2-2. 選択肢②|どちらかが単独で住宅を取得する
2つ目の選択肢は、夫婦のどちらかが単独で住宅を取得する方法です。特に子どもがいて生活環境を変えたくない場合には、親権者と子どもが家に住み続けられるメリットがあります。
ただしローン契約の規定上、住宅の所有者を変更する場合は、ローンの債務者についても変更しなければなりません。ペアローンを組んでいる場合、住宅をどちらか一方の単独所有とする際は、ローンについても単独名義に変更する必要があります。
ローンの債務者変更を行うためには、金融機関の同意が必要です。
金融機関は、新たに単独で債務者となる方の収入等を基に再審査を行いますが、責任財産(=債権回収の対象となる財産)が少なくなるため、ペアローンと比べて審査を通過しにくい傾向にあります。
審査に通らない場合は借り換えも選択肢となりますが、物件価格に比べて新たに単独で債務者となる方の収入が十分でない場合は、借り換えもできないケースがあるので注意が必要です。
2-3. 選択肢③|共有状態を維持し、賃貸借契約等を締結する
3つ目の選択肢は、ペアローン住宅の財産分与を行わない(他の財産の分与によって調整する)方法です。オーバーローン等のため住宅を売却できず、ローンの借り換え等も認められない場合などに、やむを得ず離婚後も共有状態を維持することがあります。
住宅の共有状態を維持する場合、共有関係から生じるトラブルのリスクが残ります。たとえば家を使用する対価の精算や、将来的な売却や賃貸について意見が食い違うトラブルなどが想定されます。
ペアローン住宅を離婚後も共有のままとする際には、共有関係に起因するトラブルをできる限り防ぐため、賃貸借契約等を締結して、使用に関するルールを明確かつ適切に合意しておきましょう。
また、将来的にチャンスがあれば、売却等により共有関係を解消することもご検討ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw