
チケット転売を防ぐにはどうすればいいか? この話題で一般人から知識人まで喧々諤々の議論を繰り広げていた時期が確かに存在した。
では、今はどのような状況になっているのか? チケット転売対策はどのように講じられ、どのように実施されているのだろうか?
高齢者も電子チケットで
筆者は先日、歌手のSさんのコンサートを観に行った。
このSさんは、筆者が生まれるかなり前から歌手として活動している。今回は小学生以来の友人も連れてコンサートへ足を運んだのだが、チケットはチケットぴあで購入した。
チケットぴあなど、筆者は何年も使ってなかった。が、それ故にチケットぴあの進化を全身で感じることができた。
チケットぴあの公式プラットフォームで購入したチケットは、『Cloak』というチケット分配サービスと紐付けされる。
ここで言う「分配」とは、コンサートの同行者に電子チケットを分ける行為を指す。CloakはメールとLINEに連携し、徹頭徹尾オンライン上で(つまり一度も紙に出力することなく)購入したチケットを分配することができる。
ただし、どうせ同じコンサートに行くのならわざわざ分配する必要もない。購入者が全員分の電子チケットを最後まで持っておく、ということも可能だ。
チケットの電子化は、当然ながら購入者がスマホを所持していることを前提にしている。これではスマホを使い慣れた40代以下の世代はともかく、高齢者には難しいのでは……というのは偏見である。
というのも、Sさんのファンは筆者から見て年配の方が多いのだが(失礼!)、それでもCloakと紐付けた電子チケットを会場入口で何事もなく提示しているではないか!
これはまさに「時代の進化」を象徴する光景ではないか?
令和の幕開けに施行された新法
チケット不正転売防止法が施行されたのは令和元年(2019年)6月14日である。
令和年間は2019年5月1日から始まった。この新法は、新時代のテクノロジーを鑑みた画期的な法律と言ってもいいだろう。
「チケット不正転売禁止法は、国内で行われる映画、音楽、舞踊等の芸術・芸能やスポーツイベント等のチケットのうち、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が明示された座席指定等がされたチケットの不正転売等を禁止する法律です」
(COLUMN11 「チケット不正転売禁止法」について 消費者庁公式サイトより)
ここで注目すべきは「興行主の同意のない有償譲渡を禁止する」という部分。正規価格で購入したチケットを法外な値段で転売する行為はまさにそれだが、たとえば「スケジュールの都合で行けなくなったコンサートのチケットを買値と同額で転売する」という行為はどうだろうか?
もちろん、これはやむを得ない事情の行いである。故にチケットぴあを含むチケット販売業者は「リセール」の仕組みの整備に注力するようになった。
Cloakも例外ではない。リセール成立時に申込手数料のチケット代金の10%及び口座送金事務手数料の275円が引かれる仕組みだが、それでも買値に近い価格で誰かが引き取ってくれるのだ。
チケット不正転売防止法により、オンラインチケットサービスの機能がより充実するようになったということでもある。