感情表現としてよく使われる『滾る』は、漢字にすると読みにくい言葉です。読み方が分かっても、どのような状態を表すのかいまいち分からない人もいるでしょう。読み方や意味、関連する類語について解説します。他の難読漢字も見ていきましょう。
「滾る」の読み方と意味
『滾る』は、強い感情を表す言葉としてよく使われます。まずは読み方と、意味について確認しましょう。使うときの注意点も解説します。
「滾る」の読み方
『滾る』は『たぎる』と読みます。
『滾』には『こん』という読み方もあり、『滾々(こんこん)と湧き出る水』が主な使用例です。 湧き出る水を表す『こんこん』は、まれに『渾渾』『混混』と表記されることもあります。
明治から昭和初期の文学では『滾す(こぼす)』という用例も散見されますが、現代では『零す』が一般的です。まれに、『翻す(こぼす)』『溢す(こぼす)』も使われます。現代では、『滾』を『こぼす』と読むことはないようです。
「滾る」の意味
『滾る』には、いくつかの意味があります。漢字は『激流』を表しており、『激しく逆巻いて水が流れ、波立つ様子』がもともとの意味です。
水が逆巻く様子、激しく波立つ様子から転じて、『水が沸騰する様子』や『激しい怒りや感情』も表します。
例えば、『煮え滾る(にえたぎる)』は、沸騰して沸き立っている水を表す言葉です。『鍋の湯が煮え滾っている』のように使われます。
『血が滾る(ちがたぎる)』『闘志が滾る(とうしがたぎる)』は、『血が沸騰するかのような激情』や『闘志が沸き立つ様子』を比喩的に表現する言葉です。
現代では、『滾る』を『感情が高ぶる』意で使っているケースが多く、必ずしも怒りや沸騰を表すわけではありません。 興奮や、抑えきれない感情を表すために使われることが多いでしょう。
「滾る」を使う場合の注意点
『滾る』の使い方は、古語と現代では変化しています。古い表現は伝わりにくい可能性があるため、注意が必要です。
例えば、『激流が滾り立つ』『水が滾り落ちる』といった表現は近代文学でよく見られますが、現代では硬い表現を除いてほとんど使用されません。 水が逆巻き波立つ様子を限定的に表現しなければならない状況はほとんどなく、『激流』や『荒れ狂う波』でも想像がつきます。現代語では、ほとんどが比喩表現として使われていると考えた方がよいでしょう。
そのほか、新しい表現として『燃え滾る(もえたぎる)』という言葉も現れています。いくつかの辞書には採用されており、『燃えるように感情が沸き立つ様子』を意味する言葉です。 本来水を意味する漢字であり、誤用とするか正しい表現とするかは専門家でも意見が分かれています。
「滾る」の類語・言い換え表現
滾ると同じように、比喩的に感情を表す言葉はいくつかあります。類語や、滾るの言い換えとして使える言葉の読み方や意味を見ていきましょう。
「漲る」
『漲る』は『みなぎる』と読みます。『水があふれそうな勢いで満ちる様子』を意味する言葉です。
比喩表現として『充満する』『満ちる』様子を表す言葉でもあり、現代では比喩的に使われることが多いでしょう。 『滾る』と似た意味では、『闘志が漲る』という表現があります。
どちらも強い感情を意味しますが、滾るは『抑えきれない激情』、漲るは『感情が満ちてあふれそうな様子』であり、与えるイメージは変わってくるでしょう。
【例文】
- 池には水が漲り、今にもあふれそうだ
- 彼の目には、情熱が漲っている
「沸き立つ」
『沸き立つ(わきたつ)』は、水が煮えて沸騰する様子や、感情が高ぶる様子を意味する言葉です。そのほか、熱狂や興奮も表します。
現代では、大勢の人が熱狂している状況で使われることが多い言葉です。 『沸』という字は『沸る(たぎる)』の当て字に使われるケースもあり、似た意味を持っています。
『沸き立つ心(滾る心)』『闘志が沸き立つ(闘志が滾る)』『湯が沸き立つ(湯が煮え滾る)』のように、多くのケースで『滾る』の言い換えができます。
【例文】
- チームの勝利に、その場にいる全員が沸き立った
- それは、血を沸き立たせるような体験だった
これ読める?夏にまつわる難読漢字
『滾』は水にまつわる漢字ですが、『滾る』は熱い思いや激情を指し、夏のイメージも持つ言葉です。ほかにも、夏にまつわる難読漢字があります。主な言葉の読み方や意味を見ていきましょう。
「鬼灯」
『鬼灯』は『ほおずき』と読みます。ナス科の植物で、提灯のような見た目の果実が特徴的です。お盆には先祖の霊を迎えるために、道しるべとして提灯に似た鬼灯を飾る風習があります。
鬼灯は当て字で、『酸漿』と表記されることもあります。中国語でも、ほおずきの正式名称は酸漿です。
古語では『赤酸漿(かがち)』とも呼ばれ、古代の神話でヤマタノオロチの目を表現する言葉として使われています。
「驟雨」
『驟雨』は『しゅうう』と読みます。意味は、『激しく降り出し、短時間でやむ雨』です。 似た意味を持つ言葉として『夕立(ゆうだち)』『俄雨(にわかあめ)』『村雨(むらさめ)』『通り雨(とおりあめ)』『スコール』などがあります。
多くの場合、夕立・俄雨・通り雨が使われるため、驟雨という言葉を目にする機会は少ないでしょう。『夕立』は、主に夏の夕方に降る雨を指します。
『驟雨』と『俄雨』は同義語で、どちらも気象用語として使われている言葉です。
対流性の雲から発生し、短時間でやむ雨を指し、気象庁では驟雨性のある雨を『俄雨』と定義しています。夕立も驟雨性のある雨に分類され、日本では夏の午後から夕方に発生するケースが多いようです。
構成/編集部