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支払いの仕組みを超えた「デジタルウォレット」が注目される理由

2023.07.27

普段からXX PayやXX Walletといった決済サービスを活用している読者も多いだろう。今後ますますデジタル上での経済活動は活発になり、サービスも進化して個人を識別、認証する機能や個人情報を管理する仕組みも組み込まれていくはずだ。

ビジネスだけではなく、国や人々の未来を考えるうえでも重要なキーワードとなる次世代の「デジタルウォレット」とはどのようなものなのだろうか。本稿で考察したい。

デジタルウォレットとは?

デジタルウォレットとは、今の世の中にある決済・お金管理機能としての財布を超えた概念だ。貴方であること(マイナンバーや免許証など)の認証や貴方が持っている資産や貴方の個人を特定し得る情報、その全てをデジタルで一元管理・保護できるサービスを指す。

「なぜ、今デジタルウォレットについて議論されるべきなのか?」を理解することで、デジタルウォレットがもたらす新たな世界観をより深く理解することが出来る。加えて、「明日からの仕事や日常生活で具体的に何を意識したらいいの?」という点に落とし込んで理解することで、大きなトレンドシフトに関与していくことが出来るだろう。

財布を超えたデジタルウォレットの可能性が言及される背景とは?

デジタルウォレットの可能性の背景として、デジタル化の進展により、社会の統治のあり方が変化していることが挙げられる。人・企業・ブランド・行政など、あらゆる関係におけるコントロールの所在が変わってきていることは、「アクセンチュア ライフトレンド 2023」の全体テーマ「コントロールとパワー」でも解説されている。

以下で、テクノロジーの進展に伴う国家、企業、生活者の関係の変化を見てみよう。

「国家」から「国家+巨大テクノロジー企業」へ、
そして「新たなデジタル国家統治+信頼され選ばれ続ける企業統治モデル+Web3的な非中央主権的統治(自己統治)」へ

デジタル化の進展以前は、国家が社会統治することが当然とみなされてきた。

その後、デジタル化の進展によって生活が多様化し、生活者がブランドや企業に求めるニーズも多様化した結果、生活者起点でのサービスが求められるようになった。伝統企業も社内機構を変革続ける中で、マクロでみるとこの戦いの勝者は情報を大量に集めることに成功した巨大テクノロジー企業だった。このため、生活者は巨大テクノロジー企業のコントロールする社会に参加することになった。

近年では、国家側も新たなプライバシー規制など生活者起点でのルール整備を強化してきており、マイナンバーの普及策など、デジタル国家へのシフトを通じて新しいコントロールの在り方を社会に示そうとする動きが広がりつつある。

また、生活者の中にも巨大テクノロジー企業への依存に対する懸念が広がり始めている。国にも特定企業にも依存しない非中央集権的なWeb3の世界もNFTアートなどで代表されるように社会に登場してきており、今後、生活者自身、または、その集団が自らを統治する仕組みとして自己統治を形成する可能性がある。

この自己統治に影響を受けながら、これからの企業統治の可能性として、生活者から積極的に信頼を勝ち得たプレイヤーが顧客情報のアクセスを許され、生活者とともに社会統治に関わるモデルが広がるだろう。

「私」というアイデンティティ・存在証明の持ち方はどう変わるか?

複数の社会統治のあり方が併存する社会の中で、「私」というアイデンティティ・存在証明の持ち方や、資産や個人情報の持ち方も変化を余儀なくされている。既に、SNSやゲームの中で、当たり前に複数の自分(アカウント)を使い分けるスタイルは日本社会の若者を中心に日常シーンに組み込まれている。野放図に生まれた「私」の使い分けから、今後、リスク面も考慮した一定のルールに基づく「私」や「資産情報」「開示情報」の使い分けへと徐々に進化していくものだろう。

別の見方をすると、シンプルに1つの「私」を中心として、国家やテクノロジー企業が多くをコントロールできた時代が終わりを迎えつつある中で、生活者として「今回、どういう自分を使うか」「自分は何と接点を持ちたいのか」「どこまでの個人情報を開示して付き合うか」が問われるようになるだろう。

企業にもスタンスの変化が求められる

これら未来の生活者と向き合う企業としては、今まで取得できていた生活者の情報が当然使い続けられるということはなく、いかに“生活者に情報開示してもらうか”というスタンスにシフトして、新たな体験や提供価値を磨き上げることが必要だ。更に、生活者に継続して利用してもらえない限り、深い顧客理解は得られないため、人々の日常や生活に今まで以上に寄り添った存在へと企業自身が進化していくことが求められるようになるだろう。未来においては、個人の情報を得るために、企業が生活者からの信用を蓄積していくような発想が求められる。

また、これらの複数のアイデンティティ(新しいアイデンティティの在り方?)が台頭するにあたって、仮想通貨、NFTなどといった技術進化によっての個人情報をトークンとして個人が管理できる仕組みも整備され始めていることも、このトレンドを支えている。

 “私”や“資産”“開示情報”の使い分けの具体的なイメージは?

