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日産「セレナ e-POWER」に乗って思ったミニバンに求めたい変革と進化

2023.07.23

 2022年に6代目にフルモデルチェンジした日産のミディアムクラスミニバン「セレナ」にe-POWER版が追加された。e-POWERは、日産独自のハイブリッドシステムのことで、エンジンは発電のみに用いられ、その電力でモーターを回しタイヤを駆動する。システムは進化し続けていて、2022年にフルモデルチェンジしたSUV「エクストレイル」では、エンジンが回転するタイミングをクルマ自身が賢く判断し実行して、静粛性の向上を測っている点に感心させられたことがある。

「セレナ」では、新開発のe-POWER専用1.4ℓ3気筒エンジンを搭載している。前輪駆動の設定のみだが、エンジン車には4輪駆動版もある。そのe-POWERが「セレナ」にも搭載され、6月1日現在での集計による受注割合は7割がe-POWERということだ。

■機械として優れているか?★★★3.0(★5つが満点)

「セレナ e-POWER」には、日産自慢の先進運転支援機能の「プロパイロット2」が標準装備されている。ミニバンでは初めてのことだ。2つの先進機能を標準装備しているため、価格にもダイレクトに反映されている。「セレナ e-POWER」が319万8800~479万8200円であるのに対し、エンジン版の「セレナ」は276万8700~326万9200円。価格帯が二極化してしている。こうなると、もはや別のクルマだといえる。

今回、装備と少しのデザインが異なる「LUXION」と「ハイウェイスターV」に御殿場周辺の新東名高速道路と一般道で試乗した。車両本体価格(消費税込み)は、それぞれ479万8200円と368万6100円。「LUXION」で新東名高速道路を走ってみると、昨年「エクストレイル」で感じたe-POWER由来の走行中の格別な静粛性の高さが、残念なことにどの速度域でも感じることができなかった。

モーターで走行中に、せっかくエンジンが停止中であっても、タイヤと路面が擦れるノイズや風切り音などが、広い車内に入り込んで反響してしまっているのだ。加えて、エンジンが回転を始めると、そのノイズもはっきりと伝わってくる。「エクストレイル」では徹底してボディーとシャシー側からも遮音対策が施されていたのに対し「セレナ」はミニバンという“箱”なので、比較対象にならないのだろう。

 あちこちの開口部が大きく、スライドドアという難物も備わっている。「セレナ」は「エクストレイル」より車内空間の容積が大きなことも、さまざまなノイズを反響させてしまっている原因になっているようだ。ミニバンというカテゴリーのクルマが宿命的に持つ限界なのかもしれない。

 また、新東名高速での「プロパイロット2.0」が起動する頻度が少なかった。他のクルマで試した時はそんなことはなく、もっと使いやすかった印象を持っていたのだが違っていた。そして、その表示もわかりにくかった。起動可能状態にないことをドライバーに伝えるために、メーターパネル内部に2行にわたる文章で伝えられるのが煩わしい。

OKな時、ダメな時、いずれもオーナーとなって使い慣れてくると、これでは余計に煩わしく感じるはずだ。色を変えることやシンプルなアイコンなどで済ませられないのだろうか。すぐに作動不可能な状態に戻ってしまうこともあって、ドライバーインターフェイスが再考される必要も感じた。

■商品として魅力的か?★★★3.0(★5つが満点)

 シンプルかつモダンで癖のないインテリアデザインは最近の日産流で印象が良い。特にメーターパネル、センターマルチモニターパネルなどの情報の表示がクリアで見やすい。かといってデジタル表示を推し進め過ぎることなく、エアコンの温度設定などには円形の物理ダイヤルが残されていて、安心する人も少なくないだろう。

 シフトレバーがなくなり、センターコンソールに設けられたパネルに横並びのプッシュボタンでギアポジションを選択する。タッチパネルではなく、ストロークのある“物理ボタン”だ。

 レバーが無くなったことによって、運転席と助手席の間には広いスペースが生まれた。ミニバンという、スペースが第一に求められる来るクルマにとって、これはうれしい。しかし、シフトレバーがなくなったことによって獲得できた、せっかくの空間を活かし切れていない。

 シートが前後、左右(2列目)にスライドして多彩に使えるようになっているが、それらで本当に快適に乗れるのかどうかわからない。2列目中央シートが前方にスライドして運転席と助手席の間に収まる「スマートセンターマルチシート」なるものが考案され、装備されていて、試してみたが中途半端な印象を拭えなかった。

 そもそも、このボディサイズで7人、8人乗りとして企画されていることが机上の空論そのもので無理があるのだ。2列目や3列目に3人座るとなったら、ビッタリと隣の人間にくっ付かなければならない。荷物だって大して載らなくなる。そんな窮屈な思いをさせてしまうことになるのだから、乗せる方も乗せられる方も嫌だろう。

 毎日、毎回、必ず7人乗せなければならないのだったら大きなミニバンを選ぶべきだし、ごくごく稀に7人乗せることもあるというぐらいならば、その時にはラージサイズのミニバンをレンタカーなりカーシェアリングで利用すればいいだけのことだ。

 そして、少子化時代でもあるのだから、この「セレナ」のようなミディアムサイズの3列シートは不要だろう。外せるわけでもなく、邪魔なだけだ。資料を見ていたら、その一番最後に「マルチベッド」という2列仕様を発見した。防水シートが標準装備と好都合だ。ただし、407万~469万9200円(エンジン車365万9700~428万2300円)と、なぜか高価だ。2列仕様だけでなく、趣味や車中泊などのための1列仕様があってもいい。

 ミニバンユーザーの中には、日常的にベビーカーを乗せたり下ろしたりしている人も少なくないだろう。そういうユーザーには、テールゲートが大き過ぎて、クルマの後ろをかなり空けないと積み下ろしできない点がとても不便だ。テールゲートを左右や上下に分割するとか、何かこれまでと違ったアプローチが採られても良いのではないか。

 リアガラスだけを開閉できるようになってもいるのだが、手が届かない荷物も出てくる。新しいと呼べるのはe-POWERとプロパイロット2.0の新規採用だけで、他は従来のミニバン像から踏み出していなかった。ミニバンユーザーがクルマをどう使って、何に不満に感じているのか、今までとは異なった方法で調査をやり直すところから開発したほうがいいのではないだろうか。クルマとして、または新商品として、その開発思想に感心させられたり、アイデアに唸らされたりするような、心を踊らされることがとても少なかった。

 資料やカタログを眺めてみても、グレードや仕様、オプションなどが夥しく、複雑に入り組んでいる。「aというオプションを装備したいが、それはBというグレードにしか設定されていない」という不満はデジタルを活用すれば、“自分仕様”を発注できるように解消できるはずだ。フォルクスワーゲン社は数年前からドイツとオーストリア国内からの注文で実現しているので難しくないはずだ。

 日産のミニバンに限ったことではないけれども、ミニバンはその売り方も含めて、何か大きな変革のようなものが求められているのではないだろうか。ミニバンを必要としていない筆者のような者だからこそ、余計に期待してしまうのかもしれない。

■関連情報
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/serena.html

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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