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ブロックチェーンを利用した新たな金融商品「デジタル証券」のメリットとデメリット

2023.07.21

最近ブロックチェーン技術を利用した新たな金融商品「デジタル証券」が続々発売されている。デジタル証券とはどのような商品で、どのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。

セキュリティ・トークンとは?

セキュリティ・トークンとは、有価証券(セキュリティ)を「トークン」としてデジタル化した金融商品をいい、デジタル証券ともいう。

これまでは、特定の誰かが大事な記録等を保管して守るシステムであった。このシステムは、その特定の誰かを信用して記録を預けていたが、その記録は改ざんされる可能性があったり、その特定の誰かを介しての取引が必ず必要だった。

そのなかで、2008年に日本人と思われるSatoshi Nakamotoが書いたビットコインに関する論文によりブロックチェーン技術が生まれた。

ブロックチェーン技術とは、特定の誰かが一元管理するのではなく、取引記録(ブロック)を暗号化して、その他のネットワークにつながっている人たちと鎖(チェーン)のようにつなげて記録することをいう。網目のようにそれぞれ鎖でつながっているため、一度記録したものは改ざんされづらく、誰かが管理しているものを介して取引することなく直接知らない相手と取引することができる。また、特定の誰かが一元管理しているときはその管理者のシステムがダウンすれば全体に影響を及ぼしてしまう可能性があったが、ブロックチェーンは網目状に様々な相手と繋がっていることから全体がダウンしてしまうことがない。

ブロックチェーンはそもそも仮想通貨のビットコインに関する技術として生まれたが、今ではその他にも唯一無二の価値を持つデジタル化されたアート作品などのNFTや今回紹介するデジタル証券に活用されている。

デジタル証券は、2020年4月に施行された改正金融商品取引法で『電子記録移転権利』と正式に規定され、その後デジタル証券の新商品が発売されている。不動産が裏付けされているデジタル証券であれば不動産特定共同事業法にも規定されている。ただ、デジタル証券の内容次第では基づく法律が異なることもあり、まだ未整備な部分もある。

通常の権利との違いは?デジタル証券のメリット

デジタル証券は、仲介者が不要で、従来の金融商品の形式にとらわれない発行はでき、以下のようなメリットがある。

① 手数料が少なくて済む
② 小口で投資できる
③ 特定の会社または不動産を対象とするから投資判断しやすい
④ プロ向けの金融商品へ小口で投資可能
⑤ おまけが自由につけられる
⑥ 自由に売買できる予定
⑦ 株式と同じ税制?

デジタル証券は管理する会社が不要であることから、発行会社は販売会社等を通さずに直接発行することができる。

これまでは、証券会社等が管理して情報を保護していたが、デジタル証券では発行会社がブロックチェーン上に記録することで直接発行することが可能だ。その場合管理や販売にかかる仲介手数料がかからないため、発行会社は手数料を安く済ませることができ、その代わりその分を投資家に還元することができる。ただ、現状は従来通り証券会社等販売会社を経由していることが多い。

デジタル証券として発行される社債は、元来の発行方法だと購入単位が決まっていてその金額は高額になることが多い。例えば、社債であれば100万円単位、プロの特定投資家向けだと1億円単位だ。デジタル証券では、自由に投資単位を決めることができ、小口での投資が可能だ。

例えば、カゴメが、2月に「カゴメ 日本の野菜で健康応援債」を発行したが、1口10万円から投資可能で、社債として受けられる年利0.2%の利息の他に、購入者1人あたり「つぶより野菜15本」の野菜ジュースが受け取れる特典付きだ。従来の社債は100万円単位でおまけがつくことはまれだ。

不動産の場合でも従来は投資単位大きかった。不動産への投資の場合、1部屋単位でも最低1,000万円以上、1棟単位だと1億円以上かかり借入れも必要になることがあるが、デジタル証券での投資であれば1口10万円単位で投資できる。同じく小口で投資できる不動産への投資で、REITがあるが様々な物件に投資してひとまとまりにしており、かつ株式市場等の変動に左右されやすいため、1つの物件をデジタル証券化しているデジタル証券は投資判断をしやすい。

そして、デジタル証券は自由におまけをつけることができるのもメリットだ。通常の債券や不動産では、配当金や利息のような金銭的なリターンのみであったが、デジタル証券保有者に以下のような『おまけ』を付加することができる。

・NFT(キャラクターやアート作品等のNFT、発行会社に関するイベントチケットやクーポン等)
・仮想通貨
・自社商品
・ポイント

例えば、SBI証券は、2021年に1口10万円、年率0.35%のデジタル社債を発行し、投資金額10万円あたり10XRPの仮想通貨が付与された。XRP(リップル)は、7月現在105円程度と投資金額10万円で利息以外にも1,050円受け取れたということになる。

また、デジタル証券で、プロ向けの投資商品も個人が小口で投資できるようになった。

ソニー銀行は今年の夏に、年利0.3%の不動産担保ローン債権をデジタル証券として、個人向けに1口10万円から販売する予定だ。裏付けとなる債権はソニー銀行が取り扱う投資用マンション向けのローンの債権で、担保としてその投資マンションが入れられているため貸倒時に資金を回収しやすい債権だ。これまでローン債権を証券化したものを他に販売することは行われていたが、特定投資家向けで一般の個人投資家がこのようなローン債権に投資することは難しかった。このようなプロ向け金融商品でも個人で小口から投資できるのは、投資の幅が広がる。

現状はデジタル証券を売買できる場がないが、将来は自由に売買できる市場ができるようになる予定だ。

SBI PTSホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ、野村證券、大和証券グループ本社がデジタル証券取引のために出資して2021年4月に私設取引システム運営会社『大阪デジタルエクスチェンジ』が設立され、2023年デジタル証券の取引所を開設予定となっている。

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