日本語には熟語になると、もとの漢字とまったく異なる読み方になる言葉があります。そのうちの一つ、『氷柱』は何と読むのか知っているでしょうか。読み方・意味・類語に加えて、日本で氷柱が見られる名所を紹介します。
「氷柱」の読み方と意味
『氷柱』は特別な読み方をする漢字です。正しい読み方・意味とあわせて、『氷柱』のような熟語について解説します。各地で異なる『氷柱』の名称もチェックしておきましょう。
「氷柱」の読み方
『氷柱』は素直に訓読みすれば『こおりばしら』、音読みすれば『ひょうちゅう』と読みます。さらにこれらだけではなく、『氷柱』には『つらら』という読み方もあるのです。
なお、『つらら』のような読み方を『熟字訓』といいます。熟字訓とは、漢字単体の読み方にかかわらず、熟語をひとかたまりとして訓読みしたものです。
通常の熟語であれば、それぞれ漢字を知っていれば何となく読めるかもしれません。しかし熟字訓の場合、熟語そのものを知らなければ、正しく読むのは至難の業といえるでしょう。
「氷柱」の意味
『氷柱』は、読み方によって意味が異なります。『つらら』とは、『軒下や山の岩などを伝い落ちる水のしずくが寒気のため凍結し、棒状に垂れ下がった氷になったもの』を指しています。
『つらら』の語源には諸説あり、『連なって(つらつらして)いるから』『表面が滑らか(つらつら)だから』ともいわれています。
一方、『こおりばしら』『ひょうちゅう』と読む場合は、『室内を冷やすために置かれる、柱に似た角柱形の氷』を意味します。
何を指して使うかによって読み方が区別されるため、正しく読むには意味も覚えておかなければいけません。
「氷柱(つらら)」には方言もある?
『氷柱(つらら)』という読み方は、明治から昭和にかけて東京の標準語が広まったもので、もともとは全国各地でさまざまな呼ばれ方をしていました。
関東でいえば、栃木県佐野市では『コーリンボー(氷の棒)』『カナンボー(金の棒)』『アメンボー(あめの棒)』と呼ぶことがあります。
九州地方では『びーどろ』『よーらく』『まがんこ』、東北地方では『しが』『たろひ(たるひ)』などとも呼ばれます。豆知識として、各地の方言を覚えておいても面白いかもしれません。
「氷柱」の類語
『氷柱(つらら)』のほかにも、『氷』を使用した難しい読み方の漢字があります。そのうちのいくつかについて、読み方や使用例を確認しましょう。
「垂氷」
清少納言による『枕草子』の、「日ごろ降りつる雪の今日はやみて、風などいたう吹きつれば、垂氷いみじうしだり…」という一節に『垂氷』が登場します。
読み方は『たるひ』で、『氷柱(つらら)』の古い呼び名のことです。先ほどの一節は、雪がやんだところに冷たい風が吹き出し、氷柱ができている光景をつづったものです。
『垂れる氷』と書くように、雪解け水が垂れて凍った様子を表した漢字で、俳句では冬の季語として使われています。
「氷塊」
『氷塊』の読み方は『ひょうかい』、読んで字のごとく氷の塊(かたまり)を指す言葉です。
『氷塊を使って涼をとる』『飲みものに氷塊を砕いて入れる』『富士山にある洞窟では、巨大な氷塊を見ることができる』のように使われます。
『氷塊』と呼ばれるものに、大きさの定義はありません。飲みものに入れる氷も、動物園のシロクマが抱っこする氷も、同じ『氷塊』です。
日本の絶景「氷柱」を見に行こう
巨大な氷柱が並ぶ様子は、まるで巨大な氷のオブジェです。氷柱のできる光景が見たくなったら、都心からも比較的アクセスのよい『秩父三大氷柱』『鳴沢氷穴』に出かけてみましょう。
「秩父三大氷柱」
埼玉県秩父市には、『秩父三大氷柱』と呼ばれる氷柱の名所があります。
一つ目は『三十槌の氷柱(みそつちのつらら)』です。天然の氷柱が高さ約8m・幅約30mに連なる圧巻の光景は、例年1月中旬から2月中旬に見学できます。
二つ目は『尾ノ内氷柱(おのうちひょうちゅう)』です。500mのパイプで導水した尾ノ内沢の水から作り出す氷柱で、小鹿野町の冬の代表的観光スポットとなっています。
三つ目は『あしがくぼの氷柱(ひょうちゅう)』です。西武秩父線沿いにあり、夜間のライトアップでは、鮮やかに色づいた幻想的な氷柱を見ることができます。
「鳴沢氷穴」
『鳴沢氷穴(なるさわひょうけつ)』は、青木ヶ原樹海の入り口付近にある溶岩洞窟です。864年に富士山が噴火した際、溶岩の通り道が氷穴となりました。
総延長は150mとなっており、15分ほどで内部をぐるりと1周できる構造になっています。年間を通して氷に覆われているため、夏場でもひんやりとしているのが特徴です。
見どころとなる氷柱は季節によって大きさが変わり、最も成長するのは4月頃だとされています。年によっては高さ約3m・幅約50mの氷柱もできるそうです。
『西湖』からも近いため、富士五湖観光の際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
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構成/編集部