個人が複数のアイデンティティをもち、個人でそれを管理するとはどういうことだろうか。デジタルウォレットで管理される情報は、リセットしてもいい“私”と、してはいけない・出来ない“私”という真実性への距離感で3つのレイヤーに分化が進んでいくと考えている。どこまでの情報を開示するかも基本このレイヤーに応じて考えられていくようになる。

生活者は一人十色の顔を持っており、状況によって、ブランドやサービスに対して、どこまでの情報を開示するか、どの自分を見せるかを使い分ける。それを生活者自身として管理しているのがデジタルウォレットだ。

子どもの習い事を例にしても、義務に近い位置づけで捉える家庭もあれば、あくまで趣味の一環やネットワーキングのためと割り切って不要になればリセットするような使い方をする生活者もいるだろう。

企業やブランドにとっては、それ故に、生活者との信頼がどのレイヤーに依拠するかも慎重に把握することが求められるようになる。

結局、私たちは何をしたらいいのか?

生活者自身として

生活者にとっては、“自分”そのものを表現したり、野放図に生まれた複数の“自分”の一部を表現したりするYouTuberのようなあり方から、より多面的な“自分”を発信していくチャンスが来るかもしれない。具体的には、複数の“自分”や情報開示のお手本を他の生活者に提案するような生活者も登場するだろう。

そういう新しい情報に触れながら、リスクを踏まえつつ、安全・安心な社会との関わり方、楽しみ方をアップデートしていく必要がある。

生活者に対峙する企業・自治体として

▶︎金融機関

世に広がらなかった“情報銀行”モデルとして、MEGA Techプレイヤーから余力のない企業のレイヤーまでカバーするチャンスが到来する可能性がある。ここから個人向けビジネスを再構築するスタンスで“デジタルウォレット”の普及促進を図っていくのも1つの方向性になるだろう。

▶︎経済圏プレイヤー(企業など)

MEGA Techプレイヤーに対抗して、独自の生活・暮らしのスタイルから、より多くの生活者接点を担うチャンスが到来する可能性を秘めている。ポイ活だけでなく、体験価値そのもので独自性を競うことで、真に生活者に選ばれ続ける良質なブランド・サービスを育んでいく目線が問われることになる。

▶︎自治体

既存行政サービスの制限を一定解放して、最も強力な存在証明・金銭証明としての信頼を再構築するチャンスが到来する可能性がある。強い信頼を生活者から獲得した自治体はデジタルウォレットの運営主体としてのコアなポジションを取ることもあり得るだろう。

▶︎その他事業者

生活者に選ばれ続けるための新たな戦いへのシフトと、経済圏・MEGA Techプレイヤー・自治体との付き合い方の再構築が求められ、既存の閉じた業界での戦いから、より生活者目線での産業同士の競争にさらされることになる。これは捉え方を変えれば、自社の存在意義を問い直し、生活者にとってのコアサービスの提供価値を磨き上げることで、自社のブランド価値を高めるチャンスが到来する可能性がある。

まとめ

アクセンチュアでは、最短でも3年、長いと10年程度かけて、この新たなデジタルウォレットの考え方が普及すると予測している。これから、私たち生活者も3つのレイヤーで“自分”を意識することで、自分たちの求めるコントロールとのバランスの取れたデジタルウォレットの在り方を作っていけるのではないだろうか。

<執筆者>
アクセンチュア株式会社 アクセンチュア ソング Industry Group 金融統括 マネジング・ディレクター
若山 佑太
東京大学卒業後、アクセンチュア入社。銀行・保険・異業種金融向けのビジネスを中心に、成長戦略やデジタル戦略の立案・推進、新規サービス立ち上げ、マーケティング・営業等の戦略から実行までカバーするプロジェクトに幅広く従事。

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