3. 改正ポイント②|グルーミング規制
わいせつ行為や性交等を目的として、未成年の子どもと親しくなって手なづける行為は「グルーミング」と呼ばれています。今回の刑法改正では、グルーミング行為の処罰規定が新設されました(刑法182条)。
具体的には、16歳未満の者に対する以下の行為が処罰の対象とされています。なお、未成年者が13歳以上16歳未満の場合は、その者より5歳以上年長の者の行為のみが処罰の対象です。
①わいせつ目的による以下の行為
・脅し、騙し、または誘惑して面会を要求すること
・拒否されたのに、繰り返し面会を要求すること
・お金などを実際に渡し、またはお金などを渡す申込みや約束をして面会を要求すること
→1年以下の懲役または50万円以下の罰金
②①の罪を犯し、実際にわいせつの目的で被害者と面会する行為
→2年以下の懲役または100万円以下の罰金
③性交などの性的な姿態をとらせた上で、その映像を送信させる行為
→1年以下の懲役または50万円以下の罰金
4. 改正ポイント③|盗撮行為などの処罰
刑法から独立した「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」が新たに制定され、盗撮行為などが処罰の対象とされました(=性的姿態等撮影罪、3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。
盗撮行為は従来、各都道府県の迷惑防止条例などで取り締まられていました。今回の新法制定により、全国的に適用し得る法律によって処罰規定が設けられた点に大きな意義があります。
盗撮行為そのもののほか、盗撮に関連する以下の行為も、新たに処罰の対象とされました。
①性的影像記録提供等罪
盗撮された画像・映像の提供・公然陳列
→3年以下の懲役または300万円以下の罰金(不特定多数向け提供・公然陳列は5年以下の懲役または500万円以下の罰金)
②性的影像記録保管罪
提供・公然陳列を目的とした、盗撮された画像・映像の保管
→2年以下の懲役または200万円以下の罰金
③性的姿態等影像記録送信罪
本人の有効な同意がない、性的な画像・映像の不特定多数向け送信
→5年以下の懲役または500万円以下の罰金
④性的姿態等影像記録罪
本人の有効な同意なく、不特定多数向けに送信された性的な画像・映像の記録(保存)
→3年以下の懲役または300万円以下の罰金
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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